スタイリング=櫻井賢之 撮影=長山一樹(S-14) グルーミング=HORI(BE NATURAL) 文=山下英介

襟を広げればテーラードジャケットのように、写真のようにボタンを一番上まで留めればブルゾンのように見える、今季注目の1着

「生き方」をデザインするブレないブランド

 「モードの帝王」と呼ばれる唯一の男、ジョルジオ・アルマーニ。1975年のブランド設立以来、たった十数年で世界を制覇し、レストランやホテル、スポーツといったライフスタイルの分野にまでその勢力を拡張した、生きる伝説的存在である。

 〝ジョルジオ アルマーニ〟というブランドが、私たちの生活にここまで浸透した理由。それはアルマーニ氏のデザインが、ファッションの枠組みを超えた、社会に深くコミットするものだったからだろう。彼はテーラードジャケットの構造を解体し、ユニセックスな存在にデザインし直すことで、男たちの装いには着心地のよさとナイーブな表情を、女性たちの装いには社会で生き抜くための威厳あるたたずまいをもたらした。この「発明」は、現在のモード界における一大テーマ、「ジェンダーレス」の先駆けだったのだ。ひとつの生き方を象徴するモードだからこそ、彼のデザインは揺るぎない。

 

キーワードは「流動性」

着丈70㎝とコンパクトなシルエットのジャケットと、ゆったりしたテーパードパンツというコーディネート。ネイビーとブラウンという、都会にもリゾートにも映える配色も魅力的だ

 そんな〝ジョルジオ アルマーニ〟の最新コレクションは、「流動性」がひとつのキーワードとなっている。着方によってはブルゾンのようにも、シャツのようにも見えるショート丈のジャケット。やわらかな素材を使い、あるがままに動くシャツやパンツ。自由に形を変えるこれらのワードローブは、時として都会的にもリゾートっぽくも見える。つまり存在自体も流動的なのだ。

 

異なる素材の組み合わせから生まれる、豊かな風合い

ジャケットはビスコース、コットン、メタル繊維などの混紡。ベストはコットンとビスコースの混紡。パンツはリネン100%。どれもシワ感の強い素材ながら、それぞれ異なった風合いをもち、その絶妙なコントラストが趣ある表情を生み出す

 メタリック繊維を混紡した4つボタンのショート丈ジャケットに、コットンにビスコースを混紡したダブルブレストのベスト、そしてリネンのパンツ。異なる3つの素材どうしのコントラストが楽しめる今回のルックも、まさにそんな流動性の賜物。ナチュラルなシワ感を刻み、フォーマルとカジュアルを自在に行き来するその着こなしは、男たちのライフスタイルがボーダレス化した現代にこそふさわしい。〝ジョルジオ アルマーニ〟とはいつだって、人間の「在り方」をデザインするのだ。