トヨタは2024年4月19日 、ランドクルーザーの中核モデルに位置づけられる「“250”シリーズ」の販売を開始した。
250シリーズは生活実用重視
1985年に登場した「ランドクルーザー70シリーズ ステーションワゴン」に端を発し、1990年以来「プラド」の名で親しまれてきたランドクルーザーの中核モデルが、2023年8月、新たに「ランドクルーザー250」としてワールドプレミアされたのをご存じの方も多いだろう。質実剛健なイメージのボクシーなエクステリアを中心に国内外で話題を呼んだ同モデルがようやく日本に導入された。
ヘビーデューティモデルであるランドクルーザー“70”シリーズに対して、ライトデューティ系に位置づけられてきたプラド。90年に登場して以来、代を重ねるごとに時代のニーズに応じて高級・豪華路線にシフトしてきた。
こうした中、250シリーズの開発に当たっては、商品の最終責任者である豊田章男社長(当時)が「ランクルは人々の生活、地域社会を支えるためのクルマであるべき。より多くの人の生活を支えるライトデューティモデルはお客様が求める本来の姿に戻す必要がある」という基本的な考え方を提示したという。
それを受けた開発陣は「原点回帰」というキーワードのもと、開発コンセプトを「質実剛健を追求し、お客様の生活と実用を支え、お客様に信頼されるクルマ」と定め、開発を進めてきた。
またトヨタでは250シリーズの登場を機に、ランドクルーザーの象徴である300シリーズ、生活実用重視の250シリーズ、そして普遍的な70シリーズといった具合に3モデルのポジションをより明確にした。
300シリーズゆずりのプラットフォーム採用
250シリーズの特徴の一つが、300シリーズで初採用されたラダーフレーム構造のGA-Fプラットフォームが採用されたこと。超高張力鋼板を適材適所に採用し、最新の溶接技術を用いたことで、高い強度と軽量化を実現したのが特徴だ。プラドとの比較では、フレーム剛性で50%、車両全体の剛性でも30%向上しているという。
フロントにハイマウント・ダブルウィッシュボーン式、リアにトレーリングリンク車軸式を採用したサスペンションも300シリーズと同様だ。
本来はライトデューティ系のプラドの流れを汲む250シリーズだが、ボディ骨格や足まわりは、ランドクルーザーシリーズのフラッグシップたる300シリーズと同じコンポーネントが与えられたわけで、悪路走破性や動的なクオリティについてはプラドから大きく進化したことになる。
一方ステアリングには、ランドクルーザーとして初めて電動パワーステアリング(EPS)を採用。悪路走行時のキックバックにより生じるハンドルが取られる現象が減少し、すっきりとしたステアリングフィールを実現したという。また、スイッチ操作でフロントスタビライザーのロック/フリーの切り替えができるSDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)も搭載。オフロードでの走破性や乗り心地とオンロードでの操縦安定性を両立させた。
パワートレインはディーゼル・ガソリンで2タイプ
パワートレーンはディーゼルとガソリンの2タイプが用意される。
70シリーズにも搭載されている2.8リッター直列4気筒直噴ターボディーゼルエンジンは204PS/3000〜3400rpmの最高出力と500Nm/1600〜2800rpmの最大トルクを発生。トランスミッションにはダイレクトシフト8段ATが組み合わされる。
一方ガソリンエンジンは163PS/5200rpmの最高出力と246Nm/3900rpmの最大トルクを発揮する2.7リッター直列4気筒自然吸気エンジンを搭載。トランスミッションは6段電子制御ATの6スーパーETCとなる。
駆動方式はセンターディファレンシャルにトルセンLSDを用いたフルタイム4WDを採用。路面状況や走行状態に反応して前後のトルク配分を最適にコントロールする。また、オフロード走行時に路面に応じた走行支援を6つのモードからセレクトできる最新のマルチテレインセレクトなど、ランクルの使命「どこへでも行き、生きて帰ってもられるクルマ」のためのさまざまな機能が与えられる。
ワールドプレミアの際にも注目を集めた直線基調のエクステリアは、Reliability(過酷な使用用途にも耐えられる信頼性)、Timeless(永く愛せる飽きのこないシンプルさ)、Professional(プロが使う、無駄のない道具に共通する洗練された機能美)をキーワードにデザインされた。
全体のフォルムは、歴代ランドクルーザーの特徴である車軸に対しキャビンを後ろ寄りに配置するキャビンバックワードプロポーションを採用。
またデザイナー自身が悪路走行を体験することで、例えば高く中央に寄せて配置されたランプや破損しやすいコーナー部のみ交換できる分割式バンパーなど、壊れにくく、壊れても修理しやすい設計を各所に取り入れたのが特徴だという。
ボディサイズは全長4925×全幅1980×全高1925㎜(ZXグレードは全高1935㎜)。従来型となるプラド150に較べて全長、全幅ともに100mm近く拡大し、300シリーズに迫るサイズとなった。一方、ホイールベースは悪路走破性の観点からランドクルーザー80シリーズから続く伝統の2850mmが踏襲された。
インテリアについても、高さを抑えた水平基調のインストルメントパネルや直立したAピラー、形状と操作方法を機能ごとに区別したスイッチ類など、乗員が安心感を抱き、オフロードでも運転に集中しやすいデザインが追求された。
ちなみにシートレイアウトは、3列7人乗りと2列5人乗りの2タイプが用意される。3列目にはスイッチ操作で自動的にフロア下に格納可能な5:5分割式シートを用意。
また、バックドアを開けずに荷物の出し入れできるバックドアガラスハッチを採用することで、荷物の形や大きさに応じた使い方ができる大容量のラゲージスペースを実現したという。
先進安全装備については、最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車に標準装備。プリクラッシュセーフティでは、車両、歩行者、自転車運転車に自動二輪車(昼)を加えるなど検知範囲を拡張。事故割合が高い交差点などでの支援拡大を図るという。また、高度運転支援技術「トヨタチームメイト」も最新仕様が与えられる。
原点回帰をより強調するFirst Edition
250シリーズ登場を記念し「原点回帰」をキーワードとする特別仕様車「ZX“First Edition”」および「VX“First Edition”」も限定8,000台で販売される。
ZXグレード(2.8リッターディーゼルエンジン)をベースとする前者では、原点回帰をより強調する丸目のヘッドランプや、マットブラック塗装のアルミホイール、18インチオフロードタイヤなどを装備。
VXグレード(2.8リッターディーゼルおよび2.7リッターガソリン)をベースとする後者は専用ボディカラーにサンド、インテリアカラーにはダークチェストナットを採用する。
モデル展開は2.8リッターディーゼルが3グレードで、GX(5人乗り)が520万円、VX(7人乗り)が630万円、ZX(同)が735万円。
2.7リッターガソリンはVXグレード(7人乗)のみの設定で545万円となる。
特別仕様車については「ZX“First Edition”」が785万円、「VX“First Edition”」のディーゼルモデルが700万円、ガソリンモデルは590万円だ。
トヨタ ランドクルーザー250 ZX
全長×全幅×全幅: 4,925×1,980×1,935㎜
ホイールベース:2,850㎜
エンジン:2,754cc直列4気筒 直噴ディーゼル・ターボ
最高出力:150kW(204PS) / 3,000-3,400rpm
最大トルク:500Nm /1,600-2,800rpm
トランスミッション:ダイレクトシフト8段AT
駆動方式:4WD
定員:5人
価格:735万円