ケースフォルムが特徴的なこの時計は、1940-50年代のデザインスタイルを踏襲。ラグからケースサイドをつなぐシルエットが直線的で、一見ではトノー型にも見える。3時と9 時位置にはステップ状の溝が刻まれ、ケースは視覚的にスリム化されているのも面白い。
古き良き、ハバナのアールデコデザインが甦る!
“キューバの伝統”を今に伝える「クエルボ・イ・ソブリノス」。このブランドは、1882年、スペインからキューバに移住したドン・ラモン・フェルナンデス・クエルボが、スペイン語で“ソブリノ”と呼ばれる 6 人の甥とともに、ハバナにてジュエリーブティックをオープンしたのが始まりだ。
時は、旧共和制時代。砂糖市場で湧いたこの国にはアメリカ資本が惜しみなく投下され、新たに生まれた富豪たちに向けて宝飾品や高級腕時計が届けられていた。クエルボ・イ・ソブリノスは、自社ブランドのスイス製腕時計に加え、パテックフィリップ、ロレックス、ロンジンなどとダブルネームの時計を多数展開した。
1950年代には、サン・ラファエル通りにあるブティックは絶頂期を迎えている。しかし、その後の政治情勢の変化とともに、キューバ政府はクエルボ・イ・ソブリノスを国有化。30年間、休眠状態にあったが、ヨーロッパの支援者たちによって、スイスの時計メーカーとして再興されたのである。
現在、クエルボ・イ・ソブリノスはスイスのカポラーゴにあるアトリエにて、時計製造を行っている。かつて、キューバで最高潮を迎えていたアールデコスタイルのデザイン思想、そして同地の代名詞である葉巻文化。この2つの鮮烈なアイデンティティは、クエルボ・イ・ソブリノスの個性を彩るものだ。
さて、今回のモデルは、国際的な時計コレクターズクラブ「CronotempVs Collectors」の共同設立者であるスカラマンガ氏と、大手オンライン時計雑誌「Watchonista」とそのラグジュアリーライフスタイルのサブプラットフォーム「The Lounge」の会長兼発行人であるマルコ・ガベラ氏の発案により、クエルボ・イ・ソブリノスが製作した限定モデルだ。モデル名は『ロンズデール』。その名は、高級葉巻の名称からインスピレーションを得ている。
先に紹介したユニークな形状のラグが目を惹く 40mm ケースに、アルファ針とアラビア数字を用いた質感のあるメタリックダイヤルが目を引く。まるで、1930年代の大ヒットモデル(R社のオイスター・パーペチュアル)にも似た、当時のトレンドを踏襲する意匠である。
カラーバリエーションは3種類。伝統的な葉巻の色合いにちなんだ 3 つのダイヤルカラーとなり、それぞれ 82 本の少量生産となっている。
そしてこの限定モデルのために、スパニッシュシダーを使用したプレゼンテーションケースも製作された。その中には葉巻ファンに嬉しいシガーレスト、シガーケース、NATOストラップが収められている。このボックスは、ヒュミドール(葉巻を保管するためのケース)としても機能する。アクセサリーやコレクターズアイテムなどの収納、持ち運びに便利なトラベルケースとしても使用可能。
圧倒的に他と異なる個性。葉巻文化とクロスする世界観。それが、クエルボ・イ・ソブリノスであり、これら限定モデルは、クエルボ・イ・ソブリノスの魅力を徹底的に引き出している。