今年も花粉のシーズンがやってきました。昨年の猛暑の影響をうけて2023年は例年以上に花粉による影響が懸念され、特に関東では過去10年で最多とも言われています。掃除機などの空調家電に定評のあるメーカー、ダイソンでは、埼玉大学大学院の王青跳(オウセイヨウ)先生を招き、スギ花粉の最新研究と知っておきたい花粉症対策についてのセミナーを開催しました。

取材・文=永坂佳子

写真=アフロ

雨の日のほうが辛い花粉症、その理由とは?

 花粉症とは、花粉によって粘膜が刺激されておこるアレルギー症状のひとつ。くしゃみや鼻水、鼻づまりのほか、目のかゆみや充血、のどの痛みなどの症状が一般的ですが、症状が重くなると、頭痛や全身の重だるさなどを感じる人もいます。

 最も患者数が多いのがスギ花粉ですが、環境省は関東などで今年のスギ花粉の飛散量が過去10年で最も多くなるとの見通しを発表しています。

 花粉症の人にとっては頭を抱えたくなるような数字ですが、王先生によれば、「花粉そのものだけでなく、 “粉砕花粉”にも注意してほしい」とのこと。

埼玉大学大学院の王青跳先生

 粉砕花粉とは、雨など大気中の水分を含んだ花粉が破裂してマイクロレベルもしくはナノレベルの超微粒子になったものです。また、外部からの刺激を受けて花粉の一部が割れたり欠けたりして浮遊する場合もあります。

 通常の花粉はだいたい20~40μmなのに対して、粉砕花粉はその1000分の1ほどのサイズ。通常の花粉のように粘膜を刺激するだけでなく身体の奥深くまで入り込んで喘息などの重篤な症状を引き起こやすいと言います。さらに、小さくなることでPM2.5などの大気汚染物質が付着しやすく、それらによる悪影響も加わります。つまり、花粉症の人にとっては、粉砕花粉対策こそが重要なのです。

粉砕花粉

 一般に雨の日は花粉の飛散量が少ない上に雨によって流されてしまうため症状は軽くなると言われていますが、「今日は雨なのに、なんだかいつもより辛い気がする」と感じる日もあるのではないでしょうか? 

「たしかに大雨だと花粉は流れて地面へ落ちてしまいます。でも、小雨くらいの時は、大気中にある花粉がどんどん水分を含んで、やがて耐え切れなくなって破裂するんです。そうしてできた粉砕花粉が刺激となって、症状が晴れた日よりひどくなってしまうことがあります」と王先生は言います。