スタイリング=櫻井賢之 撮影=長山一樹(S-14) グルーミング=HORI(BE NATURAL) 文=山下英介

ダブルブリッジとミラーレンズが、近未来的なイメージを加速させるサングラス

キム・ジョーンズが手がける〝ディオール〟とは?

 1979年にロンドンで生まれ、ストリートからハイファッション、そしてクラシックに至るまで、ジャンルを問わない活動でファンを魅了してきたキム・ジョーンズ。彼が2018年に次なる舞台として選んだのは、フレンチエレガンスの象徴ともいえる〝ディオール〟であった。

 オートクチュールとテーラードの長い伝統をもつこのブランドで、彼がいち早く手がけたこと。それはラグジュアリーとストリート、そしてアートとの融合。アメリカのストリートアーティスト、KAWSとコラボレーションした2019メンズコレクションや、日本が誇る現代アーティスト、空山基の作品にインスパイアされたプレフォール2019メンズコレクションは、世界的にも大きな話題を集めている。

 

クチュール、アート、テーラードの融合

アシンメトリーな装飾が施された、ホワイトのセットアップスーツ。パンツは共生地のベルトでウエストを絞る構造になっている

 そんな彼がサマー2020メンズコレクションで挑戦したのは、テーラードとアートのミックスである。今回コラボレーションしたのは、ニューヨークを拠点にもつ現代アーティスト、ダニエル・アーシャム。〝フィクションとしての考古学〟をコンセプトに活動する、彼の世界観を洋服の中に落としこんでいる。なかでも注目したいのは、特別な色彩感覚をもつ彼の「見える世界」を表現した、ホワイトのテーラードジャケットとセットアップのパンツ。取り外し可能なシルクサテンの生地が襟から裾にかけて仕込まれており、それがクラシックなジャケットに、モダンさとクチュール譲りのエレガンスをプラスしている。

 

すべてはエレガンスのために

〝リモワ 〟とのコラボレーションによる、アルミニウム製のバッグ『パーソナル』。カーフスキン製のストラップは取り外し可能で、クラッチバッグとしても使用可能だ

 ネクタイがわりにネックレスを合わせた着こなしや、〝リモワ 〟とのコラボレーションによってつくられたミニショルダーバッグ、ラバー製のブーツなど、キム・ジョーンズが提案するスーツスタイルには、固定概念にとらわれない自由なマインドがみなぎっている。ビジネスという概念から解き放たれたテーラリングは、これからいったいどこに向かうのか? その答えは、〝ディオール〟が知っている。