文=酒井政人 

2022年4月9日、金栗記念選抜陸上中長距離大会、男子5000m決勝での田澤廉(駒大・右)とイェゴン・ヴィンセント(東京国際大) 写真=アフロスポーツ

「新人力」ランキングのトップ校は?

 ルーキーを迎えて、箱根駅伝を目指す大学の〝新たな戦い〟が幕を開けた。新チームはどのような戦力になっているのか。〝新人力〟とロードシーズン、トラックレースの結果などから探っていきたい。

 まずは新人力から。『月刊陸上競技』は例年、有力校に入学する選手の5000mベスト記録を調査。各校上位5人の平均タイムを算出している。そのデータによると、以下がトップテンだ。

【2022年度新人力ランキング】
①東海大   13.59.06
②中央大   14.00.06
③青山学院大 14.00.09
④東洋大   14.00.22
⑤駒澤大   14.01.54
⑥明治大   14.03.56
⑦早稲田大  14.04.59
⑧東京国際大 14.07.37
⑨國學院大  14.07.87
⑩法政大   14.09.37
※出典『月刊陸上競技4月号』

 正月の箱根駅伝で11位に終わった東海大がトップ。同じくシード権を逃した明大と早大も強力なルーキーが入学したことになる。2位は箱根駅伝(6位)で10年ぶりのシード権を獲得した中大で13分台ランナーが3人も入学した。そのひとり吉居駿恭(仙台育英高出身)は10000mで高校歴代3位の28分11秒96を持つ。3位は青学大で、昨年の全国高校駅伝に出場した選手はいなかったが、今年も有望な1年生が加わった。

 そして今年、最も注目すべきルーキーは駒大にいる。1500m(3分37秒18)、3000m(7分50秒81)、5000m(13分31秒19)で高校記録を塗り替えた佐藤圭汰(洛南高出身)だ。トラックシーズンは1500mがメインになるようだが、どんな走りを見せるのか。長い距離への対応は未知数とはいえ、出雲と全日本では間違いなく強力なカードになるだろう。

2022年4月24日、兵庫リレーカーニバル、男子1500m決勝でトップを走る佐藤圭汰(駒大) 写真=アフロスポーツ

 近年は〝高速スパイク〟の影響もあり、東京国際大、國學院大、法大にも〝過去最速レベル〟のルーキーが入学している。

 

青学、駒大…有力校の現状は?

 次は箱根駅伝後のレースを振り返りながら、有力校の現状をチェックしてみたい。

 箱根駅伝で独走Vを飾った青学大は優勝メンバーの卒業が2人だけで、今季も圧倒的な戦力を誇る。2月6日の別府大分毎日マラソンには最上級生になる宮坂大器(2時間12分09秒)、横田俊吾(2時間12分41秒)、西久保遼(2時間15分46秒)が初マラソンに挑んだ。

2022年2月26日、別府大分毎日マラソンでの 宮坂大器(青大) 写真=森田直樹/アフロスポーツ

 3月13日の日本学生ハーフマラソン(以下、学生ハーフ)は目片将大(現4年)が10位(1時間02分36秒)、田中悠登(現2年)が14位(1時間02分55秒)。4月17日の日本学生個人選手権5000mは鶴川正也(2年)が13分48秒66で3位に入るなど、箱根出場を逃したメンバーが存在感を見せている。

 箱根メンバーでは4月23日の日体大長距離競技会10000mで岸本大紀(4年)が28分23秒71、若林宏樹(2年)が28分25秒71の自己ベストをマークしている。

 昨季は出雲と全日本の2冠を果たした駒大(箱根3位)も箱根メンバーの卒業は1人だけ。主将に就任した山野力(現4年)が2月12日の全日本実業団ハーフマラソン(以下、実業団ハーフ)で先輩・村山謙太(現・旭化成)が保持していた日本人学生最高(1時間0分50秒)を塗り替える1時間0分40秒をマークして4位に食い込んだ。

2022年2月13日、全日本実業団ハーフマラソンでの山野力(駒大・中央) 写真=西本武司/アフロ

 箱根メンバー以外では篠原倖太朗(2年)が大活躍中。2月26日の日本選手権クロスカントリーシニア10kmで後輩・佐藤圭汰に先着して7位に入ると、日本学生個人選手権10000mで3位(28分43秒03の自己新)、同5000mを13分47秒90で制した。エース田澤廉(4年)も4月9日の金栗記念選抜中長距離5000mで学生歴代8位(日本人学生歴代6位)の13分22秒63をマークするなど好調のようだ。

 今冬のロードシーズンで最もインパクトを残したのは國學院大(箱根8位)だ。山本歩夢(現2年)が実業団ハーフで従来の日本人学生最高を上回る1時間00分43秒で8位。学生ハーフは平林清澄(現2年)が1時間1分50秒で制すと、中西大翔(現4年)が1時間2分02秒で2位に入り、伊地知賢造(現3年)が8位(1時間2分22秒)。平林と中西は6月に中国・成都で開催されるワールドユニバーシティゲームズ(以下、ユニバ)のハーフマラソン代表に内定した。

 トラックシーズンに入ると創価大(箱根7位)の活躍が目立っている。日本選手権クロスカントリーシニア10㎞で2位に入った葛西潤(現4年)が3月19日の宮崎県陸上競技記録会10000mで28分21秒72の自己ベスト。4月15日の日本学生個人選手権10000mは葛西が28分30秒65でトップを飾ると、箱根4区で区間賞を獲得した嶋津雄大(4年)が28分38秒27で続いた。ふたりはユニバ10000m代表に内定。嶋津は昨年に「休学期間」があったため、来年の箱根駅伝にも参戦する予定だ。

 箱根2位の順大は4年生クインテット(伊豫田達弥、野村勇作、四釜峻佑、平駿介、西澤侑真)とエース三浦龍司(3年)を軸に戦力が充実している。なかでも東京五輪3000m障害で7位入賞を果たした三浦は4月9日の金栗記念選抜中長距離1500mを日本歴代2位&日本人学生最高の3分36秒59で優勝。トラックシーズンから大活躍の予感が漂っている。

2022年4月9日、金栗記念選抜陸上中長距離大会、男子1500m決勝での三浦龍司(順大・左)写真=アフロスポーツ

 箱根4位の東洋大は花の2区を区間5位(日本人2位)と快走した松山和希(現3年)が充実している。実業団ハーフは1時間0分43秒で9位、学生ハーフは1時間2分02秒で3位に入り、ユニバ代表に内定した。トラックシーズンは高校3年時に5000mで13分34秒74の高校記録(当時)を樹立して、昨年は出雲5区と全日本4区で区間賞を獲得した石田洸介(2年)にも注目したい。

 箱根5位の東京国際大はイェゴン・ヴィンセント、丹所健、山谷昌也の新4年生トリオを軸に、出雲V2と全日本・箱根で初優勝を目指している。同6位の中大は箱根1区で区間記録を打ち立てた吉居大和(3年)がトラックシーズンでどんな走りを見せるのか。

 

5月の主要大会は?

 最後に5月の主要大会を紹介したい。4日のゴールデンゲームズ㏌のべおかには吉居大和(中大3)、佐藤圭汰(駒大1)、篠原倖太朗(駒大2)、藤本珠輝(日体大4)、伊藤大志(早大2)ら多くの学生ランナーが出場予定。好タイムが期待できる。

 国立競技場で開催される7日の日本選手権10000mは田澤廉(駒大4)、井川龍人(早大4)、中山雄太(日本薬科大4)、吉居駿恭(中大1)がエントリー。田澤はすでにオレゴン世界選手権10000mの参加標準記録を突破しているため、「3位以内」に入ると日本代表が即内定する。

 8日のセイコーゴールデングランプリは三浦龍司(順大3)が3000m障害に参戦予定。そして19~22日には関東インカレが行われる。〝初夏の総力戦〟は今季の駅伝シーズンを占う意味でも重要な大会だ。9年ぶりとなる国立競技場開催だけに、例年以上に盛り上がるだろう。