文=福留亮司

高級ブランド、オーデマ ピゲの顔ともいえる『ロイヤル オーク』が50周年を迎え、新しいデザイン、新しいムーブメント(一部)で登場。常に進化し続ける、オーデマ ピゲの真髄がここに記されている。

『ロイヤル オーク オートマティック』 新開発の自動巻きCal.5900を搭載したシンプルなモデル。ケース径が37㎜でケース厚も8.9㎜。装着感はより素晴らしくなった。自動巻き(Cal.5900)、ステンレススティールケース、37㎜径、280万5000円

気品があるスポーティウォッチ

 昨年、時計界では“ラグスポ”というワードをよく耳にした。それは“ラグジュアリー・スポーツ・ウォッチ”と呼ばれるもので、スポーティなフォルムだが、気品のあるモデルといったらいいだろうか。近年の技術の進化により、強く、薄く、そして、美しいスポーティな腕時計が増えており、それが以前にも増して人気なのである。

 その元祖ともいうべきモデルが、オーデマ ピゲの『ロイヤル オーク』である。

 誕生は1972年。高級腕時計として登場したこのモデルは、それまでの常識を覆した画期的なものだった。当時は、高級時計=ドレスウォッチ、ドレスウォッチ=ゴールドケースが当然だったところ、あえて、ダイバーズなどスポーツウォッチで使用されていた、ステンレススティールをケース素材に使用したのだ。

 また、数々の名作ウォッチを世に送り出した世界的時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタの手によって生み出されたデザインも斬新だった。

 一番の特徴は、ベゼルが八角形だということ。しかも、そのベゼルには裏蓋まで貫通する8本のビスが、デザイン要素としてそのまま残されている。これはベゼル、ケース、ケースバック、さらには防水パッキンやガラスを結合させるものだ。

 ケースデザインも、エッジを立たせるなど、薄型をあえて立体的に見せている。サイズは39㎜。現代のモデルと変わらないサイズは、当時としてはかなり大きなものであった。そして、その外装に施された緻密な仕上げが、ステンレススティールケースの価値を引き上げたといってもいいだろう。

 

50周年の節目に誕生したモデル

 そんな『ロイヤル オーク』が誕生してから、今年で50年。また新しいモデルが生み出されている。発表されたのは自動巻きの新モデル。37㎜のオートマティックモデルと38㎜、41㎜のクロノグラフモデルなど、全28型であった。

 新モデルは、オリジナルのデザインコードを継承しつつ、ケース、ダイヤル、ブレスレットを微調整してコレクション全体を現代的に進化させている。

 ケースは、上面と下面の斜面をより広くすることで、ポリッシュとサテン仕上げが織りなす光の反射を高めており、シルエットをよりスレンダーに見せている。また、ブレスレットは、一体化されたラグが台形になり、なめらかに細くなるカーブを描いている。これによって、4段目までのコマの厚みが減少し、全体的に軽やかになっている。

『ロイヤル オーク オートマティック』 ステンレススティールとピンクゴールドのコンビモデル。こちらも自動巻きCal.5900を搭載している。自動巻き(Cal.5900)、ステンレススティールケース×18Kピンクゴールドベゼル、37㎜径、341万円