MHD モエ ヘネシー ディアジオが2021年から日本で展開するロゼ ワイン「シャトー デスクラン」が今年、そのラインナップをぐっと押し広げる。いよいよ本格展開。これまでのロゼワインへの認識を覆し、アメリカにロゼワインブームを巻き起こしたワイナリーはホントにすごかった……テクニカル ディレクター ベルトラン・レオンとコマーシャルディレクター アラン・リヴィエールが来日して開催となったメーカーズランチからリポート。
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軽いジャブですでに力の差が歴然
困ったな……とおもった。隔世の感がある、という言葉があるけれど「シャトー デスクラン」のロゼワインはまさにそれで、世の多くの高級ロゼワインが霞むことこの上ない。
ワインは土地と人の営みが反映されたものだから、そこに優劣はないのだけれど、やはり物としての質の高低はあって、軽いジャブ的に登場した『ウィスパリング エンジェル』というロゼワインが、その前の日に飲んだ同じ南フランス プロヴァンス地方の倍以上の価格のロゼワイン、つまりこれまでの常識で言えば世界最高峰レベルのはずのロゼワインより、正直に言って格上だと感じた。
「シャトー デスクラン」のテクニカルディレクター、ベルトラン・レオンは、このワインをプロヴァンスロゼワインのクラシカルなスタイル、と言っていたのだけれど、私が前の日に飲んだワインもまさにそのスタイルで、さすがに同一地方、同一スタイルのワインを一日とおかずに飲むと差は歴然。それも一方はそのワイナリーの最上級作品なのに『ウィスパリング エンジェル』は「シャトー デスクラン」のエントリーグレードなのだ。
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希望小売価格:3,410円(税込)
使用品種はグルナッシュ、サンソー、ロール
「シャトー デスクラン」はこの『ウィスパリング エンジェル』というワインをもって、アメリカにロゼワインブームを巻き起こし、米国No.1ブランドになったそうなのだけれど、そりゃ、こんなに良いものがこの価格で買えるんだったら買いますよね。2022年ヴィンテージと2023年ヴィンテージを味わって、私は2022年のほうがより好みだったけれど、いずれにしても、ロゼワイン最高峰の水準にあるワインだ。しかも生産量が多いだけあって盤石の安定感がある。
大別して2ラインを展開
「シャトー デスクラン」はサシャ・リシーヌという人物が「ロゼを偉大なワインにする」という夢を実現するべく2006年に手に入れた南フランス プロヴァンス地方 ヴァール県 ラ・モット・アン・プロヴァンスにあるワイナリー。
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この際、ボルドーの「シャトー ムートン ロスチャイルド」で長年、醸造家として腕をふるったパトリック・レオンをコンサルタントに招き、ワイナリーの内部を理想とするワイン造りを可能にするために作り直した。先に登場したベルトラン・レオンは、このパトリックの息子で、父の志を受け継いでさらなる高みへとこのワイナリーを導いている。
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ワイナリーの敷地は427ha。ブドウ畑はうち210ha。この自社ブドウ畑のブドウから生み出されるワインと、契約農家等のブドウも使うワイン、大別して2ラインのロゼワインを造っているのが現在の「シャトー デスクラン」で『ウィスパリング エンジェル』は後者のライン。同ラインには『ロック エンジェル』というワインもある。ロック(岩)の名の通り、ミネラル感が強く、そのおかげで滑らかで奥ゆかしい雰囲気のロゼワインだ。
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希望小売価格:4,455円(税込)
使用品種は主にグルナッシュとロール
もう一方の自社畑ラインには『シャトー デスクラン』と『ガリュス』がある。
収穫からワイナリー内部にいたるまで、ブドウに余計な負荷がかかること、空気に接触して酸化することを極限まで忌避し、高級シャンパーニュや高級フランチャコルタ以上の神経質さで発酵槽まで導かれる果汁は、独自開発の温度コントロール機能を備えた600Lの容量をもったフレンチオーク樽、ないしステンレスタンクで醸造、熟成される、というところまでは、両ラインとも同一。
そのうえで、栽培段階から徹底的に自社で管理したブドウを使い、さらに細かなブレンド作業で仕上げるのが自社畑ラインの特徴で、格としては『シャトー デスクラン』がボルドーやブルゴーニュのトップクラスのワイナリーのセカンドライン、『ガリュス』がトップエンドに相当する。
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まさに未知の領域 通常のロゼワインのモノサシでは評価できない
希望小売価格は『シャトー デスクラン』で7,700円(税込)、『ガリュス』で同20,460円。ロゼワインという枠組みで考えた場合、目を疑うレベルの高価格だけれど、この「ロゼワインという枠組み」が、いままでいかに造り手も消費者も縛っていたのかを痛感させられた。
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ワイナリー名を冠したロゼワイン。使用品種はグルナッシュ、ロール、ティブラン
実際に味わってみれば、このレベルのワインであればこの程度の値段はするものだろう、あるいは、これならちょっとお買い得かな?くらいのワインなのだけれど、体験するまでこういうものが存在する世界をそもそも想像できないのだ。
先にボルドーとブルゴーニュを引き合いに出したけれど、フランスだけでなくイタリアでもアメリカでも、赤ワインとの比較で考えるのがいいとおもう。色合いから分かるように、そこからタンニンを抜いたようなワインだ。もう少し味わいについて言及してみようかとおもったのだけれど、結局、これ以上にいい表現は思い浮かばなかった。『ガリュス』については、あなたが知る中で飛び切り上等な赤ワインと比較していいレベルだ。
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樹齢100年に迫るグルナッシュの単一畑のブドウにロールを組み合わせる
熟成はそれらよりはやや早く進むと想像できる。私は今回『ガリュス』の2022年と2018年、2017年を味わうことができ、いずれもマグナムボトルだったことを考慮すると、通常ボトルの2018年は、そろそろ飲み頃かもしれない。2017年は素晴らしい熟成感とフレッシュネスが同居していたので、もうちょっと時間を楽しめるのかもしれないけれど、いずれにしても10年でまず一区切りくらいだろう。
日本市場のロゼの常識もひっくり返すか?
日本ではどうもロゼワインに人気が出ない、と言われるけれど、それはこのレベルのロゼワインがなかったからなんじゃないか? と私はおもってしまった。腕時計好きが複雑で信じられないくらいに高価な機械式腕時計に夢中になるように、ワイン好きが熱中できるロゼワイン、2万円だろうが欲しいとおもわせてくれるロゼワインは、これまでなかったのではないか?
すでに3,000円前後には面白いロゼワインがたくさんある。以前、オートグラフで紹介した「シャトー ガルペ」の『クリュ クラッセ ロゼ』 のように7,000円であっと言わせてくれるロゼワインも出てきた。「シャトー デスクラン」が見せてくれるのは、さらに高級なワインの世界。こういうピラミッド構造があること、頂点のロゼワインがどれほどの高みにあるのかを実際にワインを味わって知れば、日本のワイン好きはフェアなので、ころっと宗旨替えするような気がする。
それで私は、ベルトラン・レオンさんとともに来日した、コマーシャルディレクターのアラン・リヴィエールさんに、ロゼが売れない日本で、これだけ高級なロゼをどう売るつもりなのかたずねてみた。すると
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2008年からシャトー デスクランに関わり、その世界的大ヒットに寄与した人物
「それは私たちがアメリカで経験したことと、大体、一緒だとおもっています。最初はみんな、ロゼワインに100ドル、200ドル出したいとはおもっていないんです。でも、何の気なしにお店でグラスワインとして『ウィスパリング エンジェル』が出てきて、飲めば考えが変わる。だから、日本でもバイザグラスのキャンペーンをまずは展開するつもりです。1回で気づいてもらえなければ2回、それでもダメなら3回……」
いまさら言うまでもないことだけれど、私は考えが変わった。