例年通り新作の本数は少ないが、その分力作が期待されるA.ランゲ&ゾーネ。今年も期待に違わぬニューモデルが登場している。機械の素晴らしさは言うまでもないが、今回は「リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ」の美しさに、思わずため息が出たほど。仕上げにおいても超一流ブランドの新作を紹介する。

文=福留亮司

手巻き(Cal.L121.2)、18Kホワイトゴールドケース、ケース径36.8㎜、535万7000円

リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ

 とても美しいダイヤルである。このダイヤルはベースがシルバー。それをブルーゴールドストーンという人工石素材が覆っているのだ。ガラス質の表面には、銅の粒子など浮遊物が入っており、光を受けてきらめくのである。インデックスには12・3・6・9のローマ数字と星が置かれており、いずれもホワイトゴールド製で輝いている。そして、ブルーダイヤルに溶け込み見え隠れするムーンフェイズには、ホワイトゴールドの月のほか、なんと628個もの星が描かれているのだ。ロマンティックな雰囲気に誘うこのムーンフェイズは、1日分の誤差が生じるまで122.6年かかるという高精度なものでもある。それを可能にした搭載ムーブメント「Cal.L121.2」は、シースルーバックから見ることができ、そに施された美しいコートドジュネーブ装飾も美しい。またバリエーションとして、ベゼルに56個のブリリアントカットダイヤモンドセッティングのモデルも用意されている。

自動巻き(Cal.L021.3)、18Kホワイトゴールドケース、ケース径41.9㎜、1328万8000円(予価)世界限定150本

ランゲ1・パーペチュアルカレンダー

 オフセンターに配置された時分計、重ならないことで視認性を高めたスモールセコンド、さらにはレトログラード式曜日表示。独自のダイヤルデザインが特徴の「ランゲ1」にパーペチュアルカレンダー搭載モデルが加わった。ダイヤル外周に月表示の回転式リングが置かれ、月を指し示すための6時位置のうるう年表示付きポインターもバランス良く配置されていることで、「ランゲ1」独自のデザインを崩すことなく機構を加えているのだ。7時位置のムーンフェイズも、24時間周期のデイ&ナイト用ディスクと、29日12時間44分3秒周期のムーンフェイズ用月ディスクを2層にしており、これもデザインバランスに一役買っている。ムーブメントは新しく開発された自動巻き「Cal.L021.3」。多くの機能を搭載しながらケース厚が12.1㎜というのも、さすがA.ランゲ&ゾーネというところである。グレーのシルバー製ダイヤルとピンクゴールド製ケースのモデルもある。

手巻き(Cal.L132.1)、18Kピンクゴールドケース、ケース径43.2㎜、2024万円(予価)世界限定100本

トリプルスプリット

 2018年に発表された「トリプルスプリット」に新色が加わった。トリプルスプリットとはクロノグラフの一種で、2本のクロノグラフ針を持つ特殊なクロノグラフのことをいう。これによって最長12時間まで2つの計測タイム(基準タイムとラップタイム)の比較ができ、さらに、途中で何度もラップタイムを6分の1秒単位で計測できるのである。また、ダイヤル上にはロディウムカラーの2カウンターに、12時位置、6時位置にも小振のサブダイヤルが置かれ、インダイヤルは計4つ。時分針を含めると、なんと針が10本もあるのだ。これは、現在もっとも複雑なクロノグラフ機構といっても過言ではないだろう。ムーブメントは手巻きの「Cal.L132.1」。もちろん、シースルーバックになっており、567ものパーツがある複雑なムーブメントの鑑賞が可能である。ローターがないので、A.ランゲ&ゾーネの真骨頂でもある仕上げの美しさを十分に堪能できる。100本のみの限定生産。