『パイロット・ウォッチ・マーク XX』、自動巻き、3時位置にデイト表示、ステンレススチールケース、40mm径、10.8mm厚、急激な気圧低下にも対応するサファイアガラス、76万4500円(レザーストラップ)、90万7500円(ステンレススチールブレスレット)※ともに税込。

 

パイロット・ウォッチの代名詞とも言うべき黒文字盤を、このモデルでは敢えてシルバーカラーに! そうすることで、IWCらしい機能美に拍車がかかり、しかも日常生活で使いやすいスタンダードなルックスに着地させている。もちろん、パイロット・ウォッチならではの高耐磁性能・頑強な構造はそのまま。特殊機能と汎用性のいいところ取りがなされているのだ。

伝説の「マーク」シリーズ75周年を記念した特別モデル

IWCが英国空軍のために『マーク 11』を設計したのが1948年。今年はちょうど75周年にあたる。その節目を記念するべく、誕生したのがこのモデルだ。

すなわち、新採用のシルバーカラーをダイヤルに採用した『マーク XX』である。

『マーク XX』はすでにブルー、グリーン、ブラック文字盤がリリースされているが、今回はそれらのラインナップを補完する形でシルバーダイヤルが登場することとなった。

『マークXX』は、IWCが展開する現行パイロット・ウォッチだ。ケースフォルムを印象づけるラグがこれまで以上にスリム化され、カーブを強めたことで、手首へのフィット感を向上させたモデルである。そして搭載する自社製キャリバーにはシリコン製脱進機が導入され、精度を司るパーツのアップデイトも図られている。そのうえ、パワーリザーブも5日間と長く、実用性能の面でも実にパワフルだ。

もちろん、この『マークXX』は、『マーク 11』を源流としたもの。当時、英国空軍の要請を受けて開発されたのは、磁場からムーブメントを保護する軟鉄製インナーケース構造だった。その頃の開発の焦点は、レーダースクリーン使用持に発生する強力な磁力がもたらす悪影響をいかに回避するか。そして磁力を通さない軟鉄素材でムーブメント全体を包む手法は、非常に合理的なものだった。多少のケース厚を犠牲にしても、磁力の悪影響を受けずに精度を保ち続ける『マーク 11』は、当時、パイロット・ウォッチとしての最適解だったのである。

『マークXX』では、最新の自社製キャリバー32111搭載により、ついにインナーケース無しでも耐磁性能を担保。重さや厚みが軽減されたことで、より現代のニーズに合ったモデルとしてアップデートされている。その高度な耐磁性能は、現代においても十分にワークすることは言うまでもない。むしろ、4G電波、5G電波やWi−Fiが飛び交う現代生活のほうが、恩恵は大きいのかもしれない。

ブレスレット仕様は5連のタイプ。パーツが細かく、パイロット・ウォッチらしからぬ“エレガント”な印象が導かれている

昼夜を問わず、時刻をひと目で判読できる視認性の高さも、パイロット・ウォッチらしさが現れたディテールだ。『マークXX』にはインデックスと針に蓄光塗装が施され、いかなる状況下でも時刻をくっきりと指し示す。

極太の針は文字盤のシルバーカラーに溶け込み、日中では存在感を控えめにするものの、蓄光面積が広く、夜間はくっきりと浮かび上がる。パイロット・ウォッチは、本来は黒文字盤に白い針、という組み合わせだが、現代の日常で使うならば、むしろシルバーダイヤルのほうがスマートに映る。

ケースバックには飛行艇が描かれている。ストラップにはEasX-CHANGE®システムを採用。ワンプッシュで着脱でき、すばやく簡単にストラップを交換できる

ケースバックはふさがっているが、それは軟鉄ケースでムーブメントを包み耐磁性能を担保した「マーク 11」からの系譜。ふさがっていることにも意味がある。つまり色も形も合理的であり、腕時計に機能美を求めるIWCラヴァーたちにとって、このモデルは鋭角に刺さりそうだ。