文=福留亮司

タグ・ホイヤー製のストップウォッチとデジタル表示を組み合わせて、より見やすくなったコネックテッドのストップウォッチヴァージョン。

タグ・ホイヤー コネクテッドをニューヨークで発表

 去る3月12日に、タグ・ホイヤーは第3世代のコネクテッドウォッチをニューヨークで発表した。この分野の先駆者的存在である同ブランドが、所属するLVMHグループの総帥、ベルナール・アルノー氏の子息であるフレデリック・アルノー氏を最高戦略およびデジタル責任者に迎え、強化したうえでのローンチである。かなり気合のはいったプロジェクトであることがよくわかる。

 そもそも、タグ・ホイヤーが最初のコネクテッドウォッチの製作を発表したのは2015年のこと。当時のバーゼルワールドでもっとも大きなニュースであった。

 それは“フュージョンコンセプト”を考案しウブロを大躍進させた時計界の巨人、ジャン- クロード・ビバー氏がタグ・ホイヤーのCEOに就任して初めての大きな仕掛けだったこと。そして、スマートウォッチにおいてもスイスメイドを模索するブランドが多いなか、明確にインテル、グーグルというシリコンバレーのメーカーとの共同開発を選択した、という話題性も手伝ってのことだった。

 そして、スイスの高級時計メーカーとシリコンバレーの先端技術の融合がどんなものになるのか? という興味は、いやが上にも高まっていたのである。

 果たして、発表から約8ヶ月後の2015年11月、奇しくもニューヨークで「タグ・ホイヤー コネクテッド」ウォッチは発表された。その印象は、多くの人がデジタルウォッチ、スマートウォッチに抱くイメージとは、まったく異なり、いわゆる伝統的な腕時計である、ということだった。まず腕時計として成立していて、そこにスマートフォンという連携機能を備えるという感じだったのだ。

 つまり、スマートフォン的機能が、主ではなく従という形である。だから、スマートウォッチではなく“コネクテッド”なのだろう、と解釈した。最先端のテクノロジーが内包されてはいるが、あくまでもベースは腕時計であって、たんなるスマートデバイスではないということだ。生粋の時計メーカーとして発展してきたタグ・ホイヤーならではの矜持がそこに存在する。

 大きな注目を集めて世に放たれたタグ・ホイヤー コネクテッドは、その年だけで、販売した20000本があっという間に完売したのだった。

 

クロノグラフから着想を

 その流れを汲んだ、最新鋭のタグ・ホイヤー コネクテッドも、伝統的なウオッチメイキングによるクロノグラフから着想を得た洗練されたデザインと、革新的な技術を兼ね備えた新世代のユニークな腕時計となって登場した。

GPS内蔵のGoogleのWear OSは、スポーツ時にも有効。タイムはもちろん、心拍数も計測できる。Ref.SBG8A10.BT6219/クォーツ、SSケース、45㎜径、21万4500円

 カスタムメイドされたデジタル エクスペリエンスと、多様なライフスタイルを豊かにするGPS内蔵のGoogleのWear OSによるサービスは、クロノグラフモデルらしく、スポーツ時のエクスペリエンスを飛躍的に向上させている。ゴルフ、ランニング、サイクリング、ウォーキング、そして、フィットネス時に新しく搭載された心拍数モニターによる計測などなど、新しいタグ・ホイヤーのアプリを使ったスポーツエクスペリエンスが楽しめるものとなっている。

 しかも、スポーツアプリを使用したアクティビティで、最大6時間までバッテリーが持続し、GPSや心拍数モニターや音楽、スポーツトラッキングが可能。そして、15℃~45℃の環境下、つまりほぼ3シーズンの間は、わずか約1.5時間で充電が完了するのである。

 機能が多いほど気になるのが操作方法だが、このコネクテッドウォッチは簡単に使えるように設計されている。2時と4時位置にある2つのプッシュボタンでアプリへのショートカット、開始、一時停止、再開、リセットができ、ラバーコーティングされたリューズは、ディスプレイをスクロールしてオプション表示するなど、運動中でも操作がしやすくなっている。

 また、ケースの底に目立たないように埋め込まれた樹脂製の心拍数モニターは、高性能センサーによって、高い精度と細密さでアクティビティが記録される。これにより正確に燃焼カロリーをチェックでき、さらに内蔵GPSでトレーニング中のユーザーの位置測定し、さまざまなパフォーマンスメトリックを算出。そこにはコンパス、加速度計、ジャイロスコープも含まれている。

 

伝統的なウォッチメイキング

 そんななか、このコネクテッドウォッチが“伝統的なウォッチメイキング”であることを実感させてくれるのが、素材とデザインである。素材はステンレスもしくはチタンという王道。直径45㎜とやや大きめのケースだが、ケース厚は13.5㎜に抑えられているように、従来の機械式タグ・ホイヤーモデルたちと同じように作られている。仕上げもよく、デザイン的にも遜色ない。ケース素材のひとつであるグレード2チタンは軽く、装着感もいい。腕にストレスのない着け心地は、時計メーカーならではの強みである。

ベースは「“タグ・ホイヤー カレラ」のクロノグラフモデル。 Ref.SBG8A10.BA0646/クォーツ、SSケース、45㎜径、23万1000円

 さらにダイヤルはタッチスクリーン仕様だが、他のタグ・ホイヤーモデルと同様に、キズがつき難いサファイヤクリスタルを採用。フェイスは“タグ・ホイヤー カレラ”ベースのデザインなど、オプションやカラーが簡単に設定でき、自分のライフスタイルにあわせてカスタマイズすることができるということだ。またストラップはインターチェンジャブルなので、ワンタッチで着脱が可能。あらゆるシーンやスタイルにフィットさせられるのだ。

 つまり、このコネクテッドウォッチは、タグ・ホイヤーのデザイン、仕上げのクオリティを維持したまま、メールはもちろん、Facebook、LINE、ニュースやマップ、歩数計、スポーツデータなど、現在スマートフォン上で実行したり情報を読み取ったりしていることの大半を、腕元で対応することができる。そして、それが簡単な操作によってなされるのである。

 タグ・ホイヤーのコネクテッド・ウォッチは、軸足を伝統的なスイス時計の世界に残している。装着感、素材、ストラップにこれまで培ってきた経験が活かされ、常に装着して使用するという腕時計本来の姿が、そこにはある。たんにスマートフォンの情報を見やすい位置に着けた、というディスプレイ的な発想とは大きく異なっているのだ。いわゆるスマートウォッチ的な腕時計は機械式とは別物と考えていたが、このタグ・ホイヤー コネクテッドに限っては、新しい腕時計と言ってもいいのではないだろうか。

最先端の機能が組み込まれ、さまざまな情報を見ることができる。が、ケースやデザインが伝統的なウォッチメイクであるため、ジャケットスタイルでも違和感はない