ブランパンのアイコンモデル『フィフティ ファゾムス』誕生から70 周年を迎えた今年、その節目を記念する限定モデル第3弾がリリースされた。「Act 3」と名付けられたこのモデルは、当時のアメリカ軍に納品されたMIL-SPEC モデルからインスパイアされたもの。オリジナルサイズのケース径 41.3mm を忠実に再現しつつ、ケース素材を9Kブロンズゴールドとして、ブランパンらしいプレミアムなモデルに仕上げている。
特許取得済みの9Kブロンズゴールドを採用
『フィフティ ファゾムス』は、CEOが自らダイビングを行っていたことがきっかけで生まれたモデルだ。当時のブランパン共同 CEO だったジャン=ジャック・フィスター氏は熱心なダイバーだったが、彼が南仏カンヌでダイビングをしていた時に、突然、空気不足に見舞われたという。
この経験から、スキューバダイビングのニーズに適合した時間計測器が不可欠であることをフィスター氏は痛感。そして開発されたのが、1953年に発表された世界初の真のダイバーズウォッチ『フィフティ ファゾムス』だったのだ。
手巻きムーブメントよりもリューズパッキンの摩耗が少ない理由で採択された自動巻き機構、ダイビング時に求められる高度な耐磁性、10気圧以上の防水性、 視認性を確保するダークな文字盤と夜光マーカーインデッックス、これらはすべて『フィフティ ファゾムス』が初号機から搭載したディテールである。
さらに二重の防水シールが施されたリュウズ、裏蓋にある密閉システム(※ケース固定時のOリングの変形を防ぐため)、ロック可能な回転ベゼルについては特許を取得。このモデルの性能の高さは、すぐさま主要国の軍隊(フランス、ドイツ、アメリカ、ノルウェーなど)に着目され、コンバットスイマー向けモデルとして受注している。
『フィフティ ファゾムス』はその後も進化。1950年代中に、防水性表示機能の開発にも成功している。このモデルの文字盤6時位置に配された白とグレーの表示がそれであり、破損による海水の内部侵入がないことをこの色分けで判別している。もちろん、この機能は当時のアメリカ軍向けMIL−SPECモデルでも採用されたディテールだ。
逆に、オリジナルと異なる点は、ケースに用いられたマテリアルである。記念モデルの原型となった MIL-SPECモデルがニッケルシルバー素材だったのに対し、今回の限定モデルは9Kブロンズゴールドが採用されている。9K ブロンズゴールドとは、ブランパンが特許取得した合金であり、37.5%のゴールド(ホールマークは 9K)、50%のブロンズ(「ブロンズ」呼称の条件)、シルバー、パラジウム、ガリウムを含んでいる。このゴールドの影響により酸化緑青を発生せず、耐久性は改善。日常的に使用しても経年変化の影響を受けにくい。
ムーブメント1154.P2 は、100時間パワーリザーブを実現する二重香箱に加え、耐磁性を確保するシリコン製ヒゲゼンマイを搭載。この素材と独自の合金を使用し、ブランパンのムーブメントでは初の耐磁性1000 ガウスを達成した。当時のモデルは、軟鉄ケースに機構を収めることでしか磁気に対する耐性を実現できず、ムーブメントを見せることは叶わなかった。しかし、現行『フィフティ ファゾムス』同様に、この限定モデルも非磁性ヒゲゼンマイを採用することにより、軟鉄ケースを用いずとも耐磁性能を確保。ケースバックをサファイアガラスとしてムーブメントを露出させている。