取材・文=吉田さらさ 写真=フォトライブラリー

江島神社

「日本三大弁才天」のひとつ

 10月に入り、さしもの東京も涼しくなってきた。天気が良い日にお参りがてらちょっと遠出してみたいという時に断然お勧めなのは江の島だ。この魅力的な島には「日本三大弁才天」のひとつとされる江島神社がある。三大弁才天のあとふたつは、広島の宮島にある厳島神社と琵琶湖に浮かぶ竹生島にある都久夫須麻神社。どちらも国宝の建物を持つ著名な神社だ。

 江の島内には観光施設やグルメなお店がいくつもあるため、ここに鎮座する神社の素晴らしさに気づいていない人もいるかも知れないが、実は欽明天皇の御代(6世紀)に創建されたとも伝わる古社で、他の二つの神社と肩を並べてもおかしくない格式なのである。

 江ノ電の江ノ島駅もしくは小田急の片瀬江ノ島で下車し、江の島弁天橋を渡って行く。左右は海。かつては、干潮の際に現れる砂州を歩いて渡っていたとのことだ。条件がよければ、ここから富士山が望める。特に晩秋から冬場は、真っ赤な夕焼けの中に素晴らしいシルエットが浮かび上がるので、岐路も要チェックだ。

江島神社 瑞心門

 渡り切ったところに青銅の鳥居、お土産屋が並ぶ参道を抜けると朱の鳥居。石段を登ると、まるで竜宮城の入り口のような瑞心門がある。この先は歩いて登るのもよいが、一部は日本初の野外エスカレーターである江の島エスカーに乗って体力を温存するのもお勧めだ。お参りしながら江の島内を一周するには、けっこう時間もかかる。

 

それぞれ三姉妹が祀られた三つの宮

 江島神社には三つの大きな宮があり、それぞれに美しい女神が祀られている。一番下にある辺津宮には田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)。次の中津宮には市寸島比賣命(いちきしまひめのみこと)、もっとも上の奥津宮には多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)。この三人の女神は天照大神と素戔嗚尊の誓約(占い)によって生まれた姉妹で、宗像三女神とも呼ばれる。

 江島神社ではこれを総称して江島大神と呼び、やがて江島弁才天として信仰されるようになった。弁才天はもともとヒンズー教の女神サラスヴァティーが仏教に取り入れられたものだが、日本で神仏習合が進むうちに、三女神の中の一柱、市杵島姫命と同一視されるようになったのである。

江島神社 辺津宮

 まずは辺津宮。1206年、源実朝によって創建されたと伝わる。江島神社の玄関口に当たるため、御祈祷などはこちらで行われることが多い。お隣の奉安殿という建物には立派な弁才天像が祀られている。八臂弁財天(国指定重要文化財)と、妙音弁財天(市指定重要文化財)だ。

 八臂弁財天は八本の手に武器などを持つ勝運守護の神としての姿で、妙音弁財天は琵琶を持つ芸能の神としての姿である。妙音弁財天は全裸で、女性の美しさを表現している。