シャンパーニュメゾン テルモンは、 シャンパーニュの未来を示す新しいシャンパーニュ「レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)」を2024 年6月11 日(火)に発売。東京・代官山でローンチイベントを開催した。
シャンパーニュのあたりまえをひっくり返すテルモン人気
これまでもたびたび話題にしてきたシャンパーニュ メゾン テルモン。ダムリーという、シャンパーニュ好きにもあまり知られていなかった土地の小さな生産者ながら、その革新性でぐいぐいと人気上昇中だ。
伝統のブランドが強く、一家言ある人も多い、つまりなかなか新規参入してもシェアを取りにくい日本のシャンパーニュ業界に2021年に初上陸して、ワイン好きだけではなく、普段それほどワインに接しない人の話題にものぼっているのってスゴイなぁとおもっていたら、なんといまや、日本がアメリカに次いで世界第2位のマーケットなのだそうだ。
人気の原動力になっているのは、ワイン造りから物流、ブランドイメージ構築まで、常識にとらわれない大胆かつ徹底的にエシカル&サステナブルなスタイル、そして、シャンパーニュの価値観をひっくり返すエアリー(空気のよう)な味わい。
ただし、テルモンが現在の方針を明文化して世界に打って出たのは2020年以降だということは留意したい。通常のワインよりもずっと長い熟成期間を必要とするシャンパーニュは、今打った手が、商品として私たちのもとに届くまでにそれなりの年月を要する。つまり、テルモンの真の姿が現れるのは、まだ先の話なのだ。
今回リリースされた、2018年、2019年、2020年に収穫されたオーガニック栽培のブドウのみで生み出した新作『レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)』はその未来のプレビューのようなシャンパーニュ。
なぜなら、将来的にはすべての作品がオーガニック栽培のブドウから生み出されることを宣言しているテルモンでは、その時のスタンダードになるのは、こういう複数収穫年のブドウをブレンドしたシャンパーニュのはずだからだ。
また、かのレオナルド・ディカプリオをはじめ、テルモンの革新性に魅入られた人々が資本が投入する2020年よりも前のブドウが使われていることにも注目したい。彼らの存在によってテルモンの活動は加速し、早くも2024年に『レゼルヴ・ド・ラ・テール(オーガニック)』をリリースできたのだということ、そして、現在も栽培と醸造を司るベルトラン・ロピタルが中核となって経営されていた時代から、テルモンの姿勢がブレていないことがあらためて証明された。
さて、その『レゼルヴ ・ド・ラ・テール(オーガニック)』だけれど、これは常識にとらわれないテルモンのスタイルを朗らかに表明している。ベタベタしない、ウジウジしない、クヨクヨしない。生きとし生けるものすべてに感動し、澄んだ瞳で今日を、明日を楽しむ。眩しいほどにポジティブだ。ここに厳しく寒々しいシャンパーニュの雰囲気はない。
こんなものを出されてしまったら、グラスに注がれた液体を巡って、ああだこうだと言うのも野暮。一緒にテルモンを楽しもう!
テルモンがやっていること
そしてテルモンには、液体以外にも面白いところがたくさんある。おさらいだけれど、テルモンは以下のようなことをやっている。いずれもかなり痛快だ。
1. パッケージなし
「テルモンはパッケージメーカーではない」ということで、ボックスどころか包装を完全廃止。どんな高級品だろうがボトルむき出しで売る
2. リサイクルボトルだけ使用。色は19万3,000色
そのボトルももっとも効率が良い、ごく一般的な形状のもののみを使用する。87%をリサイクルガラスが占めるグリーンのボトルだ。また、リサイクルガラス製造時、色の変更にあたって破棄されてしまうガラスも使用しているため、ボトルそれぞれで色が微妙に違う。その色数、なんと19万3,000色
3. 軽量ボトルを開発
さらに、ボトルの重量に起因する環境負荷を低減するため、パートナーのボトルメーカー「ヴェラリア」とボトル重量を35g軽量化した800gボトルを開発。これ、高気圧なシャンパーニュではスゴイ発明。しかも製造技術は公開している
4. 空輸禁止
どんなに大口の客からの緊急の注文でも空輸は絶対しない
ほかにも、オフィスでは再生可能エネルギーのみを使用。農業もカーボン・オフセット化を進めている。2030年までにクライメートポジティブ化(温室効果ガスの排出量より吸収量が上回る状態)、2050年までにネットポジティブ化(ビジネスが環境や社会にプラスの影響を与える状態)予定。オーガニック認証にも積極的で、自社畑25haのうち83%と契約畑75haのうちの60%がオーガニックに転換済み。契約農家に対してはオーガニック転換に起因する負担も補償して、2031年までに完全オーガニック化する見込みだ。
つまり、パッケージがなく、ボトルはありきたりの形で、その色はめちゃくちゃ。特別なお客様のもとにも飛んで行ったりもしないのがテルモン。そして、隠し事だらけのシャンパーニュで隠し事が全然ない。使用したブドウも、何本造ったかも隠さない。これ、料理店に例えるなら、厨房フルオープンどころか、食材の原価までオープンみたいな感覚だ。
そして、テルモンのものづくりはとにかく真面目。そもそも頼まれてもいないのに、これだけ環境負荷を下げようとしている事自体が真面目なのだけれど、聞けば熱心に自分たちの畑、ブドウ、どういうシャンパーニュを造りたいかを語ってくれる。そこには、シャンパーニュではとりわけよく耳にする権威主義的な話は全然ない。「私の父の友人のだれそれさんの家の畑の土はとんでもなくいい香りがする。それがブドウに現れている」なんていう話を聞くと、私はウルっと来てしまう。
この姿勢は言論に対しても同一で、ワインのプロからすると、これまでの価値観に必ずしも合致しないテルモンには批判的な意見もあるのだけれど、その発言を許さない無言の圧力みたいなものはなく、むしろ、良い悪い、好き嫌いを素直に聞いて、取り入れるべきところは取り入れ、そうじゃないとおもうところがあればフランクに議論に応じてくれる。
おそらく、そういうブランドだから、テルモンのシャンパーニュは明るいのだ。