昨年に引き続いてのコロナ禍ではあるが、こういった状況下でも時計ブランドは真摯に時計と向き合い、新しいモデルを作り続けている。これから6月前半まで、今年発表された新作を掲載していきたい。

まずは、パテック フィリップ。
今年は、大人気コレクション「ノーチラス」のステンレススティールモデルが最終形を迎えたり、「カラトラバ」のクル・ド・パリ装飾の後継機が登場したりと、相変わらず話題性には事欠かない。こから10年、この雲上ブランドがどのような方向に舵を切るのか?その第一歩の年と言えるかもしれない。

文=福留亮司

自動巻き(Cal.26-330 S C)、ステンレススティールケース、ケース径(10-4時方向) 40㎜、401万5000円

ノーチラス5711/1A

 絶大な人気を誇るノーチラス。とりわけステンレススティールモデルは、熱狂的と表現しても過言ではないほどだった。あえて過去形で書いてしまったのも、このモデルが今年限りで生産を中止すると発表されたからだ。気になる最終形は、これまで見ることのなかったオリーブグリーンダイヤルだった。今年は他ブランドでもグリーンダイヤルモデルが発表されているが、これほど淡いグリーンはなかなかない。その雰囲気はノーチラスにマッチしている、と言っていいだろう。ダイヤルカラー以外に大きな変更点はなく、ケース、ベゼル、ブレスレットの一目でそれと分かるデザインに、手作業によるサテン仕上げとポリッシュ仕上げのデリケートな組み合わせは健在である。防水性能も120mと十分である。ムーブメントは2019年以来「Ref.5711」が採用する、自動巻き「Cal.26-330 S C」。ストップセコンド機構が備わっており、時刻合わせも容易にできる、実用派でもある。

手巻き(Cal.30-255 PS)、18Kホワイトゴールドケース、ケース径 39㎜、339万9000円

カラトラバ 6119R/6119G

 クル・ド・パリ装飾を施した美しいモデル「Ref.5119」の系譜を受け継いだ一本と言える新作だ。カラトラバといえば、薄くフラットなベゼルやドフィーヌ針を持つ、いわゆる「96」が有名だが、この直線的なラグとベゼルにクル・ド・パリ装飾を持った少し華やかなモデルも、歴史を彩ってきたモデルなのである。ただ、この新作は「Ref.5119」のトリビュートと称しながらも、ラグやケースサイズを再設計し、さらにはダイヤルも初代「Ref.96」から着想を得てデザインされたというように、完全な後継者ではなさそうだ。「Ref.5119」の特徴のひとつであった直線的なラグも「Ref.96」に近い形状になっている。バーインデックスなのも「Ref.96」に近い感じである。ムーブメントは、この新作のために新設計された「Cal.30-255 PS」。ツインバレルによりパワーリザーブを約65時間まで延長された。かなり「ロング」になったことで、利便性が高まったと言える。

自動巻き(Cal.324 S QA LU)、ステンレススティールケース、ケース径 38㎜、551万1000円

年次カレンダー 4947/1A

 1996年に登場した年次カレンダーは、2月末日以外は大の月・小の月を自動修正してくれる便利な機能で、その間、手動での操作を必要としないもの。今年はパテック フィリップのお家芸ともいえるこのコレクションに、ステンレススティールケースのモデルが加わった。これまでゴールドまたはプラチナケースのモデルをメインにラインナップされてきたが、日常でより使いやすい素材のリリースは、日常での使用に大きなプラスであろう。ケースサイズは変わらず38㎜と程よく、ダイヤルもシャンタン装飾のブルーとスーツスタイルに完璧にフィットする組み合わせ。さらには5列リンクのブレスレットもスポーティーさを演出しており、精悍で爽やかなイメージとなっている。そして、3時位置には月が、9時位置には曜日、6時位置に日付、その上にはムーンフェイズ表示されているが、シンメトリーのデザインはスッキリとしており、視認性も抜群にいいのである。