ヴァシュロン コンスタンタン
フィフティーシックス・コンプリートカレンダー
自動巻き、SSケース、40㎜径、228万円(税別)

 長い歴史を持つ老舗ブランドが数多く存在する時計界にあって、別格の存在感を放つヴァシュロン・コンスタンタン。絶妙な味付けが成されたモデルの数々には、連綿と受け継がれた確固たるポリシーがある。

 

最古の歴史を誇るトップブランド

 時計界において最古の歴史を誇るヴァシュロン・コンスタンタンは、18世紀に創業している。それが21世紀の今日もトップブランドとして最前線にいるのだ。言葉にすれば簡単だが、これは途轍もないことである。

 それは現状に満足せず、常に先を見て新しい商品の製作に取り組んでいるからに違いない。ヴァシュロン・コンスタンタンには、伝統的にそういった思考が継承されているのだ。

 ヴァシュロン・コンスタンタンが創業した、18世紀のジュネーブには「キャビノティエ」と呼ばれる人たちがいた。彼らは当時4000人以上の時計職人がいたといわれるジュネーブの中でも、特に技術に優れたエリートで、時計製造に関わる知識や技術だけではなく、科学や数学、歴史から哲学、芸術に至るまで、多方面の分野においても造詣が深い、インテリジェンスレベルの高い人々であった。

 そのレベルは、思想家J.J.ルソーに「どのような場面でもあらゆる話をすることができた」と言わしめたほどである。

 彼らは屋根裏部屋=キャビネットを改造して工房とし、時計製造を行っていた。そこから「キャビノティエ」と呼ばれるようになったのだ。そして、その中の1人にヴァシュロン・コンスタンタンの創業者、ジャン=マルク・ヴァシュロンがいたのである。つまりヴァシュロン・コンスタンタンには、「キャビノティエ」の確固たる知識、技術を連綿と受け継がれているのだ。

 そして当然だが、その長い歴史の中では数多くの名作が誕生している。もちろん、現在も人気モデルとして親しまれているものもあれば、時代の流れの中で、諸般の事情で途切れてしまったものもある。その中には名作といってもいいモデルが必ず存在する。

1956年に発表されたモデル

 そんな中に「リファレンス 6073」がある。1956年に発表されたモデルである。昨年ヴァシュロン・コンスタンタンは、この「リファレンス 6073」から着想を得て、新しいコレクションを誕生させている。それが「フィフティーシックス」である。

「リファレンス 6073」が登場した1950年代は、「ミッドセンチュリーモダン」という言葉があるように、多くの名プロダクトが誕生している。そんなデザインの時代に生まれたのが「リファレンス 6073」。先端のデザインには、ヴァシュロン・コンスタンタン初となる自動巻ムーブメントが搭載されていたのだ。

 その「リファレンス 6073」に、現代的な味付けを加えた「フィフティーシックス」には、ヴァシュロンの歴史がいくつか残されている。たとえばマルタ十字のモチーフ。ムーブメントの歯車の形に由来するヴァシュロン・コンスタンタンのシンボルマークである。「フィフティーシックス」には、ケースのラグがマルタ十字の4枝から着想を得て表現されているのだ。

 2019年は、その「フィフティーシックス」にコンプリートカレンダーモデルが加わった。

「フィフティーシックス・コンプリートカレンダー」には、日付、曜日、月表示に加え、122年に一度の修正で済む高精度のムーンフェイズ機能が備わっている。さらには、ストップセコンド機能も搭載されている。ダイヤルは分割表示となっており視認性がとてもいい。そしてヴァシュロン・コンスタンタンではあまり見られない、アラビア数字とバトン型インデックスが交互に並ぶチャプターリングが特徴的である。

 また、ダイヤルカラーも独自のものだ。このコレクションのために特別に開発されたという抑制の利いたブルーは、「ペトロールブルー」と命名されている。控えめなブルーは、「フィフティーシックス」のエレガンスを一段引き上げている。

 さらにボックス型の風防もヴィンテージ感を高めている。これはサファイアクリスタルでもこの型が形成できるようになったこともあり、当時のプレシキガラスから変更している。

 このように「フィフティーシックス」は、多くのデザインコードを歴史の中から掘り起こしているが、搭載されている技術は現代の、最先端のものばかり。レトロ感と現代技術の融合を絶妙なさじ加減で実現させるところに、ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史の重みを感じるのである。