ブレゲのアイコニックなパイロットウォッチ「タイプ XX」が、新世代のモデルとなった。4年間の開発期間が費やされ、外装デザインのみならず、ムーブメントも刷新。軍用モデル(右)と民間モデル(左)をルーツにもつ2デザインをラインナップに加えている。高級時計メーカーとして名高いブレゲによる軍用デザインは、やはり他のミリタリーモデルとは一線を画した美しい仕上げを誇っている。
フランス空軍をはじめ、フランス海軍や他国軍へと納品された“憧れ”の航空時計
「タイプ XX」の歴史は、1950年代初頭にまで遡る。
当時すでに航空用機器の製造でスペシャリストの地位を築いていたブレゲ社は、フランス空軍がパイロットの装備品として腕時計型クロノグラフを望んでいることを知っていた。それは、下記の仕様を備える時計である。
・夜光の数字と針を配したブラック・ダイヤル
・気圧や加速度の変化に耐える高品質ムーブメント
・回転ベゼル
・フライバック機能が備わるクロノグラフ
この未来の製品に「タイプ XX」という名称を与えたのは、フランス航空省である。いくつかの会社がコンペに臨み、契約を勝ち取ったため、複数のブランドから「タイプ XX」が作られたが、その一方で、ブランド各社は、プライベートな顧客のために同じ製品を販売することを許された。軍用の「タイプ XX」と民間用モデルの「タイプXX」が作られたのはこうした事情による。
ブレゲの場合、1952年にプロトタイプが提出され、1953年に航空技術局から承認を受ける。1954年にはフランス空軍から軍用の「タイプ 20」1100本の発注があり、1955年から1959年にかけて供給。これらは、ダイヤルに30分積算計が配され、ブランド名はない。
1958年にフランス海軍は、航空部隊(アエロノーティック・ナバル)のパイロットとセーラー用に500本を発注。1960年1月13日に全品を納品した軍用の「タイプ XX」は、15分積算計のサークルが拡大され、ダイヤルにブランド名が記されているなど、空軍用の時計とは異なっていた。
「タイプ XX」の評判は軍の外にもただちに広がり、民間航空の人々やクロノグラフの熱烈な愛好者たちがブレゲから「タイプ XX」を手に入れようと躍起になった。1965年に、径14リーニュのヴァルジュー製ムーブメントが現代的な13リーニュのものに置き換わり、ダイヤルや針、ベゼルなどに若干のバリエーションがあるものの、1970年まで「タイプ XX」のデザインはほとんど変更が加えられていない。
タイプ 20 - クロノグラフ 2057 - ミリタリーモデルの系譜
この時計は、1955年から1959年にフランス空軍に納められた1100本のモデルをオマージュしたもの。その名称には、ローマ数字で「タイプ XX」と表記される海軍航空隊モデルを含むあらゆるモデルと違い、アラビア数字の「20」が用いられている。
ダイヤルは、原型となる「タイプ 20」のスタイルを忠実に保ちながら、ブラックで現代的に仕上げられている。アラビア数字とベゼルの3角マーカー、すべての針にミントグリーンの夜光塗料が施されているのも特徴的だ。3時位置の30分積算計は、9時位置のスモールセコンドより若干大きく、4時と5時の間に日付表示窓が設けられている。
ステンレススティールによる直径42mmのケースには、過去、空軍向けに供給されたモデルと同様に、目盛りの刻みがなく、縁に縦溝模様を施したベゼルを備えている。4時位置のプッシャーは、クロノグラフ針と積算計のゼロリセットに用い、フライバックの原理によって瞬時にクロノグラフを再スタートできる。
タイプ XX - クロノグラフ 2067 - 民間用モデルの系譜
こちらは1950年代から1960年代の洗練された民間用「タイプ XX」の系譜を継ぎ、とりわけ1957年に作られた固有番号2988の「タイプ XX」の特徴を備えている。3時位置に15分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを配し、積算計は軍用モデルと同じように大きさを変えてデザイン。ダイヤルに一段と力強い表情を与え、視認性も高めている。
アラビア数字、針、ベゼルの3角マーカーにはアイボリー色の夜光材を塗装。さらに、4時と5時の間に日付表示窓を設けている。
ステンレススティールによる直径42mmのケースには、目盛りを刻み、縁に縦溝模様を施した両方向回転ベゼルが備わる。リュウズはクラシカルな直線型。4時位置のプッシャーは、クロノグラフ針と積算計のゼロリセットに用い、フライバックの原理によって瞬時にクロノグラフを再スタートできる。
両モデルは、4年の開発期間を経て完成した、キャリバー728(民間モデル用)と、キャリバー7281(軍用モデル用)をそれぞれ搭載している。 頑丈な構造と革新的な技術を融合したこの新しいムーブメントは、コラムホイール、垂直クラッチ、5Hzの高振動、革新的なゼロリセット機構など、クロノグラフの現代的な設計が取り入れられている。
ひげゼンマイ、ガンギ車、アンクルのホーンは、シリコン製。 シリコンは、腐食、摩耗に耐性があり、磁力の影響も受けず、時計の精度向上に貢献する。 さらに、この自動巻クロノグラフ・ムーブメントには60時間パワーリザーブを備えている。
両モデルは、航空機の翼を思わせるハバナカラーのレザーボックスに納めて販売される。カーフスキンストラップに加え、付属品としてブラックのNATOストラップもボックスに収納され、オーナーは好みに応じて時計のスタイルを変えることができる仕様だ。
しかもストラップ交換は、工具不要。ストラップの付け根にある溝のラグ角度をおよそ45度から60度に合わせ、カチっと音がするまで上から被せて所定の位置にはめ込むと、インターロッキングシステムによりしっかりと固定ができる。一方で、NATOストラップは、ラグのバネ棒からケース裏面に通して装着する。