スタイリング=櫻井賢之 撮影:長山一樹(S-14) グルーミング=HORI(BE NATURAL) 文=山下英介

レオパード(豹)柄と、花柄との競演。しかしそれが決して俗っぽく見えないのが、〝ドリス ヴァン ノッテン〟の真骨頂

時代を超越したデザイナー

 決してマーケットに媚びることなく、30年以上にわたって自由なクリエーションを貫き通すドリス・ヴァン・ノッテン。そのポリシーは、目先の流行には決してとらわれない、タイムレスなものづくり。伝統的な技術を持つ工場で、時間をかけて開発されるオリジナルの生地。端正な仕立て。インドで職人を養成してまで追求する、美しい刺繍……。30年以上にわたってモードの第一線で活躍するその姿勢は、世代を超えたリスペクトを集めている。

ジャケットパンツ、どちらもウール100%の生地にプリントを施したもの。ジャケットにはしっかりと肩パッドが施されており、よりマニッシュな印象に。ウエスタン調のベルトや華奢な白いスリッポンを、アクセントにしている

あえて挑んだ〝男らしさ〟の表現

 近年モード界の一大テーマといえる「ジェンダーレス」の潮流の中で、〝ドリス ヴァン ノッテン〟はクラシックなスーツスタイルやミリタリー、ウエスタンといったさまざまな男らしさの概念をあえて強調。肩パッドや絞ったウエスト、大きく開いた胸元などで、男のセクシーさを表現している。しかしもちろん、彼が旧態然とした〝男らしさ〟の概念に縛られることはない。みずみずしいフラワープリントやビジューによる装飾、艶やかなビスコース素材などを通じて、優しくて繊細な、現代の男性像を築き上げているのだ。

 

男の二面性を表現する、柄のミックス

やわらかな素材を使ったインナーのチェックシャツはノースリーブで、しかも肩パッド入り! 一枚で着ても魅力的なスタイルを演出してくれる

 今回撮影したスタイルからも、そんな彼の姿勢は明らかだ。レオパード(豹)柄のジャケットと花柄のパンツのミックスという大胆なコーディネートながら、ウール100%の上質な生地にプリントされたそれらは、構築的な美しい仕立てと相まって、どこか静謐なムード。そこにはワイルドさとナイーブさという、男の二面性が存在するのだ。そう、このブランドが提案するワードローブが何年経っても古びないのは、彼が「流行」ではなく「人間像」を生み出しているからだろう。