世界最古のシャンパーニュメゾンとして知られる「ルイナール」が最も得意とするブドウ品種、シャルドネ。そこから特に優れたものを選りすぐって使用し、年ごとの個性を表現するシャンパーニュ『ドン・ルイナール』の最新ヴィンテージ 『ドン・ルイナール 2010』が10月5日(水)から、順次、発売となる。
セカンドスキン
ドン・ルイナール 2010はまず、パッケージで目を引く。これまでの一般的なボックスから『ルイナール ブラン・ド・ブラン』と『ルイナール ロゼ』がすでに「セカンドスキン」という名称で採用している、ボトルをピタッと包み込む紙の衣装を身にまとうようになった。エコロジカルかつ機能的なのは先行するセカンドスキン同様。一方でデザイン的にはより複雑で独特になっている。
中身にも手が加わっている
パッケージの変化が目立つ一方、かなり分かりづらい変化が『ドン・ルイナール 2010』には起こっているという。それはコルクの採用だ。
「コルクなんて前からボトルの口についていたでしょ」という意見はごもっとも。しかしここでいうコルクとは、熟成期間中のボトルの口についているものだ。
シャンパーニュは一度、ワインを造ったあとで、そこにさらに酵母と酵母の栄養になる糖分を加えて瓶詰めし、2回目の発酵を行うワイン。密閉されたワインボトルという閉鎖空間で発酵が起こることで、酵母の発生させた二酸化炭素が液体に溶け込んで、シャンパーニュは発泡性のワインへと変わる。そして、ごく一部の例外を除いて、このときにボトルの口を押さえているのは金属製の王冠なのだ。これをドン・ルイナールでは、コルクに変えた。
無数にある諸条件の組み合わせで結果が変わるワイン造りにおいて、熟成中のボトルの口を封じるものが金属の王冠からコルクに変わることで、何が変わるのか? というのは余人にはなかなか判断しづらいところではあるけれど、9年から11年という長い熟成期間を経てリリースされるドン・ルイナールであれば、僅かな変化が、有意な差として現れることは大いにありうる。
これにともなって、最終的に澱となった酵母を瓶から出す作業「デゴルジュマン」が、一般的な機械ではなく、昔ながらの手作業になった。ルイナールはワインの品質を確かめながら1本ずつ作業しているというけれど、これが出来るのは、量的に小規模なルイナールのなかでもとりわけ小量生産の『ドン・ルイナール』だからこそだろう。
2010年はブドウの成熟が始まる8月中旬に、2カ月分の降水量に相当する集中豪雨がシャンパーニュ地方を襲った。 高温多湿の極端な気象条件により、ピノ・ノワールとムニエには被害が出たものの、シャルドネは無事に育った。ドン・ルイナール 2010はコート・デ・ブラン地区のシャルドネを90%、モンターニュ・ド・ランスの北側斜面のシャルドネを10%使用。産地の格付けはすべて最上位のグラン・クリュ。完全にマロラクティック発酵を行い、9年以上、澱とともに熟成。ドサージュは4g/リットルだ。