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セリーヌのアーティスティッ・クリエイティブ・イメージ・ディレクターは、2019年春夏シーズンから、エディ・スリマンに代わっている。
エディ・スリマンとは、フランス版「バニティ・フェア」が、2018年に最も世界に影響を与えたフランス人として選んだファッションデザイナーにして写真家である。チュニジア系とイタリア系の母のもとに、1968年、パリに生まれている。
彼の名が最初にとどろいたのは2000年、クリスチャン・ディオールがメンズ部門「ディオール・オム」を始めるにあたり、クリエイティブ・ディレクターとしてエディを招聘した時であった。彼が発表した「男を小さく見せる」スーツは激しく非難されたものだが、その影響力はすさまじく、メンズスーツのトレンドは、モード界のみならず、量販店に至るまで細身になっていた。少年の繊細さにロックなテイストが加味された男性像は、その後、手がけるブランドが変わろうと、大きく変化していない。
2007年にディオール・オムを退任後、エディはしばらく写真家として活躍していたが、2012年、イヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターに就任する。ブランド名から「イヴ」を削除して「サンローラン」に変え、ロゴまで変更してしまったことをはじめ、創始者イブ・サンローランとほぼ無縁なロックテイストを貫いたエディは、従来のサンローランのファンを激怒させる一方、新しい世代のファンを獲得した。
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そして2018年にセリーヌにやってきた。エディはサンローランで行ったことと同じようなことを行い、2019年春夏にロックテイスト全開のコレクションを発表した。エディ・スリマン色全開となったそのシーズンは物議を醸したものだったが、半年たったこの秋冬シーズンもやはりエディ節全開であった。しかし、もはや誰も何も言わない。エディ・スリマンは、何をやってもどこへ行っても、悪びれることなく、エディ・スリマンなのである。
そのようなあり方もひとつのクリエイティブな流儀として世界に認知させてしまったエディ・スリマンの今期のテーマは、ロンドンの若きクリエイティブ世代である。美しいテイラリングのスーツに、ツイード、ドニゴール、カシミアといったイギリスらしい素材のオーバーコートやベストが合わせられる。スパンコールをあしらうグラマラスな仕上げがエディ風。スキニーなタイは、1960年代のモッズカルチャーも連想させる。スニーカー全盛の時代に足元は黒い革靴というのも、ささやかな時流への反抗に見え、かえってロックなムードを醸し出している。どんなメゾン、ブランドであろうとわが道を貫きとおしてファンを失わない強さ、あやかりたい。
文:中野香織
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