文=福留亮司
「ビッグ・バン GMT オールブラック ヨウジヤマモト」に続く第2弾
ウブロが新しいコラボレーションモデルを発表した。という話を聞いても、時計に詳しい人なら誰も驚きはしないだろう。これまでに数多くのコラボモデルを製作し、そのいずれも話題性の高いものばかりだったからだ。
今回のモデルは「ビッグ・バン カモ ヨウジヤマモト」。今年5月に発表された「ビッグ・バン GMT オールブラック ヨウジヤマモト」に続く第2弾である。ウブロの人気コレクション「ビッグ・バン」と、日本のファッション界を牽引してきたヨウジヤマモトの世界が融合したものだ。“革新”という共通項を持つ2つのブランドが創作した腕時計には、また新しい世界が広がっているようだ。
興味の尽きない新作だが、まずはベースとなるウブロについて語っておきたい。
ウブロはスイスのレマン湖畔にある小さな町、ニヨンで1980年に創業した時計界では比較的新しいブランドのひとつである。今回のコラボブランドであるヨウジヤマモトが創業した10年後、ということになる。
ウブロの創業当時はクォーツ時計の台頭により、機械式時計中心のスイス時計メーカーは瀕死の状態だった。多くのメーカーが倒産していく危機的状況のなか、ウブロは斬新でクリエイティブなデザインの新しい腕時計を世に送りだした。フランス語で舷窓を意味するブランド名そのままに、ビスを使用してデザインされた印象的なケース。それに高級時計には装着されたことのないラバーストラップを組み合わせた腕時計は、古い概念を打ち破る、新時代を予感させるものだった。
しかしそれは保守的な時計界において“異端”でしかなかった。その壁を破ってくれたのが、イタリアを中心としたファッション界だった。その斬新なデザインが著名なデザイナーたちに認められ、世界へと発信していったのである。
2004年に打ち出した“コンセプト・フュージョン”
現代のウブロは時計界でも1、2を争う人気を獲得し、トップブランドとして誰もが認める存在となっているのだが、その発端は、2004年にジャン-クロード・ビバーがCEOに就任し、打ち出したコンセプト、「アート・オブ・フュージョン」にある。
そして、それを具現化したのが05年に発表された「ビッグ・バン」だ。ゴールドやスチール、チタンといった素材に加え、セラミック、タンタルなど、これまで腕時計に使われたことのない先端素材を使い、伝統的な機械式時計の製作技術と融合させたのである。その新鮮さは世界の時計界を驚かせ、ウブロファンを急激に増やしていった。
一方、ヨウジヤマモトは81年にパリコレクションに初参加すると、当時タブーとされていたブラックを前面に押し出したショーを展開。“黒の衝撃”と称され、一大旋風を巻き起こした。当時は賛否両論あったが、その新しさでモード界に革命をもたらすこととなった。
ブラックを基調としたデザインだが、独特のシルエットをベースに、ヴィヴィドなカラーリングを差し込んだり、ペインティングなど装飾的な要素を加えたりして、毎年新たな世界観を見せていくヨウジヤマモト手法は斬新である。余談だが、80年代にYohji Yamamotoのコレクションで見た、真っ白なベースにヴィヴィドなカラーの花が一輪プリントされたシャツは強烈な印象だった。そういった強烈なインパクトを残すところに、ヨウジヤマモトとウブロの共通性を感じるのである。
新コラボはカモフラージュ柄
新しいコラボモデル「ビッグ・バン カモ ヨウジヤマモト」の“カモ”は、文字通りカモフラージュ柄のこと。この柄は、山本耀司氏が過去に発表したワークウエアのコレクションを思い出させ、さらにこのテキスタイルの使用は、職人へのメッセージが込められているという。
ケースにはマットなブラックセラミックが使われ、サファイアクリスタルのダイヤルにはカモフラージュが。6時位置には“Yohji Yamamoto”のサインがあしらわれている。また、ストラップもダイヤルの延長線のようにカモフラージュ柄が描かれている。
このストラップのカモフラージュモチーフは、一つひとつの柄を個別にカットして組み合わせ、ストラップに加硫処理で描き出したもの。この加硫処理技術はアメリカの発明家チャールズ・グッドイヤーが発見したもので、タイヤやゴム製品に頻繁に使用されているが、腕時計のストラップに用いたのはウブロが初めてということである。
ムーブメントはウブロが誇る自社製クロノグラフキャリバー「ウニコ」。コラムホイール付きフライバックムーブメントで、パワーリザーブは約72時間と、これも強烈である。世界限定200本だが日本で先行発売されるという。ただし早めにアプローチしないと市場からあっという間になくなる可能性があるのでご注意を。
ウブロにはカモフラージュ柄の「ビッグ・バン」は過去にも存在したが、今回のコラボモデルはひと味違う。山本耀司氏も「私は、従来的価値からほんの少し外れた視点から表現するという意味で、先駆的なアプローチに強い魅力を感じます」と語っているが、まさにその通りのモデルに仕上がっているようである。
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ムーブメント | 自動巻き HUB1242
ケース素材 | ブラックセラミック
ケース径 |45㎜
価格 |242万円
問い合わせ | LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ☎03-5635-7055
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