エルメネジルド ゼニアは1910年創業のイタリアで最も有名な企業の一つである。創業者のエルメネジルド・ゼニアは革新的な技術による最高級ファブリックを提供するというビジョンのもと、18歳でビジネスを始めた。

 第二世代、創業者の息子であるアルドとアンジェロの時代には、グローバル戦略を着々と展開し、1991年にはラグジュアリーブランドとしては初の店舗を中国に開いた。

 現在はゼニアファミリーの第三世代、祖父の名前を継承したエルメネジルド・ゼニアがCEOとして活躍、続々と有力企業を傘下に置いたり、異業種とパートナーシップを結んだりしている。2018年にはニューヨークのファッションブランド、トム・ブラウンの株を85%取得した。高級車のマセラティとは2013年から提携し、車のインテリアをデザインするとともに、レジャーウェアやレザーアクセサリーを提供している。

 現在のアーティスティック ディレクターは、アレッサンドロ・サルトリである。2003年から2011年まで「Z Zegna」のクリエイティブ・ディレクターとして活躍後、一度はブランドを離れたものの、2016年から再びアーティスティック ディレクターとしてエルメネジルド ゼニアに加わり、全ブランドのクリエイティブの舵を取る。

 さて2019年、エルメネジルド ゼニアは世界を巻き込んで「男らしさ」を問いかけるキャンペーンを行っている。俳優のマハーシャラ・アリやニコラス・ツェーが、私たちに問いかける、「いま、男であるとは何を意味するのか?」 

 ある男は「義務」と答え、別の男は「犠牲、リーダーシップ」と答える。また「遊び心」と答える男もいれば「自分自身であること」と答える男もいる。答える人がひとり増えるごとに、男らしさの定義が広がっていく。

 エルメネジルド ゼニア クチュールのこのロングパーカは、リサイクルポリエステルでできている。襟は取り外し可能で、個性的なポケットやドローストリングがあしらわれ、細部まで丁寧に作り込まれている。裾がジップ付きのパンツ、厚底に装飾があしらわれたブーツとともに着用されると、今までになかったユニークなバランスが現われる。

 あなたにとって男らしさとは何なのか。男女の境界が融合し、混迷する時代だからこそ、ピュアで恐れ知らずの問いを真っ向から問うてくるエルメネジルド ゼニア。考えて、議論する、そのプロセスそのものに価値があることを、答える人一人一人の表情が教えてくれる。

文:中野香織