日本時間では3月30日に公開された、ランボルギーニの新しいスーパースポーツカー『レヴエルト』。欧州、北米、中国と、主要な自動車マーケットにおいて、内燃機関への風当たりが強くなり、2035年にはガソリンエンジンは終了か?というなかでの自然吸気V12エンジン搭載。これが最後か? 先代にあたる『アヴェンタドール』のモデルライフが11年だったことを考えれば誰だってそうおもうはず。

そんな一時代の終わりを告げるかもしれないスーパーヒーローの初舞台を、サンタガタ・ボロネーゼのアウトモービリ・ランボルギーニ本社で目撃した大谷達也氏のリポートが到着。

NA V12はいまだ死なず

 雷鳴を思わせる大音量のBGMが流れるなか、それまで視界を遮っていたカーテンがハラリとフロアに落ちると、ステージの全容が明らかになった。複雑に組み合わされたディスプレイが並ぶその奥に、Y字型のデイタイムランニングライトを輝かせたオレンジ色の“マシーン”が見える。ランボルギーニの新時代を象徴するニューモデル、ルヴエルトがベールを脱いだ瞬間だった。

 自然吸気式V12エンジンに3モーター方式のプラグインハイブリッド・システムを組み合わせたルヴエルトが、ランボルギーニの電動化戦略「ディレッツィオーネ・コル・タウリ」の第1弾に相当することは既報のとおり。この事実は、スーパースポーツカーの世界もCO2削減と無縁ではいられないことを物語っているが、そうしたなか、ランボルギーニの伝統を守りながら環境問題にも対応する最良のソリューションとして、NA V12エンジンとハイブリッドのパッケージングが選ばれたといえる。

左がステファン・ヴィンケルマン会長

「ランボルギーニのトップレンジは、伝統的に必ずV12エンジンを積んできました」 記者陣の質問に答える形で、ステファン・ヴィンケルマン会長が語り始めた。

「私たちは、今後もV12エンジンを守り続けたいと考えています。そして、同じ思いは顧客の皆さんも抱いている。そうした側面を踏まえて、ハイブリッド・システムと組み合わせたエンジンを残すことに決めました」

 もちろん、彼らは情熱だけに突き動かされて新パワートレインを開発したわけではない。

「これが社会に受け入れてもらえるかどうか、どの程度の台数が売れるのか、そして利益が挙げられるかどうかも考慮に入れたうえで判断しました」

ランボルギーニのEVは2028年に

 今後の電動化戦略について、今回はこれまでよりもさらに踏み込んだ説明があった。

「ハイブリッドモデルの第1弾としてレヴエルトを発表しましたが、来年にはウルスが、そしてその次にはウラカンがこれに続きます。また、2028年にはランボルギーニにとって初のEVとなる4番目のモデルを、2029年にはウルスをEV化します」

 ヴィンケルマン会長がいう“4番目のモデル”とは2+2(後席スペースが限られた4シーターのこと)のGTモデルで、ランボルギーニが作り続けてきたスーパースポーツカーとは一線を画すものだ。「スーパースポーツカーのEV化に関しては、2030年代に入ってから判断を下します。開発に必要な時間はまだ十分に残されています。私たちは電動化の進展、政府の動向、排ガス規制の内容などを注視しながら、最後の最後まで判断を先延ばしにするつもりです」

 ヴィンケルマン会長が示唆したとおり、自動車のカーボンニュートラル化を取り巻く環境は極めて流動的だ。

eフューエルは希望の星か?

 2035年以降にエンジン車の販売を禁止する法案を検討していたEUが、「eフューエルを用いる場合に限ってエンジン車の継続販売を認める」方向に大きく舵を切ったのは、ルヴエルトが発表される前日のこと。eフューエルとは生産の過程でCO2を取り込んだ合成燃料のことで、かりにエンジン内で燃焼させてCO2が発生しても、生産時に取り込んだ分と差し引きすればCO2を発生していないのと同じと考えられている。つまり、CO2を排出する元凶とされてきた内燃機関をカーボンフリー化できる画期的な燃料が、eフューエルなのである。この日の質問がeフューエルに集中したのは、したがって当然のことといえるだろう。

 しかし、「2035年以降も内燃機関が生き残れるのではないか?」という期待に沸き立つ報道陣をなだめるかのように、ヴィンケルマン会長はこう語った。

「eフューエルがあれば大丈夫と断言できる状況ではありません。まずは(ヨーロッパだけなく)国際的な市場について考えなければいけません。世の中のクルマの99%がEVになったとき、(内燃機関を積んだ)ランボルギーニを買うことが世の中に受け入れられない可能性も考慮する必要があります。また、かりにeフューエルを使っても内燃機関からCO2が排出されることには変わりないので、おそらく大都市からは締め出されるはずです。したがって状況を冷静に見極めなければいけません」

 最後に、レヴエルトというモデル名の由来を、改めてヴィンケルマン会長に訊ねてみた。

「いい響きの名前を見つけるのは、どんどん難しくなっています。言語によってわるい意味に曲解されても困りますからね。レブエルトは、スペン語で『混ぜる』という意味。内燃機関とハイブリッドシステムの両方を持ち合わせたクルマ、とも解釈できます。また、レヴエルトという名の闘牛が1880年代にスペインのバルセロナで活躍したという記録も残っています。闘牛場で8回もジャンプしてみせた、恐るべきファイターだったそうです」

 歴史的な闘牛の名前をモデル名に用いるのはランボルギーニの伝統のひとつ。ルヴエルトは、この面でもランボルギーニの正統な後継者といえそうだ。