文=本間恵子
赤いハートを効かせたフェミニンな顔立ち
2月14日のヴァレンタインデーに向けて、今年もさまざまなウォッチブランドから限定モデルが登場している。日本では女性が男性にチョコレートを渡して告白する日だが、欧米では男性が恋人やパートナーに贈り物をして愛を伝える日。だからヴァレンタインウォッチにはハートモチーフがあしらわれるのが常なのだ。
2021年のヴァレンタインウォッチで最もスウィートなのは、赤やピンクのハートがロンドを踊るハリー・ウィンストン「HW ミッドナイト・バレンタイン ダンス オートマティック 36mm」だろうか。赤いハートはマザーオブパール(真珠母貝)。ピンクのハートはピンクサファイア。秒針を配したスモールセコンドの中心にもハートのエングレーヴィングがほどこされ、まさにハートづくし。12時位置には創始者ハリー・ウィンストンが最も愛したとされるエメラルドカットダイヤモンドが輝いている。
キューピッドの愛の矢が優しく時を告げる
毎年この時期に小粋なヴァレンタインウォッチを発表して話題になるのは、老舗ブランパン。2021年の今年は、21度めのヴァレンタイン特別エディションの発表となるという。期待の「ヴィルレ バレンタインデー 2021」は、一見ごくシンプルなデザイン。しかしよく見ると、秒針は愛の矢に貫かれた小さな赤いハートのモチーフなのだ。
このウォッチは自動巻きムーブメントを搭載していながら、日本人好みの小ぶりなサイズ。4日間のパワーリザーブを誇り、日付表示もあって実用性に優れている。背面を見ると、ローターにもハートのモチーフ。文字盤には上質なマザーオブパールを使用しているから、美しい真珠光沢も楽しめる。可憐さと気品をただよわせた、才色兼備のウォッチだ。
胸の鼓動をキネティックなハートに託して
最後にご紹介するのは、ブレゲの「クイーン・オブ・ネイブルズ 9825 “ハート・エディション”」。秒針がハートをかたどっているのだが、それだけでは終わらない。秒針の先端が文字盤の上半分を移動するときはハートが大きく伸び、下半分では小さく丸くなる。まるでハートが鼓動しているかのようにハートの大きさが変わるのだ。
ブレゲのアイコン「クイーン・オブ・ネイブルズ」コレクションの特徴的なオーバルシェイプを生かしたユニークな機構なのだが、手元の時計に目をやるたびに心が明るく浮き立つようなデザインはさすが。リュウズには赤いルビーをあしらい、ヴァレンタインのロマンティックな気分を高めてくれる。
ただし、現代はジェンダーレス化が声高にうたわれる時代。男性がプレゼントしてくれるのを座して待つまでもなく、女性たちは自分自身にヴァレンタインウォッチを贈ってもいいのだ。いまの時代、自分で自分を元気づけることもとても大切なのだから。