2021年にスタートしたPANERAIとBRABUSのコラボレートシリーズ第2弾は、チタニウムケース仕様! しかも、一般的なバージン・チタンニウムではなく、100%リサイクル材を使用しているというから驚きだ。これまでも再生チタニウムや再生ジュエルなどを使用して時計全体の98.6%の割合を再生素材で構成する時計を発表するなど、パネライは先陣を切って再生金属の活用に成功してきたが、いよいよチタニウム材も100%リサイクルできることを我々に示してくれたのだ。
粉状のチタニウムをレーザー焼結する先進技術を駆使
このモデルはBRABUS(ブラバス)とのコラボレーションにより生まれたモデルである。ブラバスとは、メルセデス・ベンツのチューニングを手掛けるドイツの老舗カーチューニングメーカーであるが、そのブラバスには船舶部門もあり、今回、パネライがコラボレートするのも、その「ブラバス マリン」の方だ。
新作『パネライ サブマーシブル Sブラバス eチタニオ™』の47mmケースは、“ eチタニオ™”を用いて製造されている。 eチタニオ™とは耳慣れない言葉だが、これはプレコンシューマーチタン合金から100%リサイクルされたチタンパウダーを指している。この粉末状のチタンをもとに、DMLSテクノロジー(直接金属レーザー焼結)技術を駆使して、時計ケースが作られているのだ。もちろん、この技術を活用している時計メーカーは、現状ではごくわずか。パネライはDMLSテクノロジーを用いるレべルにおいて、世界最高ランクとも言われている。
精密な3Dプリントプロセスは、金属の塊を削っていくのではなく、材料であるチタン粉末を高出力光ファイバーレーザー焼結によって融合し、何層にも重ねていくことで立体を構築していく。つまり、削るのではなく、積み重ねるという逆手法が取られているのだ。まるで無から形を生み出すような工程であるが、これはレーザーパスの精密なレイヤリング技術による賜物だ。
注目すべきは、中空構造のチタン壁を厚さ30ミクロン(0.03 mm) に仕上げることができることだ。この技術により、強度や防水性を損なうことなく、非常に薄い中空構造を実現することができ、時計ケースのさらなる軽量化が図られた。
新作の腕時計全体の重量は115g、ケースのみで23.6g。DMLSテクノロジーによるケースは、従来のチタンケースよりも約30%も軽量なのだ。
ムーブメントは2021年リリースのコラボ第1弾と同様のマニュファクチュールキャリバー「P.4001/s」。ここで注目したいのは、カレンダー表示窓の周囲だ。
このモデルはスケルトンデザインを採用しているが、このときに避けられないのは不要なカレンダー数字が文字盤側から見えてしまうこと。ところがこのモデルでは、表示窓に収まった日付だけがくっきりと見えて、残りの日付数字はおろか、カレンダー数字が記された円盤パーツのシルエットすら、目立たないようにマスキングされている。スケルトン文字盤なのに!
その背景には、パネライが考案したポラライズドクリスタル日付表示機構がある。これは日付窓枠に設置したポラライズドクリスタルを通したときだけ偏光され、数字を読ませる特殊技術だ。自社内のLaboratorio di Idee(アイデアの工房)で開発されたこの独自技術が、精悍な文字盤の表情を演出するのに一役買っているのだ。
このモデルは、ケースバック側の表情も魅力的である。マイクロローターを駆動力として、レイアウトも非常にスマート。一般的な大きなローターによって、文字盤側にも大きな影を落とさない。したがって、スケルトンデザインの表情を両面から整えているのだ。