最近では、日本でも巨峰から造られるワインが知られるようになってきましたがオーストラリアにも巨峰でワインを造っている醸造家がいます。

その人物がアロン・アーベル。イスラエル出身。小規模に自分の思い描くワインを造るワイナリー、いわゆる「ブティックワイナリー」を営む彼は、ニューヨークから名店のソムリエがわざわざ訪ねて来るほどの天才。なぜ、彼はオーストラリアでワインを造り、巨峰はどこからやってきたのか。この謎めいた醸造家のワインが、現在、クラウドファンディングサイト「Makuake」にて登場しています。

ベラリッジエステート 巨峰 2010

 

ベラリッジエステート

アロン・アーベルがイスラエルからオーストラリアにやってきたのは、風力発電の技術者として、だった。

ウィンドサーフィンが縁で、オーストラリア出身の女性、ジョディと恋に落ち、結婚。ふたりともワインが好きだったこともあって、栽培と醸造を大学で学んで、アロンは醸造家になった。

そして、小規模ワイナリーの宝庫、西オーストラリア州スワンバレーで10haの畑を手に入れる。この畑が美しい山の稜線を望む場所にあったことから『ベラリッジ(美しい尾根)』と自らのワイナリーに名前をつけた。

それでこの畑にはすでにブドウが植わっていて、それが南アフリカからやってきた白ブドウ品種「シュナン・ブラン」と「巨峰」だった。

ほどなくしてアロンの代表作となるシュナン・ブランのほうはいいとして、なぜ、ここに巨峰があったのか? それは、この畑の前のオーナーが日本人だったからだ。その日本人男性は、南半球で巨峰ができれば、巨峰の通年供給ができるではないかと夢見て、巨峰の苗木を持ち込んで育てていたのだ。その彼が年齢を理由に手放した畑の新オーナーとなったアロン。アロンは当然、ワインを造りたいのだし、巨峰などというブドウは知らない。

若きアロンとこの畑をもっていた日本人男性

とはいえ、異国の老人の夢がこもったブドウを抜いてしまうのも忍びない。そこで、折衷案。アロンは日本のテーブルグレープらしい棚栽培だった樹をワインらしい垣根に仕立て直し、巨峰からワインを造ることにした。

西オーストラリア州スワンバレーで育つ巨峰

白ワインなの? 赤ワインなの? というと両方。白、白のマルチヴィンテージ、赤をアロンは巨峰から造っている。基本となっているのは白ワイン。日本人ならおなじみの巨峰だけれど、それを知らないワイン醸造家が造ったからなのだろう。爽やかな甘味のあるアロマはありつつも、コリアンダーのようなエキゾチックな香りをもち、味わいも、熟成を重ねたことで、甘みと爽やかさの両方を感じさせる白ワインに仕上がっている。

愛される醸造家

そもそも、このアロン・アーベルは愛される人物なのだろう。

日本との特別なつながりがある『巨峰』を日本人が飲んでみたくなるのは当然だけれど、自国にワインの銘醸地が多数あり、自国愛も強いフランスや、自国含めて世界中の名ワインの大消費地であるアメリカのプロまでが、この小さなワイナリーのワインを、わざわざ欲しがっている。

ニューヨークの、かの「イレブン・マディソン・パーク」のソムリエまでが、お気に入りなのだとか……

ブティックワイナリーというよりもガレージワイナリー? この小さな職人の仕事場に、世界の一流ソムリエがわざわざ、やって来る

そしてこのほど、ベラリッジは、アロンのワインのなかでもとりわけ評価の高い『シュナンブラン』の2014年ヴィンテージを発表。日本ではクラウドファンディングサイト「Makuake」にて手に入ることになった。

https://www.makuake.com/project/kyohowine/

ベラリッジエステート シュナンブラン 2014
最新作で2014年ヴィンテージ。それだけ熟成させるのも非常に珍しいことだ。

また、これに合わせて、先の『巨峰』ワイン全種、最新ヴィンテージで2012年という職人気質のワイナリーならではの超長期熟成の『シラーズ』、イタリアのさほど複雑な品種ではないはずが、イタリア人を唸らせたという『トレビアーノ』が登場。いずれも希少なワインを日本で入手できるチャンスになっている。