取材・文=吉田さらさ 

日吉大社の鳥居 写真=アフロ

日吉・日枝・山王神社の総本宮

 比叡山の滋賀県側の麓に坂本という町がある。琵琶西岸の港町であり、戦国時代には明智光秀の居城である坂本城があった。天台宗開祖の最澄の生誕地でもあり、比叡山延暦寺とはきわめて縁が深い場所でもある。延暦寺の僧侶が高齢になった際に山から降りて隠居するための里坊と呼ばれる寺も建ち並び、歴史を感じる素晴らしい町並みを形作っている。そのもっとも奥の山際に、今回ご紹介する日吉大社がある。

 創建は今からおよそ2100年前。全国に3800社ほどある日吉・日枝・山王神社の総本宮。つまり、東京の赤坂にある日枝神社も、こちらから分霊された神社である。日枝神社は、一般的には狛犬が鎮座するべき場所に猿の像があることで有名だが、それは、総本宮の日吉大社でも猿が重要視されているためだ。

 日吉大社は京都の裏鬼門に当たることから、平安京遷都以降、都の魔除け、災難除けを祈る社として崇敬を集めた。比叡山には猿が多く生息しており、山麓のこの神社のあたりでもよく見られるためか、猿はいつしか、魔除けの象徴として大切にされるようになった。

 こちらでは「神猿」という名で呼ばれており、読み方は「まさる」。まさるは「魔が去る、勝る」に通じることから、大変縁起がよいとされ、建物の装飾に使われたり、実際に生きた猿が飼われていたりと、境内のあちこちで見られる。また、お守りなどの授与品のキャラクターとしても大人気だ。こ公式サイト内に猿ポイントのマップもあるので、探しながら一回りすることもできる。

大宮川と走井橋 写真=アフロ

 境内には40もの社があり、そこに祀られている神々を総称して日吉大神という。西本宮と東本宮のエリアに分かれ、それぞれに立派な本殿や数々の摂社があり、西本宮本殿の祭神は大己貴神(大国主神の別名)、東本宮本殿の祭神は大山咋神だ。とにかく境内が広大で、東西本宮の本殿は国宝、他にも重要文化財の社が多いため、建物鑑賞だけでもかなり時間がかかる。坂本の町並みや里坊なども観光したい場合は、最低でも半日程度は見ておいた方がよい。