フルモデルチェンジを受けBEV(電気自動車)へと生まれ変わった新型「マカン」の予約受注が開始された。ポルシェ初のフル電動SUVとして登場した同車は、電動化へと舵を切るポルシェのこれからを担う重要なモデルとなる。

マカン4種がBEV化

2014年のデビュー以来、世界中で80万台以上が販売されるなど、ポルシェの屋台骨を支えるモデルとなったミッドサイズSUV「マカン」。第2世代となる新型は、「タイカン」に続くBEV専用モデルへと生まれ変わったのが最大の特徴だ。

ポルシェは2030年までに80%以上のモデルをBEVにするという目標を掲げており、その実現に向けて販売台数の多いモデルのBEV化が必要だったこと、そしてアウディと共同開発した新しいBEV専用プラットフォームが活用できることから、新型マカンのフル電動化へと踏み切ったのだろう。

ラインアップは、2024年1月にシンガポールでワールドプレミアされた「マカン4」と「マカンターボ」に加え、エントリーグレードの「マカン」、そして「マカン4」と「マカンターボ」のギャップを埋める「マカン4S」の4モデルとなる。いうまでもなく、今回のフルモデルチェンジではパワートレインの電動化のみならず、外装デザインから、プラットフォーム、インテリアに至るまで全面的な刷新が行われた。

後輪駆動化した「マカン」は長い航続距離を実現

「当社の目標は、フル電動化されたマカンによって、このセグメントで最もスポーティなモデルを提供することにあります」

マカン製品ライン担当のイェルク・ケルナー氏がそう語るように、ポルシェは、フロントおよびリア アクスルに最新世代の永久励磁型PSM電気モーターを採用することで、優れたエネルギー効率と、卓越したパワー特性を実現したとしている。

プラットフォームには新開発の「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」を採用した。アンダーボディには総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、そのうち最大95kWhがアクティブに使用可能だという。DC充電出力は最大270kWで、適切な急速充電ステーションで約21分以内に10%から80%まで充電できる。

エントリーグレードの「マカン」は、特に高効率と航続距離に重点を置くモデルとして、同車初となる後輪駆動を採用。「マカン4」に使用される最高出力250kW(340PS)、最大トルク563Nmの後車軸モーターのみを搭載する。ローンチコントロールと組み合わせると、最大265kW(360PS)のオーバーブーストパワーを生み出し、0-100km/h加速は5.7秒、最高速度は220km/hと、エントリーモデルとは思えない俊足ぶりを見せる。注目すべきは、航続距離が最大641km(WLTPモード EU仕様)に達する点だ。これは、後輪駆動化により車重が「マカン4」に較べ110kg軽量になったためだという。

「マカン4」はローンチコントロールとの組み合わせにより最高出力300kW(408PS)のオーバーブーストパワーを発生。最大トルクは650Nm、0-100km/h加速は5.1秒、最高速度は220km/h、航続距離は最大613km(WLTPモード EU仕様)となる。

新たに発表された「マカン4S」は、システム出力330kW(448PS)、オーバーブースト時には最大380kW(516PS)、最大トルク820Nmを発揮。0-100km/h加速は4.1秒、最高速度は240km/hに達する。航続距離は最大606km(WLTPモード EU仕様)と、実用性も十分だ。

「マカンターボ」は最高出力470kW(639PS)、最大トルク1,130Nmを発生し、0-100km/h加速はわずか3.3秒、最高速度は260km/hと、スポーツカーさながらの性能を誇りながら、航続距離も最大519km (WLTPモード EU仕様)を記録する。

「マカン」を除く4WDモデルでは、2つの電気モーターはパワーエレクトロニクスを介してほぼリアルタイムに駆動力が制御され、「電子制御ポルシェトラクションマネージメント(ePTM)」は、従来の4WDシステムの約5倍の速さで作動。10ミリ秒以内にスリップに対応できるという。この辺りは、ドライビングダイナミクスにおけるBEV化の最大の恩恵といえるだろう。

新型マカンでは、電動化に伴いシャーシテクノロジーも大幅に進化した。「マカン4S」および「マカンターボ」には、「ポルシェアクティブサスペンションマネジメント(PASM)」が標準装備。さらに、「アダプティブエアサスペンション」、リアアクスルの電子制御式ディファレンシャルロックである「ポルシェトルクベクトリングプラス(PTV Plus)」、「リアアクスルステアリング」(オプション)などにより、コンフォート性能とドライビングダイナミクス性能のいずれもが高められたとしている。

スポーティな短いオーバーハングとSUVながら優れたCd値

エクステリアデザインは、力強く張り出した前後フェンダーなどポルシェ伝統のスポーティさを継承しつつ、BEVとしての先進性を表現している。ボディサイズは全長4,784×全幅1,938×全高1,622mm。ホイールベースは先代モデルより86mm長い2,979mmとなるが、短い前後オーバーハングによって相殺された。また、空力性能を追求すべく、アダプティブリアスポイラーやフロントエアインテークのアクティブクーリングフラップなどからなる「ポルシェアクティブエアロダイナミクス(PAA)」を採用したことにより、抵抗係数(Cd値)は0.25と、スポーツカー並の優れた数値を達成。航続距離の延長に貢献したと謳われる。

すべてのモデルに、新たに「オフロードデザインパッケージ」が用意されたのもトピックだろう。同パッケージでは、フロントバンパーの形状変更により、モデルによってはアプローチアングルが最大17.4度まで増加。アダプティブエアサスペンションと組み合わせると、最低地上高は標準設定より10 mm高い195 mmになり、未舗装路や急な坂道でも、より安心して走行できるようになったという。

インテリアでは、ポルシェドライバーエクスペリエンスと呼ばれる新しいディスプレイとコントロールシステムが導入された。12.6インチの曲面ディスプレイを備えたインストルメントクラスター、10.9インチセンターディスプレイ、さらに10.9インチの助手席ディスプレイ(オプション)と、最大3つの画面を備えた最新世代のディスプレイをはじめ、AR(拡張現実技術)を搭載したヘッドアップディスプレイなど、最新のテクノロジーが惜しみなく投入されている。

室内空間は前後シートともに足元スペースが増加したほか、電動化によりラゲッジスペースも拡大。ボンネット下にも容量84リッターのセカンドラゲッジコンパートメントが備わる。

エントリーモデルからハイパフォーマンスモデルまで、幅広いラインナップで展開される新型マカン。価格は「マカン」が998万円、「マカン4」が1045万円、「マカン4S」が1196万円、「マカンターボ」が1525万円で、すべて右ハンドルのみの設定となる。