時計王国スイスには数多のブランドが存在するが、中でも、早くからマニュファクチュールの体制を整えていたジラール・ペルゴは、機械式腕時計の宝庫といえよう。その名門ブランドのフラッグシップから、今年は日本限定モデルが登場した。
飛切りの歴史を誇る
老舗の時計ブランドがひしめくスイスにあって、飛切りの歴史を誇るのがジラール・ペルゴである。創業は1791年というから、実に4つの世紀を知るブランドでもある。
よく時計ブランドを語るとき、歴史やヘリテージのことが話題になる。もちろん、歴史あるブランドが多いこともあるのだが、時計が少し特殊な工業製品であることも影響しているのではないだろうか。
世にある工業製品は常に進化しており、少し前のものもまったく眼中にないといっていいほどだが、時計は、機械式時計に限っていえば、その仕組みの大半が1世紀も前に開発されたものなので、古い製品をまったく無視することができない。つまり、精度や仕上げは格段に進化しているものの、100年前のものと現代のモデルを同一線上で語ることができる製品なのである。
だからこそ、人々は世代を超えて語り合う。いいモデルについて。好きなブランドについて。そんな語らいの中で、必ず名前の挙がるブランドの一つが、ジラール・ペルゴなのである。
このブランドを語る際、必ず出てくるワードが、老舗であること、高レベルの技術力、そしてマニュファクチュールであること、などである。そのマニュファクチュールについては、ジラール・ペルゴを語る上で欠かせないことなのだが、近年は自社一貫生産と訳され、その単語が氾濫していてよくわからなくなっている。本来どういうものなのか? かつてジラール・ペルゴの社長の座にあったルイジ・マカルーソ氏がこんなことを言っていた。
「マニュファクチュールはこれですというのは難しいのですが、まずは精神的なもの、考え方なのです。常にクリエーションをしていきたいという思考。クリエイティビティというものに投資をしたいと思う精神性、考え方のことをいうのです」
それが大前提だという。
「マニュファクチュラーは、設計図を作り、すべての部品も自社で作って組み立てているのです。これはスイスのブランドとしては珍しいことでもあります。でもそれを実践しているからこそ、本物のマニュファクチュラーなのです」
象徴的なモデル
そういった精神、体制を整えて、ジラール・ペルゴは時計づくりを続けてきたのだ。
そんなジラール・ペルゴにおいて、象徴的なモデルといえるのが「ヴィンテージ 1945 」である。1940年代に市場を賑わせたアール・デコ・スタイルのレクタンギュラー・ウォッチにインスパイアされて96年に誕生したコレクションである。
以降、その独創的なデザインをベースに、時代とともにさまざまな要素を加えながら、現在に至るまで多彩なヴァリエーションが作られてきたのだが、人気モデルとなった最大の要因は、なんといっても優れたデザインではないだろうか。40年代のレクタンギュラーモデルを「ヴィンテージ 1945 」に仕上げたデザインセンス、そして、ケースバックを大きく湾曲させた技術は特筆ものである。
それを可能にしたのは、薄型のキャリバーである。厚さ2.98㎜しかない「キャリバー3000」だからこそ、ケースバックを湾曲させることを可能にしたのである。これによって、見た目ではわからない抜群の着け心地も得たのである。
今年は、その「ヴィンテージ 1945 」に、ネイビーのローマインデックスが印象的なバージョンが登場した。
ジラール・ペルゴと日本の関わりは古く、幕末にファミリーのフランソワ・ペルゴが来日し、1861年には横浜で時計の販売をスタートしている。当時の日本は、衣服から暖簾まで、至る所に藍色が溢れていたという。それを見た英化学者のロバート・アトキンソンが「ジャパンブルー」と表現し、それを書き記した。
この“限定100本のジャパンリミテッド”には、その「ジャパンブルー」が効果的に使われているのだ。真っ白なダイヤルに「ジャパンブルー」のインデックス、針が映える美しいモデルである。また、サファイアクリスタルのケースバックから見える自社製キャリバー「GP3300」は、造形も動きも、美しい。