サントス デュモン
SM/クォーツ|18KPGケース、38×27.5㎜、108万円(税別) LM/クォーツ|18KPGケース、43.5×31.4㎜、128万円(税別)
Laziz Hamani ©️ Cartier

 昨年、カルティエの人気コレクションである「サントス」がリニューアルされ登場した。今年はその三針の「サントス」をベースに、さらなる機能が載せられバリエーションが増えることを期待していた。カルティエはその期待に応え、クロノグラフモデルをラインナップに加えたのだが、さらにレトロ調のモデル「サントス‐デュモン ウォッチ」をも加えてきた。予期せぬ嬉しい展開は「サントス」の普遍性をさらに強調する結果となった。

 

ヴィンテージ感のあるモデルが人気

 復刻モデルが人気だ。多くのブランドが、かつて存在したモデルをベースに現代的な解釈で新しい腕時計を生み出しているのだ。そのベースが数十年前のものだけあって、どのモデルもデザインがレトロ調で、雰囲気もいい。かつて人気だったこともあり、世の中に受け入れられる素養は十分に持ち合わせているのだ。

 そんな中、カルティエも今年、新しい「サントス」をラインナップした。「サントス デュモン」がそれで、オリジナルのデザインをかなりの割合で受け継いでいるのだ。ただ他と違うのは、この「サントス」は復刻ではなく、現在まで受け継がれてきた現役のコレクションであることだ。

 時計を知る人ならば、ご存知かと思うのだが、現在に連なる腕時計の歴史は、この「サントス」から始まったともいわれている。

 それは20世紀が幕を開けた1901年に開かれた、とあるパーティで、2人の男が出会ったことからはじまった。一人は、当時、王族や貴族からの注文が殺到するほど繁栄し「宝石商の王」と呼ばれたカルティエ3代目当主、ルイ・カルティエ。もう一人が、かのライト兄弟と並ぶ名声を得ることになるブラジル出身の飛行家アルベルト・サントス=デュモンである。

 この4年前に気球での初飛行を成功させていたサントス=デュモンは、01年も飛行船でパリ・エッフェル塔の周りを飛行するなど、革新的スピリッツの塊のような人物で、当時もっともモダンな男の一人といわれていた。そのサントス=デュモンが、ルイ・カルティエに「飛行中でも、操縦かんから手を離さずに時間を確認できる時計を」と、依頼したのである。

 そういう経緯でルイ・カルティエは新しい時計づくりに動きだす。

 それから3年後の04年に、その時計は完成する。飛行機からインスパイアされたかのようなケースは、懐中時計の定番であるラウンド型ではなく、スクエア型。しかも4つの角が丸みを帯びたデザインとなっていた。さらにエッフェル塔のシャープな骨組みを思わせる端正なケースにはビスが埋め込まれていたのだ。

サントス デュモン
SM/クォーツ|18KPG×SSケース、38×27.5㎜、55万7500円(税別) LM/クォーツ|18KPG×SSケース、43.5×31.4㎜、60万5000円(税別)
Vincent Wulveryck ©️ Cartier

1911年に市販化されたサントス

 そして、その個性的なデザインの時計には、腕に装着したまま時間が見えるように、レザーストラップが付けられていた。その後、この画期的な“腕時計”は、11年に「サントス・デュモン」の名で市販化され、瞬く間に世界的人気のコレクションになっていった。

 飛行中の重力にも耐えうる丈夫なムーブメントなど圧倒的な実用性に加え、最高峰のジュエラーが創り出すデザインコンシャスなメイキングである。人気が出ないわけがない。

 エッジをきかせた角型のケース、ケース側面からラグへのなだらかな曲線という、当時としては前衛的なデザインのこのモデルも、ダイヤルはローマ数字のインデックスにバトン針という正統派。さらにリューズにはパール状の飾りがつき、その先端にはブルーカボションという遺産が受け継がれているのだ。つまり、この「サントス」には、スポーティでありながら、パリの幾何学的な美意識が息づいた、普遍のエレガンスが宿っているのである。

 そんな1世紀以上も前に形づくられた「サントス」の原型を、年月を経て登場した最新モデル「サントス デュモン」は、しっかりと受け継いでいる。そしてそこには、伝統だけでなく現代で最先端ともいえる技術も投入されているのだ。

 新開発のクォーツ・ムーブメントがそれで、薄型のスクエアケースに搭載されている。そのケース厚はわずか7㎜。着用感は極めて軽快なのである。このムーブメントは消費電力を抑えた画期的なのもので、約6年間にわたって高精度で連続作動する長寿命化を実現している。それは従来のクォーツ・ムーブメントの約2倍ものパワーということだ。電池寿命が長いことで、電池交換というクォーツ・ムーブメントのデメリットもしっかりとクリアしているのである。

 この新しいモデルは、43.5×31.4㎜のLMとひと回り小さい38×27.5㎜のSMサイズで展開。どちらもファーストモデルと同じく、レザーストラップとの組み合わせのみとなっている。

サントス デュモン
SM/クォーツ|SSケース、38×27.5㎜、37万円(税別) LM/クォーツ|SSケース、43.5×31.4㎜、39万7500円(税別)
Vincent Wulveryck ©️ Cartier