アーティストの清川あさみがGINZA SIX内の銀座 蔦屋書店にて新作個展「TOKYO MONSTER, reloaded」を開催している。アーティスト活動20周年を迎え、作品制作から人形浄瑠璃、写真集、PVのプロデュースなど活躍の幅を広げる彼女の目にはなにが写っているのだろうか?

文=平澤 梢 写真=小嶋淑子 ヘアメイク=向井理紗

清川あさみ
1979年、兵庫県・淡路島生まれ。写真に直接刺繍するという独自の手法で作品を制作するほか、雑誌や本、布やキャンバスなど、ミクストメディアによる多様なビジュアル表現を展開する。代表作として「美女採集」「Complex」「TOKYO MONSTER」などがあり、人がそれぞれ持つ人生のストーリーや、心の状態と社会状況の関係を作品化してきた。 水戸芸術館(2011年)、金津創作の森美術館(2015年)、東京・表参道ヒルズ(2012年、2018年)にて個展・展覧会を多数開催。アートディレクターとして広告のビジュアルやグラフィックデザインに携わると共に、空間デザインやCM映像のディレクターとしても活躍中。最近では監督と制作を手掛けたYOASOBIのMV「もしも命が描けたら」が公開された。
 

清川あさみが描く東京の今

——まず、2014年に発表された「TOKYO MONSTER」はどんな作品でしょうか。

清川「TOKYO MONSTER」は90年代のファッション誌のストリートスナップをモチーフに、そこに刺繍を加えることで誇張し人物をオブジェ化した作品です。当時の奇抜なファッションに身を包む人々が隠し持っている虚栄心や自己表現したい欲みたいなものをモンスターになぞらえて、私たちの誰もがそうなりえることを表現しています。

——今回の「TOKYO MONSTER(2020-)」では、ベースとなるスナップ写真自体にも視覚的効果が加えられていますね。

清川「はい。新作では、最近のSNSのストリートスナップや2000年以降の雑誌の表紙をピックアップしています。その上で、写真の上に張った糸をネガポジ反転させたり、色調を変えたり、あえて全体をボカして国や性別、場所などが曖昧な見え方にしているんです」

——このタイミングで続編を発表した意図を教えてください。

清川「2018年頃から、「神話シリーズ」や『inori』といった古代の風景やモチーフを作品にしていたのですが、そうすると今度は現代や未来を描く作品を作りたいと感じるようになりました。昨年「imma展」としてヴァーチャルをテーマに個展を開催し、では現代はどう表現しよう?と考えた時に、「TOKYO MONSTER」が頭に浮かびました。ファッションやスナップ写真というのが一番「今」という時代性が表れるものだと思うんです」