文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)

首都圏大手私鉄唯一のレストラン列車「52席の至福」。これからは秩父の羊山公園の芝桜が見頃を迎えるので、行き帰りの選択肢として考慮するのも良いだろう

一流シェフの料理で特別感を堪能

 近年は観光用の列車も多様化しており、ただ乗車して美しい景色を堪能するだけでなく、途中駅で下車して観光やアクティビティが楽しめたり、車内で楽器などの演奏やイベントがおこなわれたりというように、何らかの付加価値を提供する列車へと進化してきている。

 なかでも増えてきているのが車内でおいしい食事が楽しめる、いわゆるレストラン列車である。このような列車は主に地方のローカル線で運行されているのだが、実は首都圏の大手私鉄でも乗車することができるのだ。

 その列車が西武鉄道の「52席の至福」。愛称からも分かるように乗車定員はわずか52人であり、車内で過ごす時間の「くつろぎ」や「特別感・限定感」を表したネーミングとなっている。車体には西武鉄道の代表的な観光地である秩父の四季と荒川の水のイメージがダイナミックに表現され、内装には沿線の伝統工芸品や木材の一部が使用されている。

 余談だが、この車両をデザインしたのは世界的に有名な建築家である隈研吾氏であり、車内メロディーはバンド「カシオペア」のキーボーディストであり作曲家の向谷実氏、車両パンフレットの撮影は弊社レイルマンフォトオフィスが担当するなど、一部を除いて(?)超一流のメンバーが携わっている。

 その西武鉄道が誇るレストラン列車「52席の至福」は土休日を中心に、池袋または西武新宿~西武秩父間をメインに走っている。食事はすべてコース料理となっており、昼の「ブランチコース」と夕方の「ディナーコース」の2種類がある。

「ブランチコース」は午前中に都心を出発して午後に西武秩父に到着し、「ディナーコース」は夕方に西武秩父を出発して夜に都心に到着する行程だ。食事は有名店シェフ監修により3ヶ月ごとに変更され、それぞれ季節による食材や沿線の旬の味覚が提供される。料理は昼と夕方とで異なるため、往復乗車して味覚を堪能するのもオススメだ。

テーブルに置かれているのは秩父の自然をトランブ柄に見立てたオリジナルデザイン入りのメニューとコースター。コースターは乗車記念として持ち帰ることもできる