文=山口 謠司 取材協力=春燈社(小西眞由美)

写真=フォトライブラリー

「申し訳ありません」はお詫びの言葉ではない?

 ビジネスシーンでは悪気はなくてもミスをしたり、相手に迷惑をかけてしまうことは日常茶飯事です。相手を不快にさせて怒らせてしまったら、まずはひたすらお詫びするしかありません。

 そしてお詫びを代表する言葉といえば、「申し訳ありません」ですね。

「申し訳」には「言い訳」という意味があります。つまり「言い訳はできません」と、自分のミスを認める表現で、正確にいうとお詫びの言葉ではないのです。

 もっともストレートな表現は「お詫びいたします」です。

「深くお詫びいたします」「深謝いたします」というのも心からの謝罪を伝える言葉です。「深」という漢字の右側は「穴」と「木」です。穴の深さを木で測るという意味で、この右側に「氵=さんずい」がつくと、水の深さを測るということを表します。その場しのぎではなく、水底まで届くような深いお詫び、ということです。「深謝」は深く感謝している気持ちを表現するときにも使います。

「陳謝」という言葉もあります。「陳」には述べるという意味があることから、謝罪の言葉を述べるという意味だと思うかもしれません。しかしこの場合の「陳」は「全て並べる」という意味です。

 こちらの不手際をすべて並べ、そのひとつひとつを把握したうえで、それぞれどうしてそうなったか理由を上げて謝ります、という謝罪の言葉なのです。部下のミスを謝るときなどにふさわしい言葉です。部下がどのようなミスをして、なぜミスをするに至ったのか、その全容を把握して謝罪する、ということです。謝罪は本来、そうでなければなりません。

 また、お詫びするときは頭を下げます。よく謝罪会見などでは何秒間頭を下げていたかが話題になったりしますが、頭を下げるだけではすまないようなお詫びを表現する言葉があります。

「伏してお詫び申し上げます」という言い方です。床にひれ伏してお詫びするほど、切に謝る気持ちを伝えるときに使います。