アルファ ロメオの最新モデル「トナーレ」。今回、JBpress autographは「最高のトナーレ撮影に挑もう!」とJBpress autographでも活躍する二人の写真家にステアリングを預け、約200kmの旅に出た。

※記事上の写真は左が阿部 昌也さん、右が三田村 優さん

写真:阿部 昌也

非常識じゃない 常識を超えたいのだ

「非常識って言われるかもしれないんですけれど、僕は日の出前に富津での撮影に挑戦したいです」

写真のプロとして既に30年のベテラン写真家・阿部昌也さんはそう提案した。幅広いジャンルで活躍し「撮れない写真はない」と言うほうが適切な阿部さんだが、最も経験豊富な撮影対象がクルマだ。

阿部 昌也さん / 写真:三田村 優

「クルマの写真をたくさん撮っているからこそ、今回のテーマは僕にとっては難しい。しかも思い入れのあるアルファ ロメオ。だから、あえて自分の得意な場所で、普段できない写真が撮りたいんです」

かつてアルファ ロメオ 155のオーナーでもあった阿部さんのその言葉に、もちろん、反対意見など出ない。だって、誰かと同じがいいなら、常識の中に収まりたいなら、アルファ ロメオを選ぶ理由なんてない。アルファ ロメオを撮影するなら、非常識はここではポジティブなワードだ。

写真:三田村 優

駆るのはPHEVのトナーレ

深夜、都内を発って房総半島の浜辺へ。

写真:阿部 昌也

アルファ ロメオ伝統の3連ヘッドライトと呼応した3連リアコンビネーションランプは、左右ユニット間にショルダーラインから連続する光のラインを描く。これが夜闇に浮かび上がってなんとも美しい……などと見とれていると、トナーレはすーっと距離を離していく。

写真:三田村 優

今回の相棒は「アルファ ロメオ トナーレ」のなかでも先進的なプラグインハイブリッドモデルの「 Q4 VELOCE」。1.3リッターのコンパクトなターボエンジンだけでも180PSの最高出力と270Nmの最大トルクを誇るが、注目は前・後それぞれの電気モーター。前45PS、後128PSの最高出力を発揮し、システム最高出力(欧州参考値)は280PSという往年のスーパースポーツ並。さらにこのモーターが前最大53Nm、後最大250Nmという大トルクで、重量1,880kgのSUVであることが信じられないほどあっという間に、そしてほとんど無音で、トナーレを巡航速度へとなめらかに導く。

写真:阿部 昌也

「想像以上にいいクルマですね。アルファ ロメオってちょっと騒々しいイメージがありましたが、このトナーレは静かだし、高級車然としたしっとりした感覚がある。一方、エンジン音がないっていうのは、こういう非常識な時間には心理的にも楽ですね」

真っ暗な細道をスイスイと進みながら阿部さんの顔がほころぶ。

三田村 優さん / 写真:阿部 昌也

二人が撮れば、まったく違うトナーレが写る

日の出の光で、阿部さんが撮影したのが冒頭の一枚。まずは小細工なく真っ向勝負でクルマの形を描き出した。

今回の旅で、阿部さんがステアリングを握るのはスペシャルメタリックのボディーカラー「モントリオール グリーン」のトナーレ。そしてもう一台、ソリッドな伝統の「アルファ レッド」のトナーレを操るのが写真家・三田村 優さんだ。人物、腕時計が得意分野だが、実はクルマ撮影の本格的な経験はない。

写真:阿部 昌也

「いや、難しいですね。例えば、時計って小さいじゃないですか。だから、光の入り方、背景は手元で簡単に変えられます。でもクルマって大きいから撮影前のロケーション選びの段階からすでに仕事が始まっているんだと痛感します」

そう言いながら、次々とシャッターを切ってゆく。

写真:三田村 優

三田村さんは赤いクルマを撮影しながらも赤を表現しなかったり、クルマの説明写真ではなかなかフォーカスされないディテールを切り出していく。

「僕の写真の撮り方ですか? うーん、そうですね。人物の写真って撮影される人は表情を気にしがちなんです。でも僕はあんまりそこは重視していないかもしれません。だって、笑顔、真剣な顔、横顔、どれもステキなら僕はそれを選べないですから。それよりも背景や光、位置で遊びたい」

以上4写真:三田村 優

 全く同じ場所、同じクルマを撮影しても二人の描き方は異なる。

写真:阿部 昌也
写真:三田村 優

「クルマの写真って、下から撮ったほうがカッコいいとかいったことってあるんですか?」

一心不乱に撮影を続けるうちにすっかり日も昇り、一段落したところで三田村さんがそうたずねる。

「僕もそれは気になって、アルファ ロメオじゃないんですがクルマのデザイナーさんに質問したことがあるんですよ」

写真:三田村 優

「でも、やっぱり通常の人間の目の位置からカッコよく見えるようにデザインしているそうですよ。下から見てカッコよく感じるのは、おそらく普段、見慣れていないから新鮮味があるんですよ」

「ここはよく撮影に来るんですか?」

「ええ。ホームと言ってもいい、僕の”仕事場”ですね。ここでどうしてもやりたい撮影があったんです。三田村さんには朝から付き合わせちゃったうえにアウェーで恐縮なんですが、ここからはお互いに別れて撮影しませんか?」

「いいですね。実は僕も、撮ってみたいイメージがあるんです」