スタイリング=櫻井賢之 撮影=長山一樹(S-14) グルーミング=HORI(BE NATURAL) 文=山下英介
クラフトの精神こそ、現代のラグジュアリー
このデジタル社会のなかで、あえて人の手が産み出したもの=「クラフト」の温もりを発信し続ける、〝ロエベ〟のクリエイティブ ディレクター、ジョナサン・アンダーソン。2013年に現職に就任した彼は、〝ロエベ〟のイメージを大胆に刷新しながらも、その1872年から続く伝統に培われた、クラフツマンシップに敬意を捧げてやまない。「クラフト」というキーワードも、そんな活動の中から自然発生したものだ。2016年には彼の発案により『ロエベ ファンデーション クラフト プライズ』を創設。現代の優れた職人を見出し、パトロナイズしている。
宇宙を生きる遊牧民の、自由なワードローブ
そんな〝ロエベ〟の春夏コレクションは、「宇宙の夢のなかをさすらう遊牧民」のフィルターを通して肉体も精神も旅に出る、というコンセプチュアルなもの。いわば究極のノマドスタイルだ。ワンピースやチュニックといったアイコニックなものから、真っ白なセーラーシャツやオーバーオールにいたるまで、解放的かつ涼やかなワードローブがそろっている。そして、そこに類いまれなラグジュアリー感を添えるのが「クラフト」の力。〝ロエベ〟が誇るカシミアスエードを筆頭に、バングラデシュで織られたヴィンテージテイストのコットン、日本製のデニム……。これらの風合い豊かな天然素材が、ともすればヒッピーテイストに陥りがちな着こなしに、圧倒的な品格をまとわせている。
ニットやバッグに込められた、職人の手の温もり
今回JBpress autographが選んだのは、近年の〝ロエベ〟では定番ともいえる、ロング丈のウールニット。さらに丈の長いインナーを合わせ、アンクル丈のサンダルを取り入れるという、自由でユニセックスな装いだ。今までの固定概念を取り払って袖を通してみると、全身を突き抜ける春の風が、身も心も解放してくれるよう。そして椰子の葉で手編みしたというバスケットバッグは、製品ごとに異なる不ぞろいな網み目がかえって、手仕事の温もりを私たちに伝えてくれる。実際に手で触れて、感じること。この実感こそが現代におけるラグジュアリーだと、〝ロエベ〟は私たちに教えてくれるのだ。