ポルシェAGは5月28日(現地時間)、ポルシェ911史上初となるハイブリッドモデル「911 GTS」をオンラインでワールドプレミア。一方、ポルシェ ジャパンは29日より、新型「911カレラ」および「911GTS」の予約受注を開始した。

ポルシェ 911 カレラ GTS

その名はT-ハイブリッド

1963年に発表されて以来、RRという特異なレイアウトやスポーツカーエンジンの傑作ともいえるフラット6、そしてアイコニックなフォルムといった特長を継承し、世界中のスポーツカーファンを魅了しつづけてきたポルシェ911。

1997年の996型におけるエンジンの水冷化や、2016年の991型におけるダウンサイジング・ターボの採用など、時代の要請に応じて変化を遂げてきたのも事実だ。

カーボンニュートラル社会の実現に向け世界中の自動車メーカーが電動化戦略を推し進めるなか、ポルシェもついに61年に及ぶ911の歴史上初となるハイブリッドシステム搭載モデル、新型「911カレラGTS」を発表した。

ポルシェがモータースポーツから得られた知見をベースに新設計したと謳う「T-ハイブリッドシステム」は、電動ターボチャージャーが与えられた新開発の3.6リッター水平対向6気筒エンジンと、8速デュアルクラッチトランスミッション(PDK)に組み込まれた電気モーターで構成される。

ポルシェ 911 カレラ GTSのドライブトレイン

エンジン単体では357kW(485PS)の最高出力と570Nmの最大トルクを発生。システム合計では398kW(541PS)、610Nmとなり、先代比で最高出力45kW(61PS)、最大トルク49Nmの性能アップが図られた。

911 カレラ GTSにも搭載される3.6リッター 水平対向6気筒エンジン

それに伴いパフォーマンスも向上。0-100km/h加速は先代比でマイナス0.4秒の3秒、最高速度はプラス1km/hの312km/hを記録するという。

高電圧システムにより、エアコンのコンプレッサーを電動で駆動することが可能になりベルト駆動が省略されるため、エンジンが大幅にコンパクトに。ハイブリッド化による先代モデルからの重量増加は50kgに抑えられた。

新開発の電動ターボチャージャー

ちなみに新開発の電動ターボチャージャーは、コンプレッサーとタービンホイールの間に組み込まれた電気モーターにより瞬時にブースト圧が上昇するため、従来のツインターボチャージャーからシングルに改められた。ターボチャージャーの電気モーターはジェネレーターとしても機能。排気ガスの流れにより最大11kW(15PS)の電力を発生するという。

ハイパフォーマンス化に伴い、サスペンションも見直された。特にリアアクスルステアリングが初めて標準装備されたのが特徴で、これにより高速走行時の安定性と取り回し性が向上したと謳われる。

また、新型9111GTSではポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)アンチロール安定化システムをハイブリッドシステムの高電圧システムに統合。これにより、電気油圧制御システムの使用が可能になり、システムの柔軟性と精度が高まったという。可変ダンパーシステム(PASM)も備えられ、車高はカレラに対して10mm下げられている。

ポルシェ 911 カレラ GTS

911 カレラは出力向上と排ガス低減を実現

一方911カレラは、全面的に刷新されたと謳われる3リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載。ちなみにターボチャージャーは、先代ではGTS専用だったものを採用し、インタークーラーをエンジン上部のリアリッドグリル真下に配置したことなどにより、出力向上と排出ガスの低減が実現したという。

ポルシェ 911 カレラ

最高出力は290 kW(394PS)、最大トルクは450Nmを発生し、0-100km/h加速は4.1秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は3.9秒)、最高速度は294km/hに達する。

マトリックスLEDヘッドライト

エクステリアも新デザインのバンパーの採用をはじめアップデートが図られた。ヘッドライトは4灯グラフィックのマトリックスLEDヘッドライトにすべてのライト機能を統合。これによりフロントドライビングライトを省略でき、フロントに大型の冷却ベントを設けるスペースが生まれた。

ポルシェ 911 カレラ

911カレラGTSのフロントエンドには、アクティブ冷却エアフラップなどのフラップが与えられ、アンダーボディのアダプティブフロントディフューザーとの相乗効果でエアロダイナミクスを最適化。サーキット走行などパワーの要求が高い場合、フラップが開き大量の空気をラジエーターに送り込むという。

911 カレラ GTSではフロントにはフラップを備える

足元では、19/20インチまたは20/21インチの計7種類のホイールデザインを用意。911カレラに初採用されたエクスクルーシブデザインのホイールは、空気抵抗係数を低減するカーボンブレードを備えている。

また、特徴的なフロントスポイラーを備えたスポーツデザインフロントバンパーやサイドシルパネル、固定式リアウイングからなるエアロキットがオプションとして用意される。

インテリアは2シーターレイアウトが基本になった!

ポルシェ 911 カレラのコックピット

インテリアに目を向けると、これまで911ではGT3などの特別なモデルを除いて2+2レイアウトが基本だったが、2シーターが標準に。希望者は追加料金なしで2+2シートも選択できる。

メーターパネルは911として初めてフルデジタル化。12.6インチの曲面ディスプレイは、レブカウンターを中央に配した伝統的なポルシェの5連メーターにインスパイアされた独自のクラシックディスプレイを含め、最大7種類の表示が可能だという。

10.9インチの高解像度センターディスプレイで操作できるポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)システムにより、ドライビングモードのカスタマイズ性やドライバーアシスタンスシステムの操作性も大幅に改善した。コネクティビティー機能も充実し、例えばApple CarPlay®では必要に応じてメーターパネルに情報を表示したり、Siri®音声アシスタントなどを介して車両機能を直接操作したりすることができる。

センターコンソールには電磁誘導充電機能を持つスマートフォン用の冷却コンパートメントが備わり、911としては初採用となるスタートボタンがステアリングホイールに設置されるなど、現代のクルマとして細かなアップデートが図られているのも新型911の特徴だ。

イグニッションもついにボタンに

日本仕様の詳細については続報を待ちたいが、ポルシェにおける永遠のアイコンともいえる911が電動化時代へ新たな一歩を踏み出したのは、同車の歴史において大きなトピックといえるだろう。