文=福留亮司

今年のIWCは、パイロット・ウォッチ“トップガン”の年である。現在公開中の映画『トップガン マーベリック』の、あのトップガンにオマージュを捧げ、製作された腕時計だけあって、とても機能的なのだ。軽く強い素材を使用した新作は、タウンユースとしてオススメの1本である。

『ビッグ・パイロット・ウォッチ43・トップガン』 自動巻き(Cal.82100)、セラミックケース、43.8㎜径、134万2000円

注目を浴びたパイロット・ウォッチ

 IWCはスポーツウォッチから複雑時計まで、あらゆるジャンルのモデルを製作しているブランドだが、腕時計として一躍世界的な注目を浴びたのはパイロット・ウォッチだった。

 パイロット・ウォッチは、その名の通り、パイロットが使用することを想定して製作されたモデルだが、機能などについての明確な定義はない。ただ、フライト時に想定される気圧の変化や計器類から時計を守る必要性があった。

 IWCがパイロット・ウォッチを開発したのが1936年のこと。『スペシャル・パイロット・ウォッチ』として登場している。後に『マーク9』と呼ばれるモデルである。

 この時点で、ケースは3ピース構造で裏蓋にはスナップバック(はめ込み式)が採用されており、気圧の変化への対応がなされていた。さらにヒゲゼンマイなどパーツに耐磁性を考慮。かなり高いレベルのものだったようだ。

 IWCのパイロット・ウォッチに、代名詞的な軟鉄製インナーケースが使用されたのは、48年にイギリス空軍に正式採用されてからになる。この時のモデルが『マーク11』。マークシリーズの起点になるモデルで、後にこのモデル以前のパイロットウォッチは、『マーク9』『マーク10』と呼ばれるようになった。

 ちなみに“マーク”はイギリス軍内で使用されていた名称で、マーク1やマーク2などは、時計以外の軍用機器に使用されていたそうだ。なのでマークシリーズは、“1”ではなく“11”という数字から始まっているのである。