新型クラウン シリーズの第2弾として、「新しいカタチのスポーツSUV」を標榜するクラウン スポーツが発表され、受注が開始された。開発陣のコメントを交えながら、同モデルの詳細を明らかにする。

クラウンの明治維新

16代目となる新型クラウンがワールドプレミアされたのは2022年7月のこと。発表会場でプレゼンテーションを行った豊田章男社長(当時、現会長)は、日本の歴史になぞらえて以下のように語った。

「徳川幕府の江戸時代も15代で幕を閉じています。『何としても、クラウンの新しい時代をつくらなければならない』。私は、決意と覚悟を固めておりました。

『一度“原点”に戻って、これからのクラウンを本気で考えてみないか』。開発チームにそう伝えたところから、16代目の開発が動き出しました」

こうして生み出された新型クラウン。「日本の歴史に重ね合わせれば、それは『明治維新』です」と豊田会長が語るように、従来のオーセンティックなセダンというイメージを覆す斬新なスタイルで注目を集めた。

さらに話題を呼んだのが、クラウン史上初めて「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」「エステート」という4つのボディバリエーションをラインナップしたことだ。

撮影:三橋仁明 / N-RAK PHOTO AGENCY
新型クラウンのワールドプレミアの様子。左から、クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート

ラウンシリーズの開発を統括するチーフエンジニアの清水竜太郎氏は、今回のスポーツの発表会において、4モデルをリリースした理由について以下のように語った。

「現在はライフスタイルや、お客様がクルマに求めているものが多様化しています。そういったお客様お一人お一人の価値観にお応えしていきたいとの想いから4モデルを開発しました。それぞれのモデルが、お客様にとってのフラッグシップになっていくことを願っています」

若きデザイナーたちによる新しいクラウンのエクステリア

新型クラウンのラインナップにおいて、クロスオーバーに続いてデビューしたスポーツ。コンセプトは、「俊敏でスポーティな走りが楽しめる、新しいカタチのスポーツSUV」だという。

同時に、クラウンのフィロソフィーとして大事にしてき快適性や静粛性、安心して運転できるドライバビリティといったクルマの基本性能も極限まで高めたと、清水チーフエンジニアは強調する。

「見て、乗って、走って、お客様に“WOW”と感じていただけるようなエモーショナルなSUVを目指しました。こだわったのは、美しいデザインと、ドライバーに本当に楽しいと思っていただける走りです」

そう語るのは、清水チーフエンジニアのもとで開発リーダーを務めた本間裕二氏だ。

「お客様に一目見た瞬間から“WOW”と高揚感を感じていただきたい」というエクステリアデザイン。その最大の特徴として本間氏があげたのが、Dピラーからリアタイやにかけて大きく張り出したフェンダーだ。21インチという大径サイズのタイヤに加え、足まわりの力強さをリアフェンダーで表現したのだそうだ。

さらに、実際の張り出し以上に力強さが感じられるよう、キャビン後方(リアフェンダー上部のサイドウィンドウ部分)やボディ側面(リアドアの辺り)を絞り込むなど、デザインを丹念につくり込んだと、エクステリアを担当したデザイナーは語る。確かに実車を目にしても、抑揚のあるボディ側面の陰影の美しさが印象的だ。

「エクステリアデザインは20代の若いデザイナーを中心に進めました」

そう語るのは、チーフデザイナーの宮﨑満則氏だ。若いデザイナーはクラウンに対して先入観を持っておらず、それゆえ、スポーツのようなエモーショナルなエクステリアデザインが実現したという。

ボディサイズは全長4,720×全幅1,880×全高1,565mmと、クロスオーバーより210mm短く、40mm広い。そんなワイドなスタンスのフォルムと、彫りの深いボディ面があいまって、まさにスポーツカーのような躍動感に溢れている。

フロントに目を向けると、プリウスでもおなじみのハンマーヘッドフェイスがクロスオーバーから進化。レンズ幅を薄くしたデイランプを黒色内部に集約するなど、よりシャープで精悍な表情に仕上げられた。

こちらはクロスオーバー

会話がしやすい空間のために室内音を反射する天井を初採用

インテリアは、ドライバーのみならず助手席の乗員もワクワクするような内装というテーマのもと、アシンメトリーの配色を採用。運転席側は、ドライブへの集中力を高めることを狙いブラックに統一し、助手席はレッドなどの華やかなカラーを用いることで、特等席のように仕上げたと、内装色を担当したデザイナーは語る。

クラウンらしい上質さを実現するポイントとしてあげられるのが「調音天井」だ。乗員同士の言葉がダイレクトに伝わり、会話がしやすい空間を実現するために開発された室内音を反射する天井で、トヨタでは初採用となる。

スポーツの名に恥じぬ運動性能

「走り出すと、さらにワクワクする俊敏な動きを目指して開発を進めた」と本間氏が語るスポーツ。安心して操作できる高い接地性と振動抑制により、「クルマと対話している感覚」を楽しめる走りと、クラウンならではの上質な乗り味を両立したという。

後輪操舵のDRS(ダイナミックリアステアリング)も車両に合わせて最適にチューニング。ワインディングロードのような低・中速域では軽快感を、高速域ではさらに安定感を増すようにし、意のままに車両を操る楽しさを追求したとしている。

ワーユニットはクロスオーバーと同じく、2.5リッター直4エンジンに前後2つのモーターを組み合わせたシリーズパラレルハイブリッドシステムを採用。電気エネルギーを有効活用することで、低速でのレスポンス向上、中速から高速域でのダイレクトな加速、さらには燃費性能や静粛性にも貢献するという。

また、2.5リッターのプラグインハイブリッドシステムを搭載したモデルも、2023年12月ごろに発売予定とのこと。

運転支援システムは、最新の「トヨタ セーフティ センス」を標準装備。減速やステアリング支援をおこなうプロアクティブドライビングアシスト(PDA)をはじめ、最先端のシステムが搭載される。

今回のクラウン スポーツのデビューに合わせ、ユーザーの多様なライフスタイルに寄り添うブランド拠点であり、クラウン全モデルの展示拠点として、トヨタ初の車種ブランド専門店「THE CROWN 横浜都筑・福岡天神」の2店が開業したことも発表された。今後は愛知、東京、千葉にも展開していくという。