スタイリング=櫻井賢之 撮影=長山一樹(S-14) グルーミング=HORI(BE NATURAL) 文=山下英介

青空のように曇りひとつない、さわやかなブルーのキルティングブルゾン。そのパターンには秘密がある

多様性の旗手、〝ルイ・ヴィトン〟

 〝ルイ・ヴィトン〟のメンズアーティスティック・ディレクターをつとめるヴァージル・アブローこそは、現代のモードを語る上で最も欠かせない存在だ。2018年6月22日に開催したデビューコレクションで、彼はパリのパレ・ロワイヤルの中庭につくったランウェイを、光のスペクトラムで7色に染めあげた。この日から〝ルイ・ヴィトン〟という歴史的なブランドは、多様性に富んだオープンな社会を求める人々にとっての、パイオニアとなったのだ。

 〝ルイ・ヴィトン〟の2020年春夏コレクションは、多様性を象徴するアイコン、フラワーモチーフが鍵となる。色とりどりの花をプリントした華麗なロングブラウス、輪郭をぼかした花をグラフィルカルな構図にしたレインコート、ペイントでラフに描いた花をあしらったアノラック……。その手法やアイテムは様々。それはまさしく、私たちひとりひとりの生き方や個性を全肯定する、ヴァージル・アブローからのメッセージなのである。

 

モノグラム・フラワーをあしらった清々しいブルゾン

そんなフラワーモチーフのなかからJBpress autographが注目したのは、抜けるような青空をイメージさせる、スカイブルーのブルゾン。一見すると「花」には見えないが、キルティングの模様をよくご覧あれ。そう、〝ルイ・ヴィトン〟が誇るモノグラム・フラワーがあしらわれている! 

 モノグラム・フラワーといえば、1896年に創業者ルイ・ヴィトンの息子であるジョルジュ・ヴィトンがデザインした歴史的モチーフである。19世紀末にその堅牢なトランクで人々を世界へと誘ったこのモチーフが、2020年は多様性の象徴として、私たちを自由な精神へと導こうとしている……。ひとつの運命的な物語をイメージさせるではないか。

 

瑞々しいブルーで統一した着こなしを

全身ブルーで統一した着こなしのなかで、足元を引き締める役目を果たす編み上げブーツ。カーフとネオプレン素材を組み合わせたこちらにも、モノグラム・パターンが

 ブルゾンの美しいブルーやキルティング模様を生かすため、着こなしは極力シンプルに。同系色のTシャツやパンツを合わせ、足元は編み上げブーツで引き締める。まだ世界に対する偏見や固定概念など持ち得なかった少年の頃のように、清々しい気持ちにさせてくれるコーディネートである。