高級日本酒によって日本酒業界を再起させようとしているラグジュアリーブランド「SAKE HUNDRED」が、ホリデーシーズンに向けた新作『響花(きょうか)』を11月8日(水)から2024年1月15日(月)までの期間限定で販売。それに先立ち、この新作をテイスティングする機会をもらったので、どんなお酒だったかをリポートする。

SAKE HUNDRED『響花|KYOUKA』
34,100円(送料別)

蔵なき酒蔵 SAKE HUNDRED

SAKE HUNDREDという日本酒ブランドをご存知だろうか?

これは生駒龍史さんという人物が2013年にはじめた日本酒に特化したスタートアップ企業「株式会社Clear」が、2018年に立ち上げた、ファブレスの日本酒ブランドとでもいうべきものだ。

すでにJBpress autographでも何度か書いているように、日本酒業界というのは1973年をピークにダウントレンドで、現在、縮小を繰り返して市場規模は最盛期の4分1程度になっている。

ClearはSAKE HUNDREDによって、この日本酒業界が再起し、日本酒が外貨を稼ぐ存在となる未来を目指している。そのため、SAKE HUNDREDブランドの日本酒は、高価格かつ海外に展開していけるスタイルなのが特徴だ。

ブランド初の商品として『百光|BYAKKO』をリリースして以来、長期樽熟成の『礼比|RAIHI』、ミズナラオーク樽貯蔵の『思凛|SHIRIN』、28年熟成の『現外|GENGAI』、生酒の『天雨|TEN’U』、瓶内二次発酵のスパークリング『深星|SHINSEI』および『白奏|HAKUSO』、デザート日本酒の『天彩|AMAIRO』と、ワインやウイスキーの発想を持ち込んだ日本酒を次々にリリースしていて、国内のプロからの評価が高いだけでなく、海外の主要品評会でも最上位の賞を取り続けている。

平均客単価は4万円を超え「市場が4分の1になったなら、4倍の価格でもご納得いただける日本酒を造るのがメーカーのつとめ」という生駒さんの言葉以上の売上実績も記録中。

生駒龍史さん。名言の多い人だけれど、今回は「売れてないラグジュアリーブランドってないですよね?」という、なるほど、な言葉を聞いた

生駒さんの出自は日本酒関係ではまったくなく、25歳の頃に日本酒に魅了された、いわば日本酒ファン。そこから「SAKETIMES」というオンライン日本酒メディアを立ち上げた人物である。「SAKETIMES」で日本酒業界とのパイプを作り、自らのイメージする革新性のある日本酒を、全国各地の日本酒蔵と共同開発し、SAKE HUNDREDブランドで販売している。

「HERMESみたいなブランドになりたい」という生駒さんの言葉の通り、単にそれぞれの日本酒の品質が高いだけでなく、顧客対応、ブランド体験、サステナビリティなどに関しても徹底してグローバルラグジュアリーブランドのスタンダードで、顧客のロイヤリティは高い。若き日本の企業にしてこれができるのは、パリのエルメス本社の副社長も務めた齋藤峰明氏が社外取締役を務めていることも大きいのかなぁ、とおもうけれど、実際のところはどうなんだろう?

いずれにしても、日本酒でここまでやる会社は史上、稀に見る、というのは間違いない。

新作『響花』はブレンド日本酒

そのSAKE HUNDREDブランドから、このほど、ホリデーシーズン限定の新商品が出る、とのことで、これをプレス権限で先行試飲させてもらった。

商品名は『響花|KYOUKA』。ホリデーシーズンだからスパークリング?なんておもったけれど『響花』はスパークリングではなく、ブレンド日本酒だった。

日本酒は構築的な酒だ。

SAKE HUNDREDはClearが非常に細かくスペックを設定し、それを蔵に持ち込んで造ってもらい、出来上がった酒のテイスティングを重ねて完成に導いていくというけれど、そういうことができるのは日本酒ならでは。

ワインだったらどんなに綿密な設計図をつくっても、一回の雨、ちょっとした日照りでブドウのコンディションがころっと変わって、設計図が無意味になってしまう。

日本酒に、そういう天然自然の影響がない、とは言わないけれど、ワインと比べればずっと、その影響は小さくできるし、『響花』について言えば、さらに構築的なはずだ。なぜなら『響花』はSAKE HUNDREDブランドで販売されていた生酒『天雨』と、ミズナラ樽貯蔵が特徴の『思凛』2種(ワイン的に言えば2ヴィンテージ分)、つまり過去の酒をブレンドしているからだ。

そして、日本酒とワインとの間にある、文化的なズレは、このブレンドの考え方だと筆者はおもっている。日本酒というのは、結構な場合において、シンプルであることをよしとしがち。一方、ワインは圧倒的に複雑なほうが良いワインとされがちだ。たとえ「ここの畑のピノ・ノワールだけで造りました」なんていう、一見シンプルそうなワインでも、高級なものであれば、実際はその畑のなかを何区画にも区切って、それぞれ個性の違うブドウを収穫してブレンドすることで複雑さを出しているもの。

まぁもちろん、酸っぱいワインと甘いワインを混ぜて粗を隠す、みたいなこともワインにおいては(特に安価なワインでは)ないではないし、この意味での後ろ向きなブレンドならば日本酒でも例があるけれど、複雑にするためにブレンドする、というのは、発想的に日本酒的ではないようにおもう。

日本酒という枠組みをはみ出ている印象

この『響花』は当然ながら、前向きなブレンドの酒。残念ながら筆者、ブレンド以前の『天雨』も『思凛』も知らないので、『響花』の真価、ブレンドの真価に至るための門口には立てていないのかもしれないのだけれど、この『響花』はワイン的にも理解しやすかった。

香りは日本酒らしい。米の甘い香りが感じられるし、アルコールの香りも結構しっかりとする。

ただ、口に含むと、普通の日本酒とはだいぶ感じが違う。日本酒はわりととろんとした、液体を包み込む層が分厚い感じがしがちだけれど、『響花』のそれは薄い。その薄い層はすぐにほどけ、内側から酸味が出てくる。ワインならこういうのはあって、このくらいだと十分に穏やかな部類だけれど、日本酒でこれはシャープだ。ここでまず、日本酒でこんなことができるのか、という意外性がある。

さらに、この酸味がなかなか終わらない。口中での風味の展開のほぼ全領域において、この酸味が骨格を形成しているし、余韻もかなり長く、その余韻の終盤くらいまでこの酸味は続く。最後は、甘みと旨味が残るので、日本酒のいいところが帰ってくる感じだ。

戻って、味わいの中盤あたりだけれど、ピリっとしたスパイスを感じられる。これはおそらく、アルコール度数が高いからではなくて(15.6%だし)『思凛』に使われているミズナラ樽が由来ではないかとおもう。これが絶妙なバランスで、おそらく、無くても成立するんだろうけれど、無ければぐっと寂しくなるだろうし、だからといって、これ以上あると主張しすぎてうっとおしくなるだろうなぁというあたりにある。ブレンドのバランスは、相当煮詰めたそうなのだけれど、それはこのあたりの落とし所を得るためだったのではないか?

全体の印象はとても明るい。冬の青空のよう。ピンとしていて明るい気持ちにさせてくれる。クオリティはとても高い。3万円の日本酒なんてそうそう見かけないから、34,100円(送料別)という価格が日本酒的に妥当なのかどうかはわからないけれど、『響花』はワインっぽいので、そっちで考えると、ナパとかシャンパーニュの上級品くらいの価格ということになる。まぁ高いけれど、あり得る価格か。『響花』には商品の希少性やSAKE HUNDREDブランドのサポートなどもあるのだから、そこでも見劣りすることはないとなれば「えー、これでその値段はちょっと高すぎない?」ということはないとおもう。

『響花』はこれが初のリリースというわけではなく、これまでは百貨店の外商経由、一部飲食店など、限られたルートで飲めたそうだ。このほど、それが期間限定で、SAKE HUNDREDの公式ページにて販売。ワインとかウイスキーが好きな人には美味しいお酒だとおもう。というか、これは日本酒好きに独占させておくのは、ちょっともったいないぞ!