一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォームは、文化庁協力のもと今年も「アートウィーク東京(AWT)」を開催する。期間は2023年11月2日(木)〜5日(日)の4日間。世界最高峰のアートフェア「アートバーゼル」と提携し、日本の現代アートの創造性と多様性、コミュニティを国内外に紹介する、国際的なアートイベントだ。

AWT BUSの7ルートと各エリアの見どころ

 今年度AWTに参加する、東京の現代アートシーンを牽引する50の美術館やギャラリーや各プログラム会場をつなぐシャトルバス AWT BUS のルートは2022年から1ルート増え、全7ルートに決定。バスは午前10時から午後6時まで約15分おきに巡回し、誰でも無料で利用できる。

・Aルート:東京の北側エリア
東京国立近代美術館(A1/B5:竹橋)を起点とするAルートでは、香川を拠点にペインティグを制作する竹崎和征(A5:ミサコ&ローゼン、大塚)、奈良美智や村瀬恭子といった作家を指導したすぐれた教員としても知られる櫃田伸也(A7:カヨコユウキ、駒込)など、日本人作家の個展に注目。

・Bルート:皇居から東側のエリア
国内で27年ぶりとなるデイヴィッド・ホックニーの大規模な個展(B1:東京都現代美術館、清澄白河)が見逃せない。日本初公開となるiPadで描かれた新作を含む120点余が展示され、ホックニーの世界を体感できる。

・Cルート:銀座エリアから天王洲まで
日常的なオブジェクトを写実的な絵画で描き、テキストと組み合わせた作品を発表する熊谷亜莉沙の個展(C6:ギャラリー小柳、銀座)をはじめ、老舗ギャラリーがひしめく銀座エリアから天王洲までをつなぐ。

・Dルート:六本木・麻布エリア中心
モニラ・アルカディリ、ピエール・ユイグ、松澤宥、アピチャッポン・ウィーラセタクンなど国内外のアーティスト35名が参加する「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」(D8:森美術館、六本木)が開催。また、イギリスの映画監督でアーティストのデレク・ジャーマン(D5:タケニナガワ、麻布十番)のペインティングと映像作品を展示する回顧展にも注目。

・Eルート:恵比寿・目黑エリアから表参道まで
食文化や植物に関するフィールドワークを行って作品を制作する浅野友理子(E4:スノーコンテンポラリー、六本木)のほか、東京都庭園美術館(E1/D2:目黑)、東京都写真美術(E2:恵比寿)の2つの美術館や周辺ギャラリーを回ることができる。

・Fルート:表参道・原宿エリアから新宿方面へ
19世紀末に日本とトルコの関係性を促進した実業家で茶人でもある山田寅次郎を紹介する展覧(F7:ワタリウム美術館、外苑前)、韓国における「単色画」の作家のひとりとして知られるハ・ジョンヒョン(F3:ブラム&ポー、原宿)の作品を見ることができる。また、沖縄の生活の様子を記録し、人々に密着した写真を撮り続ける石川真生(F1:東京オペラシティ アートギャラリー、初台)は、個展開幕に合わせてアートウィーク東京のオンライントークにゲスト出演する。

・Gルート:3つのAWT特設会場と六本木エリアをつなぐ新ルート
アートウィーク東京を効率よく楽しむためにおすすめのルート。AWT VIDEO(G4/B4:三井住友銀行東館、大手町)、AWT FOCUS(G3/C1/D7:大倉集古館、⻁ノ門)、AWT BAR(G1/E5/F5:表参道)での期間限定のプログラムとあわせて、南谷理加(G2:小山登美夫ギャラリー、六本木)や、カンディダ・ヘーファー(G2:コタロウヌカガ、六本木)などの個展も見ることができる。

買える展覧会「AWT FOCUS」

「 AWT FOCUS」会場 大倉集古館

 「AWT FOCUS」は滋賀県立美術館ディレクター・保坂健二朗をアーティスティックディレクターとして迎え、64名のアーティストによる100点を超える作品を展示。作品を通して、日本近現代美術のキーワードを再考する「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」を開催する。同時に、参加ギャラリーを介して展示されるすべての作品を購入できるという企画だ。

 同企画が開催されるのは、The Okura Tokyoが位置する、東京・虎ノ門の現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館。地上1・2階および地下1階の3フロアを会場に、物質と非物質、アートとデザイン、自然と人工といった、一見相反する概念の間にバランス(平衡)を求める建設的な緊張関係が、戦後から現代までの日本において新しい表現の誕生を促してきたことを明らかにする。

交流の場「AWT BAR」がオープン

©suzuko yamada architects.

 会期中は、東京のアートコミュニティを体感できる交流の場「AWT BAR」が南青山にオープン。建築家・山田紗子が設計した空間にて、ミシュラン1つ星のフレンチレストラン「Sincere (シンシア)」オーナーシェフ・石井真介が手がけたメニューを提供する。また、AWTに参加する施設で展覧会を開催するアーティスト・大巻伸嗣、小林正人、三宅砂織の3名とのコラボレーションによる、オリジナルカクテルにも注目だ。

アートの歴史や鑑賞体験への理解を深める「AWT TALKS」

保坂健二朗
Photo by Keizo Kioku.

 慶應義塾⼤学ではシンポジウム&ラウンドテーブルを開催する。プログラムはシンポジウム、キュレーターによるラウンドテーブル、オンライントークシリーズから成る。国内外のアートを巡る言説の流れをさまざまな切り口で描き出し、理解と学びを促進するのが目的だ。オンライントークシリーズは3本を配信。アーティスト、キュレーター、批評家などクリエイティブな分野で活躍するさまざまなプロフェッショナルを招き、日本の美術史や文化史のなかで見過ごされてきた潮流や再検証すべき言説を取り上げる。

平塚らいてうの自伝からインスピレーションを得た「AWT VIDEO」

高田冬彦《Dream Catcher》2018年(ビデオスチル)
©︎Fuyuhiko Takata, courtesy the artist and Waitingroom.

 映像作品プログラム「AWT VIDEO」は「ジェンダー」と「自然」がテーマ。さまざまな映像作品のなかに見られる不条理やアバンギャルドなイメージを通して、より良い社会を目指すために不可欠な変革を考察する。思想家・平塚らいてうの自伝からインスピレーションを得て「元始、女性は太陽であった」をタイトルに掲げている。今回の「AWT VIDEO」は、哲学と歴史をバックグラウンドに持つチュス・マルティネスがキュレーションを担当。

 プログラムは3つのパートから成る。タイトルに含まれる「太陽」をイメージした形の展示什器で、ドキュメントなどさまざまな作品を上映する。岡田裕子(1970~)、地主麻衣子(1984~)、高田冬彦(1987~)などの国内作家に加え、カンボジアのクゥワイ・サムナン(1982~)、フィンランドのマイヤ・タンミ(1985~)、オランダのシャルロット・デュマ(1977~)など、多様なバックグラウンドを持つ作家14名を紹介する。