掃除機からドライヤーへ。ジャンルを超えてつながっていく技術

 もともとホンダの「スーパーカブ50」を愛用し、ソニーのウォークマンに日本のものづくりに対する姿勢へのリスペクトを抱いていたジェームズですが、「G-Force」とその後継機の開発を通じて、その思いは強くなっていきました。特に、小さくて精巧なものを好む日本人の志向に触れた経験は、ダイソンのその後の製品開発に生かされていきます。

 DCの型番が用いられた「G-Force」の後継機のうち、日本の家庭をターゲットとした「DC12」は、躯体をA4サイズにおさめることを求められました。パワーを維持したままコンパクト化することは困難を極めましたが、その結果として、ダイソンは世界初のデジタルモーターという独自の技術を手にすることになりました。

 ダイソンが2016年に美容家電部門に進出した時、ぽっかりと穴のあいた不思議な形は、サイクロン掃除機以上に驚きをもって迎えられました。このドライヤー、風をおこすためのモーターはなんとハンドル部に格納されているのです。一般的なドライヤーのモーターはヘッド部分の内部にあり“頭でっかち”な形になるため、使用する際の疲労の原因にもなっていました。

 しかしダイソンのドライヤーはヘッドが軽くて重量バランスがよく、身体に負荷がかかりません。それも、単1電池ほどの大きさで重さはたったの49g、それでいて1分あたり最大11万回転できるというデジタルモーターだからできたこと。取り込んだ空気は「羽根のない扇風機」で培ったダイソン独自のエアマルチプライアー技術によって3倍に増幅され、高圧・高速の気流を生み出します。ちなみに、「Dyson Supersonicヘアドライヤー」が最初にお披露目されたのも日本でした。

 2011年発売のコードレススティック掃除機や2015年発売のロボット掃除機にも搭載されているデジタルモーターは改良を重ねられ、さらにパワフルにさらに小さく、そしてさらに静かになっています。モーター以外にもダイソンが開発した革新的な技術は数多くありますが、新しい製品を開発するうえで、ダイソンは日本市場でテスト販売した製品から得られるフィードバックをとても大切にしているとジェームズは言います。