文=JBpress autograph編集部

ルイ・ヴィトン トラベルブック5.610円

アーティストが我々を旅気分に誘う

 約20年にわたり、自社で出版物を手がけているルイ・ヴィトンは、これまでに100タイトル以上の本を刊行してきた。そのなかには、旅をテーマにした『シティ・ガイド』『トラベルブック』、写真集『ファッション・アイ』が含まれており、我々を旅気分に誘ってくれる。

 とくに世界各国の『トラベルブック』のシリーズは、アーティストが自ら訪れた国や都市をイラストレーションや絵画、漫画などで表現しているので、とても楽しい。アーティストの視点で描く、街の美しさや光の強さ、異文化との出合いは、研ぎ澄まされており、とても新鮮だ。

 そんな『トラベルブック』に、今春からオーストラリア、ブリュッセル、上海が加わった。

 オーストラリアを描くのはミラノ生まれのガブリエラ・ジャンデッリ。色鉛筆で描かれたオーストラリアの風景は、イタリア人らしくちょっと沈んだ色調で、ヨーロッパ人が旅行した、という感じが伝わってくる。同じ絵でも、オーストラリア人画家のケン・ドーンが描くビビッドな明るさとはまったく違っている。やはり旅した異国人の視点は面白い。

 ベルギーのブリュッセルは、漫画を描いてきたエヴァー・ミューレンが担当している。彼は同じベルギーでも北海に接する田舎町ウェスト=フランデレンの出身。現在は創作の拠点をブリュッセルに置いおり、いまではすっかり都会人だが、その絵には都会の混沌が描かれており、喧騒が聞こえてくるようで、とても楽しい。

 そして上海は、ナイジェリア生まれのオトボン・ンカンガが描いている。ナイジェリアで11歳まで育ち、その後パリで過ごしたンカンガはブリティッシュ・スクール、オランダ国立芸術アカデミーで学ぶという異色の経歴。だからなのか、コンテンポラリーアートに魅了されたという。この20年間、世界中の著名な美術館やビエンナーレで取り上げられてきたという彼女の作品は、一見、これが上海⁈と思うほど個性的だ。ただ、そこには強いメッセージが込められているように感じるのだ。

 ガブリエラ・ジャンデッリによる「オーストラリア」は仏語と英語、とエヴァー・ミューレンによる「ブリュッセル」は仏語と英語、オランダ語、そして、オトボン・ンカンガによる「上海」は仏語、英語に加え中国語のトリリンガルで展開される。