文=酒井政人

2022年1月2日、第98回箱根駅伝往路2区を走る近藤幸太郎(青学大) 写真=アフロ

 日本インカレは「学生日本一」を決める舞台だ。しかし、9月前半(今年は9月9~11日)に行われるため、長距離種目は悩ましい問題を抱えている。箱根駅伝を目指すチームは夏合宿中の真っただ中で、コンディショニングを合わせるのが難しいからだ。

 特に箱根駅伝予選会を控えているチームは出場せず、決戦に備えるパターンが少なくない。また各校のエース級も調子が合わない場合は強行出場しないことが多い。そのため〝番狂わせ〟が度々起こる。

 

男子10000mは2年連続で関西勢が日本人トップ

 昨年は男子10000mで上田颯汰(関学大)が日本人トップに輝いたが、同種目は今年も関西勢が奮起した。レースは6000m付近から抜け出したフィリップ・ムルワ(創価大4)が28分36秒70で完勝。日本人トップ争いは2人のケニア人留学生に食らいついた中村唯翔(青学大4)を、亀田仁一路(関西大3)と伊豫田達弥(順大4)が追いかけるかたちになった。

「ラスト5周から自分のレースに持ち込める」と亀田が8000m付近からペースアップ。まずは関東インカレ10000m覇者の伊豫田を引き離すと、残り4周を切って中村に追いついた。「ラスト150mであれば絶対に勝てる」という思いを持っていた亀田が強烈スパート。最後の直線で箱根駅伝9区区間記録保持者を突き放して、日本人トップ(4位/28分49秒45)でフィニッシュした。

 亀田は兵庫・姫路商高出身で高校時代の5000mベストは14分25秒76。昨季は5000mで13分台、10000mで28分台に突入すると、日本学連選抜で出場した全日本大学駅伝は1区をトップと12秒差の区間6位で走っている。今季は出雲駅伝(10月10日)にチームとして20年ぶりに参戦。1区での起用が有力視される亀田は、関東勢がコンディションを上げてくるレースでどこまで戦えるのか。

 

近藤が5000mを連覇するなど青学大が充実

2022年9月11日、日本インカレ、男子5000m決勝、先頭でラスト1周に向かう近藤 写真=日刊スポーツ/アフロ

 男子5000mは昨年の王者・近藤幸太郎(青学大4)が〝完全復活〟を印象づけた。昨季は出雲1区で区間賞を獲得して、全日本7区は駒大・田澤廉と18秒差の区間2位。箱根2区は田澤との差を56秒で食い止めて、チームの総合優勝に貢献した。しかし、箱根駅伝後に左踵を疲労骨折すると、5月に左アキレス腱を負傷。関東インカレを欠場するなど、今季は大きく出遅れていた。

 近藤は7月から本格的な練習に復帰すると、夏合宿で調子が急上昇。留学生ランナー4人が引っ張ったレースは、2000mを5分32秒で通過した後、「今日は勝ったなと思いました」というほど自信に満ちていた。

 4000m手前からペースアップすると、誰もついていくことができない。近藤がそのまま押し切り、13分50秒37で連覇を達成した。2位は中西大翔(國學院大4)で13分53秒40。吉居駿恭(中大)が4位、花岡寿哉(東海大)が6位に入るなど、ルーキーも活躍した。

 日本インカレでは青学大勢の強さが際立っていた。10000mでも中村が5位(28分51秒55)、横田俊吾(4年)が7位(29分02秒22)と大活躍。5000mで復活Vを果たした近藤は、三大駅伝に向けて、「すべて勝つつもりです。特に箱根は新記録で優勝したい」と力強かった。

 青学大は日本インカレに出場しない選手たちで、出雲駅伝のメンバー選考を兼ねた5000m学内記録会を9月10日に実施。鶴川正也(2年)が13分50秒7でトップを奪うと、野村昭夢(2年)と宮坂大器(4年)も13分台で走破した。

 さらに9月24日の絆記録挑戦会5000mには主力が出場。近藤が13分43秒07で日本人トップを飾ると、中村、横田、目片将大(4年)も13分40秒台で駆け抜けた。秋の駅伝シーズンに向けて抜群の仕上がりを見せている。