1811年創業の老舗シャンパーニュ メゾン、ペリエ ジュエの誇るとびきり贅沢で特別なシャンパーニュベル、エポック。その2015年ヴィンテージには日本のために造られたさらに特別なペリエ ジュエ ベル エポック フロレサンス 2015があったのだけれど、このほど、このシャンパーニュが発売されることが報じられた。

花咲く日本へ

正直言って、これが一般販売されることはないだろう、とおもっていた。

品質になにか問題があるということではない。ペリエ ジュエ ベル エポック フロレサンス 2015はパッケージまで含めて、まごうことなきベル エポック ファミリーであり、つまり望むべく最良のシャンパーニュのひとつだ。ただ、さすがに存在として希少過ぎるとおもっていた。

フロントラベルとギフト箱は、フランスの新進気鋭アーティスト ガランス・ヴァレが“開花”をコンセプトにデザイン。有機的な形状で構成されたギフト箱のデザインは、それぞれが鉱物、動物、植物を抽象的に表しており、ひとつひとつが同じ比率で描かれ、生態系において同等の役割を担っていることを強調している。また、縦方向のグラデーションで配置することによって生命体の連続性を示し、咲き誇る自然の生命エネルギーを想起させる

なにぶんこのシャンパーニュは、前任のエルヴェ・デシャンさん同様に、日本のことを好いてくれているペリエ ジュエの第8代最高醸造責任者セヴリーヌ・フレルソンさんが、わざわざ、日本のために造ったというもの。ペリエ ジュエにとって特別な人へのギフトなんだろう、とおもったのだ。

筆者がこのシャンパーニュを味わったのは2023年の10月のことで、このときにはセヴリーヌ・フレルソンさんが来日していた。本人から聞いた話から、これがどういうシャンパーニュかを説明すると、2015年の、セヴリーヌさんが最高醸造責任者になったのは2020年10月のことだから、つまりエルヴェさんが司っていた時代のシャンパーニュに、セヴリーヌさんがちょっとした魔法をかけている。

セヴリーヌ・フレルソンさん
©Jean-François Robert

シャンパーニュはリリースする際、澱を取り除いて、その分のリキュール(リキュール・ド・ドサージュ)を加える工程がある。このリキュールに、ピノ・ノワールとシャルドネをブレンドしたセヴリーヌさん特製のものを使うことで、太陽の光を浴びて花が開くイメージを表現したというのだ。

ごく僅かな調味料的存在のリキュールでそんなに違うの? とおもうかもしれないけれど、これが違うのはペリエ ジュエがベル エポックですでに実証済み。この「フロレサンス」と名付けられた特別なベル エポックは、通常のベル エポック ロゼと比べると、ぐっとピノ・ノワールが引き立っていて力強く、開花の瞬間を思わせるような生命のエネルギーというイメージは「なるほど!」なのだ。

あと、細かいことを言うと、2015年のシャンパーニュは暑かったので、これだけエレガンスとフレッシュネスが感じられるのも実はすごいことだとおもう。そこにベル エポックならではの熟成による深い旨味も加わっているので、そういう意味では、単に若々しいわけではなくて、ここに至るまでの年月と惜しみなく注ぎ込まれた老獪ともいえるほどの匠の技を感じるのだ。

販売は日本限定。流通数は特に発表されていないけれど、かなり希少だと推測できる。ベル エポックファンはもちろん、相変わらず高級なワインの教科書のような作品なので、万人にオススメできる。