現代において希少としか言いようのない、6.5リッター自然吸気V12エンジンを搭載した、ザ・スーパーカー「アヴェンタドール」が2022年に生産を終了した。その後継モデルが電動走行を可能とした初のランボルギーニとなることは、わかっていることではあるけれど、果たして、何気筒なんだ!?

歴史的瞬間にランボルギーニの故郷、サンタガータボロネーゼに招かれた大谷達也がまずは最速リポート!

モーターは前2、後ろ1

 ランボルギーニ・アヴェンタドールの次期型モデルが、ついにそのヴェールを脱いだ。

 ニューモデルの名前はREVUELTO。スペイン語で「かき混ぜた」「雑然とした」という意味があり、卵料理のスクランブルエッグにもこの形容詞が使われるようだが、「(天候が)荒れている」「(馬が)御しやすい」という意味もあり、なかなか含蓄に飛んだ言葉だ。その発音をカタカナで表記すれば「レヴエルト」となるらしい。

 現地時間の3月29日にイタリア・サンタガータボロネーゼのランボルギーニ本社で発表されたレヴエルトは、同社の電動化戦略「ディレッツィオーネ・コル・タウリ」に従い、同社初のプラグインハイブリッドモデルとされた。

 これまでにもランボルギーニは、バッテリーのかわりにスーパーキャパシターを用いたハイブリッドシステムを自然吸気V12エンジンと組み合わせ、シアンやクンタッチLPI 800-4などに採用してきたが、いずれの場合も純粋な電動走行ができない小型のハイブリッドシステムで、しかも少量のみが生産される限定モデルだった。

 しかし、レヴエルトはフロントに2基、リアに1基の、合計3基のモーターを搭載して純粋な電動走行を可能にしたほか、車載の高圧バッテリーは外部からの充電も可能なプラグインハイブリッドモデル。しかも、生産台数があらかじめ限定されていないカタログモデルであることも、シアンやクンタッチLPI 800-4とは大きく異なっている。

エンジンはNA V12だ!(やったー!)

 2021年5月に発表された「ディレッツィオーネ・コル・タウリ」は、2025年までにランボルギーニが販売する新車のCO2排出量を従来の50%まで削減することが目標のひとつ。これを実現するにはプラグインハイブリッド車を継続的に生産することが必須で、このためランボルギーニは2024年中に全モデルをハイブリッド化することを決めている。そしてこのレヴエルトは、「ディレッツィオーネ・コル・タウリ」で宣言された電動化モデルの第一弾に相当するものだ。

 注目のパワーユニットは、新開発された自然吸気V12エンジンに、前述のプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたもの。なお、フロントに積まれた2基のモーターは左右の前輪を個別に駆動してトルクベクタリングを実現する。ホンダの2代目NSXが先鞭をつけ、フェラーリSF90ストラダーレが継承した方式といっていいだろう。ちなみに、ホンダの3モーター式ハイブリッドはレジェンドで初めて紹介されたが、フロント・エンジンのレジェンドでは後輪に2基のモーターを搭載していたので、前輪を2基のモーターで駆動したのは2代目NSXが最初といって間違いない。

 残る1基は、こちらも新開発となる8速DCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)の上に搭載され、主に後輪を駆動するのに用いられる。ただし、エンジンやギアボックスのレイアウトには、これまでのランボルーニ製V12モデルでは見ることのなかった、まったく新しい考え方が採用された。

モーター&V12のミッドシップマウント方法は?

 ランボルギーニ初のミッドシップモデルは1966年にデビューしたミウラだが、これはV12エンジンを進行方向に対して横向きに搭載した珍しいモデル。現行の多くのミッドシップスポーツカーと同じようにエンジンを縦置きした初のランボルギーニ・ミッドシップは、その後継モデルとして1974年に発売されたクンタッチ(カウンタック)だったが、ここでもランボルギーニは極めてユニークなレイアウトを採用していた。

 縦置きミッドシップでは前方からエンジン、ギアボックスの順に並べるのが一般的だが、クンタッチではギアボックス、エンジンの順に並べるとともに、ギアボックスをキャビン内のセンタートンネル下にレイアウトしたのである。これには巨大なV12エンジンを積みながらも全長を短くする効果があったが、このランボルギーニ独自のレイアウトは先代のアヴェンタドールまで、およそ50年間にわたり連綿と使い続けられてきたのである。

 ところがレヴエルトは、ランボルギーニのV12ミッドシップモデルとして初めて、前から順にエンジン、ギアボックスとレイアウトしたのである。

 さらにレヴエルトではギアボックスのみ横置きに搭載してパワートレインをほぼホイールベース内に収めることに成功。重量物をホイールベースの外側に「はみ出さない」ようにすることで、俊敏なコーナリング性能を目指した。なお、前述のとおりギアボックスの上に搭載されるリアモーターは後輪を駆動するだけでなく、エンジンで駆動される発電機としても、エンジンを始動するスターターモーターとしても活用される。

カーボンモノコックボディもアップデート

 ボディの骨格をなすのはカーボンモノコックだが、その構成も前作アヴェンタドールとは大きく異なっている。

 アヴェンタドールはフロアからルーフまでをカーボンコンポジットで一体成型したモノコックを用いていたが、レヴエルトではフロアとその周囲を囲むバスタブ式モノコック(文字どおりバスタブのような形状をしているため、この名で呼ばれる)をまずはカーボンコンポジットで成型。この上にAピラー、Bピラー、ルーフを固定したうえで、これらをロッカーリングと呼ばれるカーボンコンポジット部品で受け止めるという構成とした。なお、前後に伸びるサブフレームはロッカーリングに固定される。

 ボディの主構造体を一体成型ではなく、複数の部品に分けたのは、機能ごとに部品を分けることでより効率的な設計を実現するのが目的だったはず。そのおかげもあって、ボディの捻り剛性はアヴェンタドールより25%高い40000Nm/°を達成したいっぽうで、モノコック自体はアヴェンタドールより10%も軽くなったという。

0-100km/h加速2.8秒を塗り替える超絶加速

 では、レヴエルトの走りはどのようなものなのか?

 排気量6.5リッターのV12エンジンは単体で825psと725Nmを発生。3基のモーターを組み合わせたシステム出力は最高で1015psに達し、0-100㎞/h加速は2.5秒、0-200km/h加速は7秒以下、最高速度は350km/h以上になる見通し。ちなみにアヴェンタドールの最終モデルというべきウルティメの0-100㎞/h加速は2.8秒、0-200km/h加速は8.7秒、最高速度は355km/hだったので、特に加速性能が大幅に向上していることは間違いないだろう。

 さらにレヴエルトは前輪を駆動するモーターの出力を左右で調整することにより、ステアリングを切らなくてもクルマが自分から曲がろうとする力を生み出すトルクベクタリングを実現。より軽快なコーナリングを実現したと見られる。しかも、モーターの力だけで走るEV走行も可能で、これを用いれば、深夜や早朝の住宅街を気兼ねなく走れるほか、CO2を排出する車両の流入を禁じたヨーロッパの一部都市でも走行できることになる。

ルックスはこれぞランボルギーニのフラッグシップ

 外観はご覧のとおりシャープなウェッジシェイプで、ドアを上方に跳ね上げるシザードアを採用するなど、ランボルギーニV12モデルの伝統に従ったデザインを採用するいっぽうで、ボディサイドのエアインテーク部で“E”の文字を浮き上がらせたり、Yの文字をあしらったヘッドライト周りのデザインが斬新。個人的には、シンプルな形状でワイドかつダイナミックな表情を浮き上がらせたフロントマスクの造形が、いかにもチーフデザイナーのミティア・ボルケルトらしいデザインのように思える。

 レヴエルトの発表会で取材した内容は、改めてこのオートグラフで紹介することにしよう。