ダイソン株式会社(東京都千代田区:代表取締役社長 ピーター スミス、以下ダイソン)は、日本法人設立25周年を記念し、5月23日に都内で新製品の発表イベントを開催。創業者であるジェームズ・ダイソン氏が、息子のジェイク・ダイソン氏とともに来日し、ダイソンのこれまでの歴史と、日本との関係を語りました。

取材・文=永坂佳子

実は日本生まれだった!?サイクロン掃除機の誕生秘話

 ダイソンと言えば掃除機を思い浮かべる人は多いでしょう。「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」というCMは一時大いに話題になりました。ダイソンは1993年にイギリスで創業し、5年後の1998年には日本に進出しました。2023年は日本法人設立25周年にあたります。

 しかし、ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソンによるサイクロン掃除機「G-Force」が初めて発売されたのはそれより前の1986年。しかも日本だったのです。

 ジェームズがデザインした世界初のサイクロン掃除機のプロトタイプがアメリカのデザイン本「Product Design」に掲載され、それを見たApex社の社長がぜひ自社で扱わせてほしいとジェームズに打診。ジェームズは格安航空券を手に、すぐに東京へと向かいました。当時、ジェームズの画期的すぎるアイデアを製品化しようというメーカーはどこの国からも現れず、この出会いがなければ、その後ダイソンが生み出す数々の個性的な製品を目にすることはできなかったでしょう。

 販売ライセンスを供与されたApex社は、もともとイギリスのシステム手帳FILOFAX(ファイロファックス)など主にステーショナリーを扱う商社でした。また、製造を担当したシルバー精工はタイプライターや編み機などを作っていたメーカーです。専門家が誰一人としていないチームだからこそ、一見荒唐無稽とも思えるジェームズのアイデアを受け入れることができたのかもしれません。「G-Force」発売に至るまでの間、ジェームズはイギリスと日本を何度も往復し、エイペックス社とともに、何千という試作品を作り続けました。