JBpress autographの編集陣がそれぞれの得意分野でお薦めを紹介する連載「RECOMMENDED」。第16回はトム フォードのポートフォリオとメッセンジャーバッグを紹介します。

構成・文=長谷川剛(TRS)スタイリング=石川英治(TABLEROCK) 写真=大泉綾平(初出:2021年8月7日)

普遍的でありながらモードのエッジを隠し持つ

 ある程度の年齢に達した男子が、ファッションの方向性を急激に変えてしまうのはややリスキー。思いがけず肩肘張ったルックスに仕上がってしまうなど、せっかくの投資が逆効果になることもしばしば。ゆえに手始めはバッグなどの革小物から、少しずつスタイルをアレンジしていくくらいがベターなのです。

 特に社会的立場のある人ならば、バッグ類にしてもオーソドックス型から選ぶのが基本中の基本。いくらブランド物だからといって、カラフルで大きめロゴが入ったものなどは絶対に避けるべきなのです。とは言え、誰もが持っている無個性なトラッド鞄では新調する意味が見出せません。

 そこでおすすめしたいトム フォードのレザーグッズ。現代モードシーンの鬼才であり、数々の実績を残してきたレジェンドが手掛ける革小物は、モードの先進性を持ちながら良い歳の男子が気後れせずに持てる、普遍的な美観と気品を備えています。90年代のグッチを救いサンローランの売り上げを伸ばし、その勢いで自身のブランドを立ち上げたトム フォードのサクセスストーリーは、すでに周知の通り。

 スーツやアイウエア、フレグランスなどでもヒットを飛ばしたレジェンドですが、特にバッグ類は業界人にも隠れリピーターを多数持つことでも知られています。彼のモットーである“セクシーかつリッチにしてボールド”の哲学を、バランス良くちりばめておりプロダクトとしても非常に高い完成度を誇ります。そのひとつが漆黒かつしっとり艶やかなポートフォリオ。

クラッチバッグ型のポートフォリオは薄マチで非常にスマート。ほぼB4サイズの大きさは、小脇に抱えるのにジャストなフォルム。内部にはカードホルダーやペン差しも装備しており、ビジネス使いにも対応します

 厳選の高級厚手レザーを用いており、掴んだときの手応えからも、匂い立つラグジュアリーを感じさせる仕上りです。装飾といえば、箔押しされたロゴが小さくあるばかり。老舗の英国ブランドもかくやと言わんばかりのアンダーステイトメント性が、お洒落の本質をさり気なく物語ります。ただしモードの魔術師らしくモダンな遊び心も同時に兼備。ブランドのシグネチャーである太幅のゴールド・ビッグジップを配しており、強く輝くアクセサリー的な要素に加え、ステイタスをアピールする唯一無二の要素を纏わせているのです。

やや太幅のジップラインが、インパクトに加えリッチな印象を放ちます。それと同時にこのビッグジップこそがトム フォード・アイテムであることをさり気なく主張します。ポートフォリオ(W34 X H26 X D4 センチ)18万7000円 トム フォード(トム フォード ジャパン Tel. 03 5466 1123)