ハイテクセラミックス素材のケースを採用
腕時計のケース素材は、長くゴールドやステンレススチールが一般的だった。すなわち、ケース色は金色か銀色が常識だった。
そんな腕時計のカラーに一石が投じられたのは1986年のこと。ラドーが「インテグラル」モデルにハイテクセラミックス素材のケースを採用し、初めてブラックカラーの腕時計を誕生させたのだ。続いて90年代にはホワイトセラミックスのモデルを製作し、腕時計の世界にブラックとホワイトという新しい時計色を定着させている。
このセラミックス時計の登場以降、素材の開発は時計製作における重要事項の一つとなったようで、時計ケースの進化は急速に進み、新しい素材が次々に開発されていった。ラドーのハイテクセラミックスケースも、グレーやチョコレートブラウン、ブロンズなど、短期間のうちにカラーバリエーションを増やしている。
このハイテクセラミックス素材は、色のバリエーションという魅力もさることながら、硬度が高く、キズがつき難いという特性もある。もちろん経年変化も起きづらく、様々なカラーがほぼ新品同様の姿で10年後も使用することを可能にしている。この素材がもたらした新しい形は、腕時計との新しい向き合い方を提示してくれたのである。
そんなラドーに、また新しいハイテクセラミックスのコレクションが加わった。この「トゥルー シンライン レ・クルールTM ル・コルビュジエ」は、その名の通り、近代建築の巨匠、ル・コルビュジエの仕事を称えるものである。
近代でもっとも重要な一人
ここで改めてル・コルビュジエについておさらいしておこう。
ル・コルビュジエは、建築家、デザイナー、画家、都市計画家、著述家と、様々な才能を持っており、とくに建築家としては、近代でもっとも重要な一人である。
伝統的に石積み、レンガ積みが常識だった西洋で、スラブ、柱、階段のみが主要要素だとするドミノシステムを考案。鉄筋コンクリートを使用した装飾のない平滑な壁面処理が特徴で、そこから合理性を信条としたモダニズム建築の提唱者といわれている。それは、クック邸、サヴォア邸という彼の代表作に見られる。東京・上野の国立西洋美術館もル・コルビュジエの作品である。
そんな彼の作品は、時計のデザインにも影響を与えたバウハウス、そして、その後の家具のスタイルにもインスピレーションを与えている。
またル・コルビュジエは、画期的な色彩論でも知られており、1931年と1959年に創り出された建築的ポリクロミーと呼ばれる色彩用法は、彼の建築的な63色のカラーパレットへと発展する。このカラーは今日でも建築家やデザイナーに広く利用されており、その永遠の魅力、時が経っても失われることのない重要性を持ち合わせている。そして、それは先見の明をもった真の芸術家、ル・コルビュジエの比類なき地位を証明するものでもある。
ラドーは、パリのル・コルビュジエ財団からル・コルビュジエカラーのライセンスを独占委託されている、レ・クルール・スイス社から公認された数少ないブランドの一つで、「トゥルー シンライン レ・クルールTM ル・コルビュジエ」では、建築的ポリクロミーの63色から9色を選んで製作している。そして、その色彩を表現するために、30年以上にわたりハイテクセラミックスを取り扱って蓄えてきた、専門ノウハウの全てをつぎ込んでいる。
美しく彩られたこの新コレクションは、カラーごとに999本限定エディションとして発売され、どのカラーのモデルにも全63カラーが盛り込まれたデザインの特別ケースバックが付属される。もちろん、これまでのハイテクセラミックスケースのモデル同様、モノブロック構造で作られており、耐久性、耐傷性が高く、しかも軽量という、快適に着用できる仕様となっている。