スタイリング=櫻井賢之 撮影=長山一樹(S-14) グルーミング=HORI(BE NATURAL) 文=山下英介

フレアパンツと〝グッチ〟のアイコン「ホース ビット」の組み合わせは、自由へのエネルギーが渦巻いていた、1970年代を強くイメージさせる

テーマは「権力への抵抗」

 ジェンダーはもちろん、世の中におけるラグジュアリーや美醜の概念をも覆してしまった、アレッサンドロ・ミケーレ率いる〝グッチ〟。モードの世界から飛び出し、現代社会に風穴を空けつつあるこのブランドが、2020年春夏に世に問うたテーマ。それは「権力への抵抗」であった。

 ほかのブランドであれば鼻白んでしまうような直球のメッセージも、今まで〝グッチ〟がなしえた功績を考えれば、決して大げさには聞こえない。近年のお約束となりつつある男女合同のショーでは、アイウエアにつけた巨大なチェーン、首輪のようなチョーカー、鞭といった、「抑圧のアイコン」をアレンジしたモチーフが多数登場。アレッサンドロ・ミケーレの現代社会への問題提起を、強く感じさせるスタイルが続々と登場した。

 

ドラマチックなAラインを描くメルトンコート

コントラストの強い色使いや、Aラインのシルエットが強烈な存在感を主張

 そんな今季の〝グッチ〟からautographが選んだのは、真っ赤なメルトン生地のコート。オフィサーコートの精悍さと、貴族的な華やぎを併せ持つ、鮮烈な1着だ。背面には深いプリーツが施されており、美しいAラインのシルエットを描き出す。これにタイトなブルーのシャツやフレアパンツ、ホースビット付きのサンダルを合わせることで、〝自由のための闘争〟華やかなりし1970年代を彷彿させるスタイルを完成させている。

 

社会へのメッセージを秘めたアクセサリー

レザー製の扇子と、リップスティックが仕込まれたグローブ

 さらに注目すべきは小物使い。スタッズを打ち込んだレザー製の扇子はまだしも、甲に銃弾を仕込んだグローブとは、なんとも過激な……。と思いきや、実は中身はリップスティックだったというオチが。暴力ではなく「美」をもって革命を起こすという〝グッチ〟のメッセージが、このルックには込められているのだ。