ルノーは2月26日、ジュネーブ国際モーターショーにて、ルノー5(サンク)を現代的な解釈で復活させたBEV(電気自動車)のコンパクトハッチバック「ルノー5 E-TECH エレクトリック」を発表した。ヨーロッパでの発売は2024年9月を予定しており、ルノー・ジャポンでも日本への導入を検討しているという。
電動ルノーの象徴としてのサンク
初代ルノー5がデビューしたのは1972年のこと。このコンパクトなFFハッチバックは、経済性や利便性に優れるのみならず、今までにないモダンでポップな内外装が人気を博し、オイルショックやライフスタイルの変化といった時代背景も相まって、フランスでは特に若者や女性といった新しい顧客層を開拓。
1984年にはフルモデルチェンジを受け2代目へと進化したが、1990年に後継モデルとなるクリオ(日本へはルーテシアとして導入)が登場することで、フランスでの販売が終了した。(フランス以外の国で96年頃まで生産が継続)
21世紀に復活した新時代のルノー“5”とはいかなるクルマなのか。同社では、ルノーブランドの復興戦略「ルノーリューション(Renaulution)」から生まれた次世代のコンパクトカーであり、電動化へのシフトを推し進めるブランドの象徴でもあると謳う。
具体的には、持続可能性や脱炭素など現代の課題に対応ししつつ、初代と同様のポップなデザインや、さまざまなデジタル機能を備え、エネルギーシフトに向けたシティカーの新しい基準を確立するモデルだという。
革新的な開発手法により、2021年のミュンヘンモーターショーで発表されたショーモデルの魅力を余すところなく落とし込んだというルノー5 E-TECH エレクトリック。新たに小型BEV専用プラットフォームを開発しつつも、通常4年かかる新型車の開発期間を3年に短縮することにも成功した。
レトロフューチャースタイルを採用したというエクステリアデザインは、初代のモダンで遊び心溢れるデザインのエスプリを踏襲しつつも、21世紀のBEVにふさわしいスタイルに進化。例えば、初代のボンネットに設けられていたベントグリルは、象徴的な数字である「5」の形をした充電インジケーターに発展している。LEDヘッドライトは瞳のようなデザインで、デジタル時代ならではの遊び心がちりばめられている。
デザイン担当副社長のジル・ヴィダル氏は、ルノー5 E-TECH エレクトリックのデザインについて以下のようにコメントした。
「私たちは、ルノー 5 E-TECHエレクトリックにノスタルジックやヴィンテージなイメージを感じさせたくありませんでした。感情を揺さぶるような、元気でエネルギッシュでPOPなクルマに仕上げたかったのです」
一方、インテリアも、外観と同様にデジタル時代にふさわしいデザインが採用された。インストルメントパネルには10.1インチのマルチメディアタッチスクリーンを備え、ウェルカムシークエンスのグラフィックとサウンドは、フランス国立音響音楽研究所と音楽家ジャン・ミッシェル・ジャールが共同開発したという。
2021年発表のコンセプトカーの魅力を市販モデルで余すところなく具現化すべく、デザイン部門、開発部門、そしてプロダクト部門は「スケッチからストリートへ」を合い言葉に、ルノー5 E-TECH エレクトリックを開発。通常の車両開発では、デザインはプラットフォームに合わせて行われる。しかし今回のプロジェクトでは、デザイン部門が手掛けたモックアップに合わせて新たにプラットフォームをおこしたという。
新開発されたこのBセグメントBEV専用プラットフォームは、フラットなフロア、長いホイールベース(2.54m)、そして余裕のある室内空間とラゲッジスペース(326L)を確保。低い重心高や、大容量のバッテリーを搭載するBEVとしては軽い1500kg以下の車重を実現するなど、走りにも期待が持てる仕上がりとなっている。
駆動系に目を向けると、電気モーターはベースとなるメガーヌE-TECH エレクトリックよりコンパクトなものを搭載。永久磁石を使用しないためレアアースが必要なく、環境への負荷も低減しているとう。出力は110kW、90kW、70kWの3タイプが用意される。
最大52kWhのバッテリーを搭載し、11kWの普通充電と80、もしくは100kWの急速充電に対応。興味深いのは、バッテリーから家電製品に電力を供給できるV2L(ビークル・トゥ・ロード)、さらに電力網に供給できるV2G(ビークル・トゥ・グリッド)機能を備えていること。これにより、将来的にクルマが蓄電池として電力網の一部を担うことが可能となる。
コンパクトカーとはいえ、インフォテインメント系も最新のBEVならではだ。グーグルのOS「アンドロイド」で稼動する最新世代の統合マルチメディアシステム「OpenR Link」には、50以上のアプリが組み込まれ、ドライブルートにける充電の提案など、さまざまなサービスを提供。さらに、ルノー公式アバターである「リノ」を初めて導入。インテリジェントで愛らしいこのドライブのお供は、例えば「リノ、航続距離を延ばすにはどうしたらいい?」といった質問にも答えられるように設計されており、ドライバーにより楽しくインタラクティブな体験を提供するという。
運転支援システムも最新仕様で、レベル2の自動運転技術である「アクティブ・ドライバー・アシスト」などコンパクトカーの枠を越えた装備が与えられている。
ヨーロッパでは2024年9月発売予定で、約2万5000ユーロという戦略的な価格設定となっている。
全長×全幅×全高: 3.92×1.77×1.50m
ホイールベース:2.54m
フロントオーバーハング:749mm
リアオーバーハング:633mm
最低地上高:145 mm
車重:1,450㎏ (52 kWhモデル)、1,350㎏(40 kWhモデル)
荷室容量:326リッター
モーター:巻線型同期電動機
- 70 kW (95 bhp / 215 Nm)
- 90 kW (120 bhp / 225 Nm)
- 110 kW (150 bhp / 245 Nm)
リチウムイオンバッテリー:
- コンフォートレンジ 52 kWh (最大航続距離 400 km WLTP)
- アーバンレンジ 40 kWh (最大航続距離 300 km WLTP)
パフォーマンス(110 kW モーター・52 kWh バッテリーモデル):
0 - 100 km/h < 8秒
80 - 120 km/h < 7秒
最高速度:150 km/h